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慈悲の鉄球

「到着だ」


シーサイドは黒く平たい車から降りる。パトカーでは私が警察ですと名乗ってるような物である為、普通の乗用車を使っている


「ここですか。って、シュナイ?そこそこ有名な企業ですよね?」

「そうだ。和菓子を販売してる企業として有名だが、実は献血もやっていてな。シュナイは集めた血を病院に提出していなかった。そして偽造された資料を見る限り、病院側にも仲間がいる」

「ええ、シュナイがそんなこと?!私シュナイのお団子好きだったのにー!」


シーサイドはその四階程ある建物を見上げた


「俺は最上階に行く。ミューフは怪しい人物が出てこないか外で見張っててくれ」

「はい!」


シーサイドは建物の中へ入っていった。ミューフは暇になった


『シーサイドは見張れって言うけど、怪しい奴なんて出てくるわけないから。仮に出てくるにしても、僕私怪しいですよ!見たいな格好で出てくるわけ無いし、判断できないっつうの』


なんて愚痴を心で垂れていた。場面は変わり、ここはとある街。腰辺りまで伸びる黒髪をした少女マナエッテは制服を着ており、十七の高校生。夕方、今は帰路に商店街へ寄り道をしていた


「ね、団子買って行かない?シュナイの」


マナエッテが聞いたのは友達のアメリだ。アメリは膝辺りまで伸びる長い黒髪をしており、全く手入れがされておらずボサボサ。マナエッテが昔に直してやろうと試みるが酷い癖っ毛に成す術無し。アメリは明らかに所謂陰キャだった


「私は買わない。チョコケーキなら考える」

「じゃ、チョコケーキ!この近くに美味しいケーキ屋さんがあってね、アメリちゃんも連れて行こうと思ってたんだよね!」

『あっさり団子諦めた。なんか申し訳ない気持ち』


二人そのケーキ屋へ向かいながらも会話は続く


「そうそう、動物が凶暴化する事件知ってる?」

「あれか。犬猫やら魚類とかな。なんか警察はウイルスによるものだから外に出すなと言ってるらしい」

「へえ、確かに家の中で凶暴化したって話は聞かないもんね。なんか怖い」


少し歩くとケーキ屋が見えた。同じ商店街だったが、アメリは普段通らない道であり、当然知らないケーキ屋だ


『近くのケーキ屋って、まじで近いのかよ』


小さな木造のケーキ屋。しかし中からは激しく音がし、窓ガラスを割り机が駐車場へ飛び出した。二人は驚いた様子でそれを見ていると、次々に椅子やら机やら人が放り出されていき、悲鳴も聞こえる


「マナ、あれなんだよ?」

「知らないよ!強盗とか?」

「それか味が気に入らなくて暴れてる……って限度があるだろ!!どう暴れたらこうなる?」


そして荒らし終えた様子の変な生物が中から出てきた。糸のような手足の先に鉄が付いており、糸の力で歩いている。足に付く鉄球の音がコンクリートと重なり鳴り響く。そして顔は赤い糸でハートの形が作られており、生物にしても二人の知らない生物だ


「マナ?私たち逃げたほうが良くね?」

「うん!逃げよ!人のいない場所に……」


前にはその何かがおり、後ろは商店街であり逃げる者も多くいるが撮影する者、まだ店内におり気づかない者と明らかに人気のない道は無かった


「どこに行くにも人が……」


アメリは見つけた


「あの細い路地はどうだ?」

「ダメだよ!あの先は住宅街に入っちゃうし、小学校とかもあるから」


しかし逃げなければ死ぬのは自分達だ。そして、その何かはマナエッテとアメリの方向を向いており、逃げれば追ってくるとなんとなく察している。その生物はゆっくりと音を鳴らし近づいてくる


「あー、慈悲を」


そう生物は喋った。しかし機械音声のような声から、生物でなく機械だと誰もが判断できただろう


「とりあえず壊れろ!」


アメリは思い切り鞄を投げつけた。しかし機械に効くわけもなく、焦って咄嗟にしたことだろう


「マナ、どーする?」

「いや、逃げるしかないけど……なんか周りに撮影してる人いるし」


機械の糸が伸び、一人の撮影者が鉄球により頭を潰された。それの後を追うように何人も潰されていく


「やばい!」


マナエッテへ当たろうとした鉄球を間一髪しゃがみ避けた。しかし気づくと周りは全員死んでおり、真っ赤な血の中残るは三人だけ。二人の他に、一人の青年が残っていた。黒く跳ねた髪と背には剣のような形をした入れ物を背負っていた


「ったく、買い物しようと思ったらこれだ」


青年はそう言い入れ物を開け木刀を取り出した。誰がどう見ても剣道部だ


「おい女共、下がっておけ。ここからは俺がやる」


青年は剣を構え二人の前に立つ。それに対しマナエッテは声を大きく言う


「ねえ、危ないよ!木刀なんかじゃ壊れちゃう」


青年は鼻で笑う


「宣言だ。十秒で終わらせてやろう」

「十秒!?」


マナエッテは驚く。機械はそれしか話せないのか


「慈悲を……ああ、慈悲を」


機械は青年に向け糸を伸ばし鉄球を振る。青年は高く飛び交わしたが、その先にもう片方の腕の糸を伸ばし鉄球が襲いかかっていた


『なにっ?!』


青年は咄嗟に木刀で顔に当たりそうな鉄球を防いだ。青年は激しく飛ばされ、ケーキ屋へ弾き飛ばされた。大きな音と共に


「言わんこっちゃない!あんなに勝てるわけ無いだろ!」


アメリは青年に呆れたように言う。マナエッテも心配そうにする中、機械が再び二人の方を向く。するとケーキ屋から飛ばされたナイフが機械の左腕の糸を切り裂いた


「ああ、慈悲を」


頭から酷く血を流した青年が少し余裕そうに笑い歩いてくる


「ねえ、大丈夫!!?」


マナエッテは聞いた


「これくらい準備運動にしかならん」

『店内でも何人か死んでいた。何者だ?犯人は。考える暇は無いか』


青年は木刀を構える。しかし明らかに血の量が多すぎ、マナエッテは青年の方へ走っていく


「マナ!?」


アメリも後を追おうとしたその瞬間、アメリの後ろから鉄球が迫る。狙いは頭だった。アメリは気づき振り向くが、明らかに遅かった


「間に合え!!」


青年が木刀を鉄球目掛けて投げる。しかし届くはずもなく死んだ。そう思われた瞬間


「アーツェティーン」


鉄球に水の塊がぶつかり、鉄球は少し逸れる。それによりアメリは助かり、アメリは息を荒くしその場に膝を落とす。そして水は少女へと変化した。背丈はマナエッテやアメリと同じ百五十付近であり、膝辺りまで伸びる赤髪を後ろに縛った所謂ポニーテールだ。解けば地につく程長いのだろう


「そこの男子、その傷まさか……無謀よ!ただの人間が慈悲二号に勝てる訳無い……って腕切ったの??凄いわね」


少女は水色の着物に黒いマントを着用していた


「君は?」


マナエッテは聞く


「メラアよ。二年前にこの世界へ飛んだ悪党共を追ってきた。転移マシンの作成に時間が掛かってね」

「データ転送中。データ転送中」


メラアは水へと変わった。そして慈悲二号と呼ばれた機械の方へ向かい、それ全体を水で囲う。片手の鉄球を振り回すが、水であり全く効果が無い


「もう逃げられないわ。私からは!」


水が細くなり螺旋竜巻のように回りだす。そして慈悲二号は綺麗に横何線かへ、螺旋に切れた。アメリはその竜巻を見て呟いた


「屋台によくある竜巻芋(たつまきいも)だ」


慈悲二号の手足の糸は全て切れていた。そしてメラアは人間の姿へと戻った


「そこの男子、あんた大丈夫?」

「名はフリース。俺は問題無い」


青年フリースは木刀を入れ物へと入れた。そのとき声をかけたのはマナエッテだった


「あの、待って!そんな傷じゃ危ないし、救急車呼ぶよ!」

「いいや、不要だ。お前直々の手当ってなら考えるが」


折角格好つけておいて下心は見え見えだった。メラアは溜息を吐き


「呆れた」


と言いその場を去っていく


「マナ、どうする?」

「手当てする!」

「「嘘だろ?」」


アメリとフリースの声が被った。フリースも想定外の返しだったのだろう


「ま、まあ、でもあいつが時間稼ぎをしていなかったら、私たちが死んだ後にメラアが来ていたのも事実……ってか、あいつ別世界から転移してきてたのか?」

『二年前に飛んできた悪党と言ってたが、ここ二年の不可解な未解決事件の犯人がそいつらになるってことか?』


アメリはそんなことを考えている


「着いてきて!私の家近いから」

「そこまで言うなら仕方ない」


とても格好をつけており、かなりうざいだろう。アメリは息衝き家へ向かうマナエッテとフリースの後を追った

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