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エッセイ

父の最期の時の思い出 ~非常事態の時ってつい、本音が出ますよね~

作者: いかすみこ

失言したのは私です。病院に泊まり込んでいたので、疲労からつい。言われた姉は、目を丸くしてました(;'∀')。


なかなかドラマみたいにカッコよくとはいかないものですね。


本当に最後まで家族みんなに優しい父でした。

ケンカも山程しましたが。主に私と(笑)



 出勤途中、父が入院している病院から電話がかかってきました。


「お父様の容体が悪いです。すぐ来て下さい」


 それを聞いて考えたのは、『とうとうか! 』でした。


 実はその数週間前、医師から覚悟してくださいと言われていたのです。

 職場に連絡すると、上司が配慮してくれ有給休暇を全部取らせてくれました。

 次に姉妹たちに電話。姉が自宅に寄り母を病院に連れてきてくれると請け負ってくれました。私は出勤途中の作業服のまま、病院に向かいました。

 病院では、先に姉と母が着いていました。


『もう意識は無く、今夜が峠です』


 と説明を受けた事を、姉が教えてくれました。


 その後、三女の妹も到着しました。


 しかし、問題がありました。

 遠方に住む四女の妹です。


 四女はフリーランス。しかも、代わりが効かない仕事です。前倒しで終わらせるとLINEが来ましたが、来れるのは最短で数日後。


 父が生きているうちに会うのは、絶望的となりました。


 ところがです。奇跡がおきました。

 なんと父が医師の予想を裏切り、三日も生き抜いたのです。

 医師や看護師さんたちが驚く中、迎えた四日目の朝。四女から、泣きそうな声で電話が来ました。


『今、特急に乗った! まだ間に合う? 』


 父が生きている事を伝え、病院の最寄り駅まで車で迎えに行くと約束しました。


 駅の階段を駆け足で降りてくる四女。車に乗せ、病院に急ぎます。


 病室に入ると、父はまだ生きていました!

 四女は間に合いました!!


「お父さん、○○(四女)の事を可愛がっていたものね。最期に会いたかったんだね」


 三女がしみじみと呟きました。


 家族全員が揃い落ち着くと、だれともなく視線が集まったのは私の服装。


 実は四日前からずっと、私は同じ作業服を着ていたのです。


 小さい子どもがいる姉や三女、高齢の母は交代でそれぞれの自宅に帰宅してました。しかし私は三夜連続で、病院に泊まり込んでいたからです。

※コロナ渦前


 ずっと峠と言われていたので、着替えを持ってきて貰ってませんでした。

 冬場とはいえ、四日はさすがに限界。私は帰宅することにしました。


 久しぶりにお風呂に入り、さて病院に戻ろうかと車に乗ったタイミングで電話が来ました。


 母からです。


『お父さんが今、亡くなった! 』


 私が病院を出て、一時間足らずの事でした。


 車を運転しながら思い返していたのは、父のこと。


 実はその数年前、私は最初の飼い猫を病気で亡くしていました。目の前で息を引き取った猫を前にし、周囲がドン引くほど泣き叫んでいた私。当時の父は認知症がかなり進行していましたが、必死に慰めてくれました。


(もしかして死に目を見せたくなくて、私が病室を出たタイミングで旅立ったのかな)


 病室に入ると、姉が涙声で言ってくれました。


「十年も必死に介護していたあなたが、最期に立ち会えなかったのが可哀想で……」


 そんな優しい姉の言葉に、思わず口を突いて出たセリフ。


「十年も介護したんだから、看取りぐらいは勘弁してよ~」


「………………」





 姉ちゃん、あの時はごめん!せっかく気遣ってくれたのに!! 反省しています!!!





このあと「あんたらしい! 」と家族全員泣き笑いとなりました。


大好きだった父が亡くなりうつになり、メンタルクリニックに通いながら数年たちます。


すこしずつ気持ちが整理され、こうして笑い話に出来るようになりました。

また、介護やお葬式などの事もエッセイを書けたらと思っています。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読んでてこちらも思わず笑い、少し泣きのオチ [一言] しかし、あとがきを読むとやはりダメージは大きかったのですね こうしてたまに話のネタにでもしてあげれば、故人も天国でニヤリなので、また…
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