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第4話 ドラゴンの秘密

私はベッドでくつろいでいた。買い物がうまくいってとても気分がいい。

ルンルンで鼻歌を歌っていると呆れ声がとんでる。


 『ずいぶんご機嫌だな。そんなに嬉しかったのか?』


 「うん!

それにしてもやっぱりこの町は落ち着く~。住もうかな」


 何気なく呟くとドラゴンが焦ったように飛び跳ねる。


 「住む⁉お、お前、世界に興味無いのか⁉」


 「そこまでは。歩くの辛いし」


 全く興味がないわけでは無いが、世界中を見て回りたいという欲もない。

それにアンゼータはお店も揃っているし治安は良いほうだと思うので、移動する理由がないのだ。

 首を傾げてドラゴンを見つめていると諦めたように大きなため息をついて

珍しくボソボソと話しだした。


 「何で俺が焦ってるのか気になるんだろ?

俺は()()()()()()()()()()()()()()()んだよ」


 「へ?どういうこと?」


 『仕組みは知らん。俺が知りてぇし。

 ただ、1つ言えるのは、俺はぬいぐるみに入る前は別の場所で生きてたって

ことだ。肉体を持ってな』


 「えーーっ⁉」


 叫んでしまってから慌てて両手で口元を抑えた。おじいさんや他のお客さんから注意されるかと思い、

少し部屋の外の様子を伺ってみたが何の変化もない。ホッと息をついてドラゴンの言葉を頭の中で繰り返した。


 偶然、魂がぬいぐるみに入り込んだ。


 やっぱり生物の魂だった。

ドラゴンのぬいぐるみだから、魂もドラゴンなのだろうか。


 「じゃあ、本物のドラゴン⁉」


 『そこまではわからん。悪いが、今の状態になる前の記憶が曖昧でな。

人間だったかもしれねぇし、魔物だったかもしれねぇ』


 「そうなんだ……。焦ってたのは行きたい場所があるから――

そうか!故郷に帰りたいのね!」


 「まぁ、そうなるな。ここじゃないことは確かなんだが」


 「わかった!行こう!」

 

 「住むんじゃなかったのか……?」


 申し訳ないと思っているのか、珍しく小声で言ったドラゴンに力こぶを作ってみせる。


 「あなたが故郷に帰りたいのなら別!

それに私、保護者だし!」


 「フン……調子のいいヤツめ。

 それなら明日、庶民っぽい服を買っとけ。

ここは豊かな町みたいだから、今みたいな高価そうな服着てても大丈夫だが、

貧しい所はそうでもねぇぞ」


 「お金持ちってバレるから?」


 「ああ。それにもしお前が悪いやつに捕まってみろ。身代金要求されるぞ」


 確かに、貴族というだけで嫌味を言われたりそっけない態度をとられたり することはあった。

それに以前渋々参加した舞踏会で誰かが攫われた、みたいな話も聞いたことがある。

身近では身代金がどうのとかいう話は聞いたことはないが、誘拐されるのはよくあることみたいだ。


 「勘当されたのに?」


 「悪いやつらはそんなこと気にしねぇよ。

金さえ手に入ればいいんだからな」


 「今日買った黒いのじゃダメ?」


 ドラゴンに服を見せながら言う。前後真っ黒で目立つところといえば袖口や裾の白い部分ぐらいしかない。

 ドラゴンは少しの間唸っていたが、10回目ぐらいで唸るのをやめて喋りだした。


 「まぁ……大丈夫か。装飾品とかジャラジャラつけてるなら問題ありだが」


 「じゃあ、これからよろしくね!ラディウス!」


 「なんだそれ。俺の名前か?」


 怪訝そうに言うドラゴン――ラディウスに向かってしっかりと首を縦に振った。

光源という意味で、ぬいぐるみにそんな能力はないだろうけど、白いし、なんとなく光っているような気がしてちょうどいいと思ったからだ。


 「うん!「ドラゴン」とか「あなた」って呼ばれるの嫌でしょ?」


 「まあ…………うん。そうだな。

 ラディウス……ラディウスねぇ……。悪くない」


 「本当⁉

 あ、遅くなったけど、私はシーラ」


 『頭の片隅には置いといてやるよ』


 「ひどい!ちゃんと覚えて!」


 頬を膨らませてラディウスに迫ると笑われた。


 「箱入り娘でじゅうぶんだ。もし俺が故郷に帰るまでに箱入り娘じゃ

なくなるんなら呼ぶかもしれねぇが」


 「呼ばれるように頑張る!

 それはそうと、ラディウスの故郷ってどこ?」


 「ここからは遠いだろうな。

なぜかは知らんが、景色が頭の中に浮かぶんだよ」


 元の体ではないし、記憶がないけど景色が浮かぶということは帰りたいの

だと思う。

 作ったのは私だし、なにより保護者なのだから、しっかり送り届けたい。


 「へー。

 でもどうやって情報集めよう?ラディウスの故郷の名前もわからないし。

あ、思い切ってラディウスを見せて「この動物どの辺りに住んでそうですか?」って聞くのはどうかな?」


 『ハチャメチャだな。

 まぁ、記憶がない俺もちょっと悪いけど』


 「気にしないで。たぶん答えてくれる人はいるよ。

 よーし、明日から頑張るぞー!」


 『うまく集まればいいがな』


 私は気にしなかったが、ラディウスの心配は当たってしまうのだった。

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