第33話 新たな役割
実家に戻った私は、さっそく家族に集まってもらっていた。
もちろん、供物届け役について話すためだ。
「と、いうことで、ホワイトドラゴンに供物を運搬する係を任されちゃって……」
「だ、大丈夫なのか?ホワイトドラゴンって強い魔物なんだろう?」
さっそく父のフィガロが口を挟む。普段の威厳はどこへいったのか、不安そうな顔で肩を震わせている。
すると、母のソフィアが口を開いた。
「でも、シーラはホワイトドラゴンに何回も会っているのでしょう?
それでも傷1つないってことは安全なんじゃない?」
「うーん、でもなぁ……。
それに滞在場所は?宿ならお金がかかるぞ」
父の過保護が発動している。
母はどこか微笑ましそうに見つめているだけだった。
「滞在場所はドラゴンの山の麓で、宿屋を経営しているジェイドさんたちにお世話になるの。
1泊銅貨3枚だけど、お小遣いがあるから、1・2か月ぐらい持つよ」
「ああ、その宿屋なら俺もお世話になったよ。夫婦だったよな?
2人共いい感じだったし」
兄のレオの発言を受けて、父は長身を縮こませた。心配していた2つのことが解決してしまって、目を泳がせている。
その体勢のまま、どこか寂しそうに私を見つめてきた。
「もう……こっちには戻って来れないのか?」
「供物を運ぶのも毎日じゃないから、戻っては来れるよ。
でも行き来が大変だし……」
「なら、家から船を出すのはどうかしら?」
「え?」
「へ?」
穏やかに言った母に全員の視線が集まる。彼女は気にしていない様子で話を続けた。
「カロン家はクラルハイト南部。ドラゴンの山はヴァイスア東部でしょう?
だったら、双方に簡易的な船着き場を作って、行き来した方が早いわよ。
シーラの生活物資や、宿屋夫妻への御礼の品とかも届けられるし」
「さ、さすがは才女!恐ろしいっ!」
「あなた、それで呼ぶのやめてもらえる?私、嫌なのよ」
「す、すみませんでした……」
温厚な母にピシャリと言われて、父が背中を丸くした。
この話し合いになってから、いいところが1つもない。
それにしても、母が才女と呼ばれているのは初めて聞いた。確かに頭が切れるし、言われてみれば納得だな、と小さく頷いた。
父は慌てたようにハンカチで汗を拭うと、口を開く。
「か、簡易的とはいえ、船着き場を作るのに1、2か月はかかるだろう。
その間は港町から行き来してもらわないといけないが……」
「それは大丈夫!今までも行き来してきて慣れたから!」
「まぁまぁ、頼もしくなったわねぇ、シーラ」
母に笑顔で言われて、頬が緩む。やっぱり褒められるのは嬉しい。
ついニヤニヤしていたら、兄が声をかけてきた。
「じゃあ、1回目は俺が届けるよ。何か欲しいものがあったら教えてくれ」
「うん!ありがとう、お兄ちゃん!後で紙を渡すね!」
こうして私は、ホワイトドラゴン――ラディウスの“伝令”として、新たな日々を迎えることになった。
このお話で【第1部完結】です。
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※この物語は続きます※
【第2部・始祖竜編】準備中。公開をお楽しみに!




