新幹と線発
マナエッテはミューフの飛び降りた瞬間をその目に見ていた。そしてアメリは携帯を見ておりそれどころではない。二人は今から旅行に行こうと話していた。そしてこの病院の駐車場で誘ったフリースも待っていた
「あ……えっと、私夢でも見たのかな?」
「どうした?マナ」
「今さ、人が飛び降りてさ」
「飛び降りた?死体が見当たらんが……血が落ちてる!」
離れてはいるが血が落ちてるのは分かり、鑑識が集まっていた。二人は近づく
「あれ?血だけだな」
アメリはそう言う。マナは首を傾げた
「やっぱ夢じゃない。血が出てくると同時に飛び降りた人が消えたんだって!金髪の私たちと同じくらいの女の子でさ、警察服着てるような」
「んなわけ」
それを耳にした鑑識がマナエッテの方を向いた
「ちょっといいかな?それについて詳しく聞きたいんだけど」
「え、あ、はい……?でも私の夢というか幻覚かもしれませんし」
「間違ってても大丈夫大丈夫。それが大切な手がかりかもしれないんだから」
そして話し終えたそのタイミングでシーサイドが慌てて病院から出てきた。息を荒くし
「おい、ここに女は落ちてこなかったか?金髪の」
鑑識がシーサイドにマナエッテから聞いた話を説明した。するとシーサイドは強く睨んだ
「なんだと!?途中で消えた?なあ、それは本当か?」
「え、恐らく」
マナエッテはその圧に押されながらも答えた
『ミューフが消えた。やはり何か能力的な力だ。しかし血を残したということは……なるほど、血で消える瞬間を目撃されにくくしたってことか?それとも出さなければならない理由があったのか』
「飛び降りたのは本当だ。そして俺が目にしたのは銃声の後で、既に消えていた。なあ、銃声の後に消えたのか?」
マナエッテは頑張って思い出す
「ええ、確か殆ど同じタイミングだったと思いますけど」
『となると銃を撃つことがトリガー?でないと銃を撃つ理由が見つからない。血で隠すほどに目立たず消えたいってのに、銃声で注目を集めたら……』
シーサイドは一つ気づいた
「銃を自分に撃つことがトリガー?」
『確かにそれなら話しは通るが。そこにナイトメア……もしくはミューフの能力が加わればって話にはなるが』
「拘束してすまなかった。旅行でも行くのか?」
「はい!」
「そうか、楽しんできてくれ」
シーサイドは車に乗り、その場から去る。二人はあの勢いが何だったのかとぽかんとしていると、フリースの声がした
「待たせた」
「あ、フリースくん!」
マナエッテは嬉しそうだった
「にして、いきなり旅行に誘うとはな」
「ほら、私友達アメリちゃんしかいなかったし、二人だと寂しいから」
アメリはフリースの背を見て驚いた
「お前、木刀背負ってくのか?」
「当たり前だ。こないだ見たいに変なのが現れたらどうする?」
「だからってな……」
三人は大きなリュックを背負い、駅へと向かった。駅へ到着するとアメリが切符を購入
「私考案の大阪旅行なんだけどねえー……全部アメリちゃんに任せ切りだったり」
マナエッテは苦笑い
「ま、分かるやつがやったほうが効率がいい。ちなみに俺も電車の仕組みはよく分からん」
「お前が分からないってのは意外だな」
アメリは切符を三枚持ち近づき言った
「触れてこなかったからな」
そして駅のホームにて。電車は十分後に来る予定だった
「全く遅い電車だ。ちなみに俺の苦手なことは待つことだ」
「じゃあ、早めの昼食食べない?」
マナエッテはうどん屋を指さした。ホームに店があるのは珍しくない
「いや、俺はまだ食えない」
というフリース。時刻は十一時半であり、マナエッテは腹も空く時間だった。しかしフリースは完全に少食であり、決まった時間に適量というのが普通の生活だった
「ええ、なんで?」
「私も別に腹は空いてない」
「アメリちゃんまで」
アメリもそう言う為、マナエッテは悲しそうに断念した
「でも、フリースくん、待つの嫌なんでしょ?」
「しかし早めの昼食はもっと苦手だ。悪いが少食でな」
そんなこんなで電車が到着した。三人は新幹線の駅まで電車で向かう予定であり、電車の中は空いていた
「殆ど貸し切りじゃん!」
「昼間だしな」
アメリは冷静に返す。フリースは素早く椅子に座り、足を組む。かなり格好をつけていた。マナエッテも恐る恐るゆっくりとフリースのポーズを真似、無事に二人、格好を付けている。アメリは少し席を離し座ったが、マナエッテは少しドヤ顔。なんてしていると、隣の車両からの怒鳴り声が少し聞こえた
「ふざけてるの!?あんた大阪に子供連れてくって、馬鹿なの?まず大阪なんて立ち入り禁止区域よあんなの!」
大阪への酷い罵声。しかしマナエッテ達も行き先は大阪であり、他人事ではなかった
「ちょ!私文句言ってくる!」
マナエッテは隣の車両へ駆けていく
「ちょ、マナ?」
アメリが後を追う。フリースも歩き着いていく。隣車両では親子と赤髪の少女が何やら言い合っていた。父親に母親、それに娘が一人。娘は完全に怯えていた。そして三人はその怒鳴る少女がメラアであることに気がつく
「ちょ、メラアちゃん?」
「ん?」
メラアはマナエッテの方に顔をやる
「こないだの」
「私はマナエッテ。というか何怒鳴ってるの?親子相手に凄く迷惑だよ!?」
「いいや、大阪行くって方が馬鹿よ!」
「なんで!!」
メラアは言った
「大阪はナイトメア、それにキャッツの本拠点よ!最悪最低の狂った奴が二人もいるなんて危険すぎるわよ!」
「そんなこと分かるの?」
「なんとなく気配は伝わってくるわ。と言え、それは向こうも同じでしょうけれどね」
マナエッテは聞く
「ナイトメア?キャッツ?なんの話!」
アメリは溜息を吐いた
「ナイトメアは有名だろ。そいつが病院で暴れ散らかしたことはニュースを見て……いや、マナはニュース見ないんだったな」
「バカね。ナイトメアが犯人な訳ないじゃない」
「その理由はなんだ?」
フリースは聞く
「ナイトメアは表に出て暴れるような奴じゃない。裏でねちねちとせこいやつよ。それに、床とかの形を変える能力はサカツキね」
「サカツキ?」
メラアは溜息を吐く
「もう一から説明するわ。まず、私の元いた世界には吸神、死神、生神、性神の四世力。ボスの名前に置き換えると、サカツキ、ナイトメア、キャッツ、アイレンズの四人ね。こいつら仲間じゃないけど、それぞれ様々な悪事を働く大組織。ちなみに私はこの世界で言う警察見たいな立場で、別世界から遥々この世界まで奴らを殺しにきたわけよ」
フリースは納得したようだった
「東京の件はサカツキの能力……つまりサカツキがナイトメアに擦り付けたってこととして、ナイトメアは怒らないのか?」
「怒るわよ!だーから何しでかすか分からないから大阪行くなって止めてるの!」
そして電車が止まった。駅へ到着し、ここで大阪に行くのなら乗り換える。メラアが降り、三人も降りた。その親子も後から降りており、既に電車は走り去った。メラアは親子の存在に気づく
「ちょ、まさか大阪行く気じゃ」
「おい、俺らは大阪行ったらダメって言うのか!今日は娘の誕生日で娘はずっと楽しみにしてたんだ!お前らに止める権利は無い!!」
メラアは返す言葉が無かった。見殺しにするのも手ではあるが、メラアにはそれができなかった。犠牲を減らすことが最優先のメラアにとっては。その時、マナエッテが提案をする
「そうだ!一緒に行きませんか?どうせ道は同じなんだし!」
かなり強面の父親はまるで元ヤンと言わんばかりのリーゼントに、優しそうな母親は左側にその髪を三つ編みへしていた。娘も母親と同じ髪にしており、歳は中学一年入り。三人とも普通の黒い髪だ。父親は考えた
『しかし、娘より少し年上くらいの女の子が必死に訴えている。これはちゃんと話を聞いてみるべきじゃないのか?ナイトメアは有名だ。そんな物騒な名前まで出てきたとなると……』
「分かった、一緒に行こう。ただし、理由を説明してくれ。そこまで止める理由をだ」
「あなた」
母親がそう不安そうに言う。そして新幹線に乗り換え六人向かいになるよう座る。親子とマナエッテ達、席の無いメラアは水化し机の上にいる
「えー、なんか可愛い!さっき怒鳴ってた人とは思えない!」
娘はメラアの撫でる
「ちょ、何触ってるのよ!」
そして父親が聞いた
「それで、訳は」
「待て、その前に自己紹介を。俺はフリース」
「私はマナエッテです!」
「アメリ」
「私はメラアよ」
父親の方も名乗る
「ロドゥンだ。そして妻のフェアラ」
「私はフレイ!お姉ちゃん達よろしくね!」
『俺もお姉ちゃんらしい』
フリースはそう心中言う
「うん、よろしく!」
笑顔でマナエッテは返した
「それで、話とは」
と言うと新幹線の壁から赤い糸が生えてきた。そして無数の白い糸も生えてくる
「なんだこれは!!」
ロドゥンは驚く。フリースは入れ物から木刀を出した。そして席を立ち、構える。赤い糸はハートの形に結ばれ、まるで慈悲二号を連想させる。そして白い糸の先には針が装着されており、誰もが慈悲二号と同種と気づいただろう。メラアも人間の姿になり、フリースの横で警戒をする
「これは慈悲一号。設置型なのが不便だけれど、針だから当たっても即死はしない。威力が二号に劣るのよ。スピードは上がるけれど」
「前と同じ糸を切ればいいんだな?」
「あんたは下がってなさい!役に立たないんだから」
フリースは完全に楽しんでいた
『ここで活躍すればマナエッテにアメリ、更にあの家族までもが俺に感謝をする!最高にかっこいいじゃないか!この娘は一生俺のことを王子と思い生きていくしかない。そんな人生になるだろうな!!』
そんなことを考えていると無数の針が襲ってくる。メラアも考えていた
『面倒だわ。マナエッテ、アメリに家族三人を守りつつ倒すのは。最悪この男はどーでもいいわよ!自業自得よ』
フリースは木刀で全ての針を薙ぎ払う。本人は華麗に全て処理していると錯覚しているが、実際はギリギリ処理しているレベル
『抑えることしかできないの?ただの一号相手に!』
メラアは水化し、高速で水を走らせ水圧で糸を切っていく。次から次へと糸は切れていく
「能力者にどうこう言われる筋合いは無い!」
全ての糸は一瞬で切れた。二人が席へ戻ってくると、ロドゥンは真面目な顔をし聞いた
「これは……どういうことだ?」
メラアは一息つき答える。水化した状態で
「今のはアイレンズってやつの機械なんだけど、それの他に三人、化け物みたいな勢力があるわ。異世界から紛れ込んだ化け物みたいに思ってもらっていいんだけれど、そのうち二人の拠点が大阪にあるわ。ナイトメア、キャッツ。既に大阪に行った人は何らかの被害に合ってる可能性が高いわ」
「そうかだったのか。フェアラ、どうする?」
ロドゥンは聞いた。今が引き返す最後のチャンス
「行きましょ!だってこのチャンスを逃したら、もう行けなくなるかもしれないし、それに色々我慢させていたんだから流石にこれ以上は」
ロドゥンは少し考え、聞いた
「フレイはどうしたい?父さんには決めれない」
「私は行きたい。命なんか気にしてたら、どこだって危険でしょ?」
メラアは言う
「奴らも一箇所にずっと留まってるなんてことは無いだろうし、どこも危険になりうるのは確かよ」
「行く!私、絶対行くから!」
ロドゥンは頷いた
「俺たちはそういう決断になります。旅行期間中守ってくださるそうですし、ほんとありがとうございます」
「勿論全力で守るけど、相手が相手だから必ず守れるとは言えないわ。そうね……そうだ!合図を決めるのよ」
「合図?」
フレイはそう首を傾げた
「指を一本上げたら集合の合図。二本上げたらピンチ、助けて、SOSー!の合図。三本上げたら静かにして!の合図。四本上げたら喋れないという合図」
「喋れない合図って使うか?」
アメリは聞く
「あんま使わないけど、喋れないと、そのことを伝える手段が無いからね。とても大切な合図よ」
マナエッテは指を五本上げた
「じゃあこれは疲れたから寝るわ〜の合図ね!」
「いいえ、五本指はもう助からない。見捨ててって言う合図にするわ。これだけは覚えなさい!」
何やらフレイは楽しそうだった
「なんか特殊部隊みたい!」
「あのね、命掛かってるのよ??」
メラアが強く言うとマナエッテは
「いいじゃん!別にメラアちゃんいるんだしさ!」
「もう知らないわ!」
そんなこんな話していた