第24話 問題解決に向けて
消し飛ばされる心配がなくなってとてもホッとしているが、まだ問題は残っている。
ラディウスが村人を消し飛ばしていたこと、畑を荒らしていたこと、そしてこれからについてだ。
まずは、どうして人を消し飛ばしていたのか聞くことにする。
「ねえ、ラディウスはどうして人を消し飛ばしていたの?」
『そりゃあ人間共が好き勝手するからだ。宝物がないか住処を掘り返したり、取ってた食物持ってったりよ。
1番酷かったのは用を足されたときだな』
「それは……ヒドいね……」
私が同じことをされても怒る。
それをラディウスは初対面の人間にやられたことがあったのだ。消し飛ばしたくなるのもわかる。
私が共感したことが嬉しかったのか、ラディウスは興奮した様子で話を続ける。
『だろ⁉
ちなみに消し飛ばす前に何回も忠告したんだ。それでも帰らなかったからなアイツラ!』
『なら、人間さんが悪いですねー。ラディウスさんが一方的にやっていたのなら討伐されて当然だなーとは思っていましたが』
『よほど敵意でも向けられてない限り、出会い頭に消し飛ばすことはねぇ』
「やっぱりお話と一緒だね」
『一緒じゃねぇ!何回も言うが俺は人間を殺してんの!
話の内容はほぼ実話だが、都合の悪いところは書き換えたんだろうな』
それでも私は一緒だと思う。ラディウスは口は悪いけど、なんだかんだ優しいし、今だって命の危険を心配しなくていい。
人を消し飛ばしていた理由がわかったので次は畑だ。
「じゃあ畑をダメにしたのはどうして?」
『山に入ってきたヤツがいたことを知らせるためだ。俺が村まで行くわけにもいかねぇからな。そうでもしねぇとモノ好きが山に来ちまうからな。
俺からしたら忠告のつもりだったんだが、そこまで意味はなかったみたいだしよ』
『村長さんも村人たちに言ってはくれていたみたいですけどねー』
それでも住処に近づく人はゼロにならなかった。
しかしあまりにも畑をダメにされたため、困り果てた村人たちにラディウスを討伐するという決意をさせてしまったのだ。
「そうだったんだ。でも、もう畑をダメにしたり人間を襲ったりするのはやめてほしいの」
『住処に入って好き勝手してるヤツラを黙って見てろって言うのか⁉』
「そこをなんとか……」
『ムリだな!人間共が供え物でもするっていうんなら別だが!』
「供え物?」
初めて聞くワードだ。なんとなく宗教っぽい感じがする。
首を傾げているとテネルが2回ほど跳ねて口を開く。
『食べ物とかをあげることですよー。定期的に行なえば飢餓状態は避けられますね』
「へー!
供え物するのってリル村の人たち?」
『そうなるだろうな。ここから1番近いし。
まぁ、応じなかったら今まで通り容赦なく消し飛ばすし畑荒らすぜ』
「もし供え物してくれるようになったらどうするの?」
『お前が言ったように人間を襲うのはやめてやる。畑もな。
あと、山に住むワイバーン共にも圧かけといてやるよ』
『わー、サービス満点ですねー』
『俺は静かに暮らしてぇんだよ!それぐらいするわ!』
やっぱりラディウスは優しい。自分のためといったらそれまでかもしれないが、ラディウスなりにいろいろ考えているのだろう。
新しい使命ができた。供え物をしてもらえるかリル村に交渉に行くことだ。
そうなると1度山を降りることになるし、ラディウスとも別れないといけない。
2度と会えなくなるわけじゃないのに胸が締めつけられてくる。
「じゃあリル村に行かなきゃ……。悪いけどラディウスは――」
「な、なんでホワイトドラゴンがいるんだ⁉」
聞き覚えのある声に振り返るとジェイドさんが立っていた。全身鉄の鎧で背中には大きな剣。
まるで魔物退治に来たみたいだ。
「ジェイドさん⁉どうしてここに⁉」
「それは俺が聞きたいよ。いったい何があったんだ?
昨日まで、いや、今日の朝までホワイトドラゴンが復活した気配なんてなかったぞ⁉」
ジェイドさんが私に近づいてくる。頑丈そうな鎧や剣もそうだが、なにより「気配」と言った。
「もしかしてドラゴンスレイヤーですか?」
「ああ。ホワイトドラゴンは完全に滅びたわけではないと聞いていたからね。
宿屋を経営すると同時に山の様子を見ていたんだ」
そう言ってジェイドさんは一息つくと、私の後ろにいるラディウスを睨みつけた。
宿屋にいるときや私と話しているときには見せなかった敵意のこもった目だ。
大剣を抜くとゆっくりラディウスに向ける。
「どんな理由で復活したかは知らないが、今度こそ滅んでもらおうか!」
『お前、何も違和感ねぇのか?』
「は?」
ラディウスの言葉にジェイドさんは目を丸くした。
しかしすぐに元の目つきに戻すと体勢を低くする。
「何が言いたい!そうやって気をそらす気だな、邪竜め!」
『住処に近づいたヤツがどうなるか聞いたことあるだろ?』
ジェイドさんは少しだけ剣を下げるとラディウスや私、地面を何度も見比べた。
そしてハッとして目を見開くとラディウスを指差す。
「どうしてその娘を消し飛ばしていないんだ⁉」
『敵意がねぇからだよ。誰だって消し飛ばしてるワケじゃねぇ。
それに今だってそうだ。俺が噂通りなら、お前、消し飛んでるぜ』
「…………………………」
何かを感じ取ったようで、ジェイドさんはラディウスを警戒した目で睨みながら剣を地面に置いた。
それから目を閉じて何度も唸って悩んでいるようだったが、ゆっくりと目を開けると私をまっすぐ見てくる。
「経緯を話してくれないか?」
「はい……」
ここまでのことを全て話した。
ジェイドさんは時々眉をしかめていたけど、最後まで口を挟まないでいてくれた。
「ぬいぐるみについては信じがたいが、そうしないと辻褄が合わないな」
「それで今、リル村の人たちに供え物をしてもらえないかってお願いしに行こうかと話してたところなんです」
「どうだろうな……。確かにリル村は近いが自分たちの生活でいっぱいいっぱいな様子なんだ。
少し遠くはなるがルオーロの方がいいと思うよ。
ちなみにドラゴン、そうなったら何日おきに持ってきてほしいんだ?」
『そうだな……7日おきぐらいか』
「なるほど。とりあえずルオーロに行って交渉してみようか。
君にもついて来てもらうけどいいかな?」
「すみません、兄と合流する約束をしてて、2日後には帰らないといけないんです」
ここからルオーロまでどれぐらい時間がかかるのかわからないが、
今から行くとして交渉も考えると2日では済まない気がする。
「そうか。証人がいた方がいいから、君がまた来てくれるのを待とうか。
今日はもう降りよう」
『ああ、そうだ。交渉に行くことになったら向かう前に俺の所に寄れ』
「なぜだ?」
ジェイドさんが尋ねるとラディウスは鼻で笑った。ぬいぐるみのときと全く変わっていない。
『鱗を1枚やる。新しい方が復活したって証明になるだろ?』
「わかった。その時は寄らせてもらう」
「私、1回大陸を離れるけど大丈夫?」
『俺を誰だと思ってんだよ⁉そう簡単にやられるか!』
「わかった。また今度ね」
本当は何度も振り返りたかったが、ジェイドさんを不安にさせてもいけないので1回だけにして、山を降りた。




