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第1話 再度の召喚8 反論する創生者(通常版)

「・・・ふぅ、やっと一区切りできるわ。突発的に異世界へと召喚させられ、身勝手な感じに頼み事を押し付けられる。果ては啓示で“本来の在るべき姿”が挙がったら、それが低俗的なスキルと言い放たれる・・・。」


 落ち着くための一服をしだしたのだが、今し方の流れをダイジェスト的に語りだしたら、俺の方もボルテージが挙がりだしてきた。相手が理不尽極まりない行動をしているのは明白である。怒らない方がおかしい。


「・・・追放と言ったのだから、それに対して自ら実行しようとしたまでだ。“身内達”の言動は過剰な演出であり、創生者・調停者・裁定者のスキルなどあるはずがない。大司祭さんよ、もう一度俺達のスキルを確認してみな?」


 可能な限り激昂するのを抑えつつ、本当の事を挙げてみた。先程のティルネアが行った行動は演出であり、実際にスキルの啓示ではない。それをスキルの啓示を担当する大司祭に対し、再確認を促した。


 現状打開の案と取ったのだろう。国王が行動を促し、大司祭にスキルの再確認を行わせた。どういった感じで行われるのかは分からないが、実際に他の召喚者達を鑑定できている事から可能だと思われる。


 大司祭が俺とリメナ、幼子のライナとミイナを再度見入る。すると、先程特殊的なスキルを得た時に高揚していた雰囲気がなくなっていった。間違いない、今も俺達の基本スキルは凡夫のままだ。


「・・・凡夫のまま、と・・・。」

「ホラ見ろ、何にも変わってない。お前さんがどういった手法を使ったかは不明だが、他の彼らに施した様に俺達もそのままじゃないか。」

「・・・しかし・・・。」


 言い淀んでいる感じだ。ティルネアの演出が過剰過ぎたからか、それが本当の事なのだと思っていたようだ。実際に彼女はスキルの付与が可能ではあるが、滅多な事がない限り行う事はしない。ベイヌディート事変時にそう定めたのだから。これは一種の目眩ましと言う感じである。


 まあでも、その過剰過ぎな演出が連中の気を引いたのは間違いない。徐にティルネアを一瞥して、小さく舌打ちをして見せた。それを見た彼女は、申し訳なさそうに顔を曇らせている。


「追放の決断はしっかりと受ける。だが、今はここから帰る事ができないのなら、こちらは情報収集や世上の探索を行うまで。この目と耳と心で全てを見定めていく。こちらの自由な権限を奪いなさんな?」


 再度国王の方へと向きつつ、相手が決めた決定事に対して受け入れると語った。同じく追放を言い放たれたリメナの方を向くと、彼女の方も構わないと言った雰囲気で頷いている。


 と言うか、一刻も早くこの場から去りたいのが本音だろう。かく言う俺も全く以て同様だ。これ以上ここに居たら、更なる横槍が入るのは言うまでもない。


「最後に、諸々の謝罪などはしなくていい。俺達の方も不敬に対しての謝罪をする事はない。流れ的にそうなっただけ、痛み分けで終わらせてくれ。」


 徐に相手に対して小さく頭を下げた。最低限の詫びである。これも謝罪にはなるのだが、どちらかが折れれば収拾は付く。ここは国王こと愚王の顔を立てるのが無難だろう。


 ただ、他の身内達は結構なまでに頭に来ているようで、念話経由で“ブーイング”を入れて来るのだが・・・。それを伺って噴き出しそうになるのを我慢した・・・。


「・・・分かった。そちらの顔を立ててやる。お触れの方は行わない、直ぐにこの国から立ち去るがいい。」

「了解した。」


 実に気に食わなさそうな雰囲気ではあるが、一応折れてくれた国王。宰相や大司祭の方も同じ雰囲気ではある。驚いたのが将軍だ。顔には出していないが、その目線は申し訳なさそうな感じだった。若者に対しての一撃は過剰だったが、彼自身はそれなりの有識者と言えた。


 この場はこのまま丸く収めた方がいい。これ以上の介入は、間違いなく要らぬトラブルを起こしかねない。


 徐に後ろを振り返ると、魔物娘化していた4人が人間の姿に戻っていた。アレは一時的な演出の1つだろう。今ではすっかり地球人の身形に慣れたようである。




「ちょっと待ちな。」


 一触即発だった場が沈静化した。兵士達や将軍も足早に定点へと戻って行く。召喚された地球人達もホッと胸を撫で下ろす雰囲気が感じられた。後は俺達がこの場から去っていけば全て丸く収まる。


 が・・・それで終わらなかった。今度は先程粋がっていた若者が発言してきたのだ。これに対して遮ろうとした将軍だったが、俺の方から止めろとアイコンタクトを送った。それを見た彼は行動を思い留まってくれた。


「・・・何だ?」

「お前、地球に戻る算段があるんだろ? だったら、色々な物品を出しな。こちとら生活品がないんでな。」


 ・・・何と言うかまあ。ティルネア達の降臨やデュヴィジェ達の出現を先読みし、俺が地球とのアクセスが可能なのを先読みしてきた。かなりキレ者の若者だが、その雰囲気はこちらを利用しようとしているのが見て取れた。流石の国王や宰相も、若者のでしゃばった言動に呆れ返っている。


「自分で何とかしな、大勇者様。大層な啓示を受けたのだから、国王達が最大限の助力をしてくれるだろう。他力本願は勘弁願うわ。」

「はぁ? こっちは世界を救おうとしているんだぜ? そんな言い分通るかよ!」


 何を血迷ったのか、こちらへと足早に歩み寄りつつ殴り掛かって来る。そんな相手に対し、腰に装着している携帯方天戟を展開。相手の喉元に戟先を突き付けた。


 絶対に出て来ないであろう場所から出現した獲物もそうだが、それを視認できるかどうかの速度で繰り出した事に驚愕している。それに、この程度の威嚇で怯むようではまだまだ甘い。


「それが通るんだよ、阿呆。俺も“警護者”を担っている手前、諸々の行動は全部自分で行ってきた。それは当たり前だ。素晴らしいスキルを得た事と、自分に科せられた使命に対して胡座を掻くな。」

「ぐっ・・・。」


 正論を突き付けられたようで、恒例の“ぐっ”で返す若者。だが、雰囲気は相当怒り心頭の状態になっている。これでは本当に先が思い遣られるわ・・・。


 そんな中、傍らへと歩み寄るはティルネアとデュヴィジェ。幼子達は母親へと戻っている。2人の接近を前にして、即座にバク転的な感じで間合いを取りだした。


 啓示による身体強化か、実際に相手がそれなりの力量を持つ存在なのか。若者の動きが冴え渡る感じである。


    第1話・9へ続く。

 漸く出番な感じの主人公と。そもそも、こういう場合は流れに沿って身を任せるのも1つの手でしょうか。まあその前に理不尽な対応をされているので、当然ながらの展開でしょう。自分が覆したい流れの1つでもあります。ご了承下さいm(_ _)m


 と言うか、主人公群は既に3度目の異世界転移なのですよね@@; 苦労人が初回目、探索者が2回目、そして創生者で3回目。こうした一連の流れに慣れてしまうという部分も大いに肯けます。何ともまあな感じです(-∞-)

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