学園祭
「これより、学園祭の開催を宣言する!」
生徒会長による開催宣言がなされ、学園祭は幕を開けました。
学園祭はクラスごとに出し物を決定し、その人気を競います。舞台、出店、アトラクションの3つの部門の他に総合部門が設置され、来場いただくお客様に投票をしていただく方式を取っています。
我がクラスでは舞台部門で演劇を披露する予定です。
「発表時間までまだありますわね。今のうちにセリフの最終確認をしなくては、」
音楽にもこだわりを見せているため、皆気合が入っています。生演奏をしたいという声もありましたが、舞台の準備や上演時間、それから撤退するための時間を考えると現実的ではないとの結論になり、魔術具で録音したものを流すこととなりました。
しかし、実際に演奏をしたいとの声も多く上がったため、生徒会に確認をしたところ、ホールの外や中庭であれば演奏しても良いという許可を得ることに成功いたしました。生徒会としては、この演奏により部隊の方へお客様を誘導できるかもしれないとの考えに至ったそうです。
「アレックス、学園祭は楽しめているか?」
「お兄様、来てくださったのですね。当然だ。記録用の魔術具もきちんと持参してきたぞ」
そう仰り見せてくださったものは私が随分前に改良を施したものでした。何年も同じものを使ってくださるのを嬉しく思う反面、魔法陣の美しさがまだまだだったことに恥ずかしさと申し訳なさを感じます。
「お前が初めて直してくれたものだから嬉しいんだ」
「お兄様がそう仰るのなら良いのですが。お母様もいらしているのですか?」
「いや、演劇発表の少し前に来られるそうだ。テオも楽しみにしていたぞ」
「そうでしたか、期待に添えられるように頑張りますわ。と言いましても私の出番は少ないですが」
「そうなのか?」
「今回主役に抜擢されましたのはカミラですわよ。私はそんな彼女を長さえする役です」
「なるほどな。と、そろそろ注目を集めてきたから移動するよ」
「ええ。お兄様お気をつけて」
お兄様は軽く手を上げて出店のあるエリアへと向かわれました。後ほどお母様たちと合流した際にスムーズに移動できるよう出店のリサーチを行うのでしょう。
私もクラスの待機場所へと戻ります。必要なものは用意できました。
「お待たせしましたわ」
「アレックス、、急にごめんね」
「いえ、こちらの布でよろしいかしら?」
「助かるわ、本番直前に衣装が破れるだなんて、」
「アメリア、私もお手伝いしますわ」
「ありがとう。この布にバラの刺繍をお願いできる?」
「ええ、もちろんです」
受け取った布に手早く刺繍を施します。その姿を驚かれたように視線を向けてくる方もいますが、早く仕上げなければなりません。色とりどりの色で仕上げていきます。ついでに保護の魔法陣も目立たないように隠しておきましょう。
「アメリア、こちらでよろしいでしょうか?」
「ありがとう、早くて助かるわ」
「今日の私は魔術師ですからね」
「あら、ふふ、そうね」
アメリアの表情から緊張が取り除かれていきます。衣装の最終確認の際に見つかった破れに最も動揺していたのはアメリアでした。衣装の責任者として責任を感じてしまったのでしょう。
他の物を確認をしつつ、必要な枚数の布に保護の魔法陣を施していきます。それを衣装係の方に渡し、衣装の裏面の方に縫うようお願いします。
「アレックスがいてくれたよかったわ、私達だけだったらもっと大変だった」
「いえ、私はできることをしたまでです。出番もセリフも他の方々に比べると少ないですし」
「それでもよ。本当にありがとう」
「あら、本番はこれからですわよ?皆で成功できるように頑張りましょう」
私がそう言うとアメリアはいつもの笑顔を見せてくださりました。
本番の1時間前、待機場所に全員が集合しました。気合十分のようです。
「アレックス、何か言葉はないの?」
「わ、私ですか?」
「私達をまとめたのは貴女じゃない」
カミラに背中を押され、私は1歩前へ出ました。視線が一気に集まります。皆様、私が話すのを期待しているようです。その期待には応えなければなりません。
「今日のこの日を迎えるために私達は時にぶつかり合いながら意見を交換し、より良い物を作るために演者はお稽古を、衣装班は細部までこだわり抜いた衣装を作りを、大道具・小道具班は演劇の雰囲気に合わせた物作りを、演出班は素晴らしい演出計画を練り、一丸となり頑張ってきました。今日明日はその私達の頑張りを着ていただく皆様に披露する日となるでしょう」
ここまで言うと皆の表情が緊張に包まれました。
「先ほどまでのトラブルも無事解決することができましたわ。つまり、私達にはどのような困難にも打ち勝つことのできる発想力と技術があるのです、その力を存分に発揮し、お客様を楽しませ、私たち自身が楽しむことのできる素敵な発表にしましょう!」
最後にそう言うと高揚感に満ち溢れた表情になります。緊張よりも楽しみの方が勝たれたようですね。私達は決して落ちこぼれではない、そう思いながら団結力を強めてきました。音楽祭や文化祭を通して確実に成長しているのです。
「皆様、移動の方をお願いします」
運営係の生徒の誘導により、私達は移動します。
そして、ブザーとともに幕は上がりました。




