早音の最後
時は遡りシュナイが消えた同日、フリースはアメリも見守る中、普通の手当てをし終えた。しかし本当に普通の手当てでアメリは息衝く
「でも本当酷い傷。やっぱ病院行ったほうがいいよ」
「いや、問題は無い。手当てありがとな」
「助けてもらったんだし、こっちこそ」
『あのメラアって子にもお礼言わないとね。また会えるといいけど』
フリースは荷物を持ち立ち上がる
「それじゃ、俺は帰るからな」
「待って!」
フリース振り返る。マナエッテはメモ帳に何か書き、それを千切って渡した。フリースが受け取ると、連絡先だった。マナエッテからペンを取り、その紙を二つに千切った。マナエッテの連絡先の書かれていない方に自分の連絡先を書いた
「交換だ」
「うん!」
『マナはすごく嬉しそうにしてるが、これは誰にでもの態度。こいつ勘違いしてないといいが』
フリースが帰ると部屋はシンとした。それから時は流れ一週間。警察はナイトメアの存在を公開しており、他に慈悲二号も謎のロボットと報道。他にシュナイの悪事も全てが公表される
「シーサイドさん!」
「どうしたミューフ?」
「今日はどちらへ行かれるんですか?」
シーサイドは出かける準備をしていた
「例の病院だ。調査へ向かう。そのナイトメアとやらの何かが分かるかもしれんしな。勿論ミューフ、お前も着いてこい。当事者がいた方がいい」
「はい!」
『フォックスのやつが安安と死ぬわけがない。勿論能力者なんて化け物相手なら話は別だが……しかし存在してないと言い切れない世の中になってきやがった』
そしてシーサイド、ミューフは病院へ到着した。既に鑑識による調査は始まっており、シーサイドの方へ報告が入る
「警部!現場にこのような物が」
黒い油の玉だ
「こちら油の塊です」
『サカツキ様の取り残し?いや、サカツキ様なら敢えてって可能性もあるけど』
今は病院の外。シーサイドは外から現場を見上げると、とある存在に気がつく。窓に足跡が不自然に着いており、現場の部屋の縦列にしかそれは無い
『誰かが登った?それに、足跡が異様に潰れてる。っ……待てよ?何やら床を引き伸ばす能力とミューフが言っていたし、何よりそれは目撃証言もある。引き伸ばした箇所に足跡を付け、引き伸ばしを解除した場合、窓が本来のサイズに戻り、足跡も本来より潰れて見える。しかしナイトメアならば窓から登る理由は……そうか』
シーサイドは閃いた顔をしていた
『つまりフォックスが先に入っており、四階までの間に出くわせば患者を巻き込んでしまう。だからナイトメアは窓を登り先回りしたってこと……だよな?しかしそんな怪しい登り方、こんな大きい病院で目撃証言が無いほうがおかしい』
シーサイドはミューフの顔を見つめる
「え、なんですか?!」
『無傷ってのは可笑しくないか?トランポリンとは言え、五階から飛び降りて無傷なのは奇跡にも程が……いや、ミューフに限ってありえない話だ』
「ミューフ、とりあえず中も見よう」
シーサイドはミューフを疑いながらも歩く。ミューフとはニ年間一緒に行動しており、疑いたくないという気持ちがあった。シーサイドは病院内の廊下を歩く
『油の塊?廊下に転がってたらしいし、燃やそうとでもしてたと考えられるが……なぜ燃やす?ナイトメアが万一を考えて……いいや、万一なら自分で壊せばいい。もし能力があるのなら!となるとフォックスか?いいや、フォックスだ。最悪トランポリンを使い逃げれると考えたんだろうが。しかし燃えていないということは、失敗に終わった……』
シーサイドはミューフを連れエレベーターを使い最上階へ向かった
『ここが最上階』
シーサイドは部屋に入ると燃え跡がすぐ見えた
『これは!燃えた跡。となると、フォックスが燃やそうとした?フォックスはこの玉を所持していたのか撒いてきたのか。撒いてきたのなら、この落ちてた物はナイトメアが見逃した物になる。しかし所持していても着火時に自爆をすることになる。自爆する勇気が無かった?火を付ける隙が無かった?ライターを投げれば解決する話ではあるが、それは確実性に欠ける』
ミューフはバレたらいつでも殺せるよう、銃を所持していた
『待て!!この燃え跡は人の形をしている。これは大きさからしてフォックスだ。フォックスが焼死?いや、レオンの可能性もあるが』
「なあミューフ、この燃え跡は何があった?」
ミューフは答えた
「フォックスさんがライターを何故か投げてましたね。なんで投げていたんでしょうか?その後火はレオンという警官に当たってしまい……」
ミューフは唾を飲む
「これはレオンの大きさじゃない」
「そうでした!フォックスさんが燃えて、レオンさんはナイトメアの能力により殺されました。フォックスさんの投げたライターをナイトメアが拾い、それでフォックスさんを燃やしました」
淡々と話す。ミューフらしくない話し方だ
「少しいいか」
シーサイドはミューフの髪をどかし、左耳を触る。もう片方の手も同じくし右耳を触る
「ひぇ!ちょ、なんですか?」
『やばい、これはやばい!通話してるのがバレる』
シーサイドはミューフの耳にある小型無線機を取る。右耳に付いており、それを口に近づけた
「お前がナイトメアか?」
「ああ、そうだ」
加工の入った声であり、男の声だった
「そうそう。俺は近いうちに大きなことをする。多くの人が苦しみ絶望するだろう」
「目的はなんだ!?」
声が聞こえなくなった。通話が切れた。シーサイドは舌打ちをし、ミューフの方に顔を向ける
「ミューフ、まさかお前が裏切り者だったとは」
「ちょ、信じて!私は洗脳されてたの」
ミューフは胸に手をやり必死に訴えた
「洗脳されてた奴が信じてとか言わないだろ。洗脳されてたなら洗脳されてた事実も知らないはずだ。お前が少しバカなのは素のようだな」
「くそ、こうなりゃ」
ミューフは銃を取り出した。しかしミューフが銃を持ったと言えシーサイドに勝てるはずが無い。ミューフは自分の頭に銃を向けた
「おい、バカな真似は辞めろ!まだ大丈夫だ。罪を償って、また俺の部下として」
「シーサイドさんはいい人だった。もうちょい鈍ければ、まだ一緒に警察で働けたのにさ……私もシーサイドさんとの日々、嫌いじゃ無かったから」
ミューフは走って割れた窓から飛び降りた。シーサイドは後を追おうと走るが、同時に銃声がした。シーサイドが下を向くと、ミューフの血が地に落ち弾けたのが分かると同時に死体が消えていた
「ミューフは?あいつはどこに……」
『まさかナイトメアの力で逃走したのか?生きてるなら良かったと思う俺がいるんだが……いや、逃走したのなら自分を撃つ必要が無いし、死を偽装する為に血を出したかったのなら、無意味。血だけで死は偽装できないのは、あいつも知ってるはず』
その後シーサイドは念にミューフを全階全部屋探し、鑑識にも聞くが行方知れず