グレイの相談
雷が落とされて以降、第2王子は不必要な外出を禁止されたようです。
オスクリタに対してあのような無礼を働いておいて軽い罰だとは存じますが、ことを荒立てたくないと彼女自身が仰ったのでこれにて溜飲を下げることに致します。
「その割に不満そうだな」
「そうお見えしますか?」
「ああ。珍しい表情が見れた」
そう仰るノア様は少し不機嫌そうです。何かあったのでしょうか?
「空間拡張魔術ですか?」
「よくわかったな」
「よく使用しますから。多くのものを運ぶ時に便利ですわよね」
「そうだな。だが、できることならもう少し簡素化したい」
「簡素化ですか、、、」
今でも無駄のない素晴らしい魔法陣だとお思うのですが、さらに簡素化するとなるとどこを削るべきでしょう。
「少しいいか?」
「グレイ、どうしたんだ?」
「お疲れのようですわね」
「相談したいことがある」
「相談だと?」
グレイがそのようなことを仰るだなんてとても珍しいです。明日は槍でも降るのでしょうか?
「失礼なことを考えてはいないか?」
「気のせいですわ。どうかなさいましたの?」
「とても深刻な問題だ」
グレイの真剣な表情に私たちは固唾を呑んで待ちます。
このような顔初めて見ました。
「俺とカミラ嬢の縁談の話は知っているだろう?」
「ええ。カミラからお聞きしましたもの」
「今度、出かけることになったのだが、」
そこまで進展していたとは存じ上げませんでした。カミラが少し嬉しそうだったのはそういうことですのね。
「カミラ嬢に距離を置かれる方法を知りたい」
「シバかれたいのですか?」
「アレクサンドラ嬢?」
「今の発言はお忘れください」
いけません。つい本音が出てしまいました。気をつけなければなりませんわ。
「距離を置かれたいとはどういうことだ?良い関係を築けているのだろう?」
「そうなのだが、」
「はっきりと理由を申し上げてください。政略結婚なのですから両家に利があるもので簡単には覆せませんわよね?」
「ああ、そうなんだよ。だから困っている」
「つまり、最終的な目標は婚約自体を破棄したいと。だが、縁談の段階だろう?」
「ほぼ内定しているようなものだ。過去の自分が悔やまれる」
「いったい何をしたんだ?」
大方、ご両親のお話に対して適当に返事なさったのでしょう。カミラはグレイのことをお慕いしていますし、両家の仲は良好。カミラであれば是非にと喜んでおられることでしょう。
「カミラに幻滅されたいだなんて、変わった趣向をお持ちですね」
「う、」
「言うまでもなく家同士の釣り合いが取れるならば相手に困らないだろうからな」
「このような会話をしている時点で印象は悪くなりそうなものですが」
「しかし、カミラ嬢には俺よりもふさわしい男が現れるはずで、」
「それは世界中をお探し出来れば当然でしょうね。国内に限ってはグレイが最良だとは思いますが」
「ふさわしいかどうかなんて曖昧なもの誰が決めると言うんだ?」
「お前たち、いつにも増して厳しくないか?」
「気のせいだと思いますわ」
自らがまいた種ですもの。処理はご自身でなさった方がよろしいでしょう。その上でカミラを泣かせてしまうようであれば、こちらも考えるべきことがありますが。
「だが、中途半端な態度ではカミラ嬢を傷つけてしまうのではないかと、」
「よく分かっているではないか」
「それを踏まえてきちんとお考えくださいませ。まずはカミラと向き合うことをお勧めいたしますわ」
「そう、だな。すまない。変なことを聞いて」
グレイは少しだけ真面目な顔をして頷いたあとに席を立ちました。これなら大丈夫でしょう。
カミラはグレイに振り向いてもらうために努力を重ねています。そのことについて向き合っていただけると幸いなのですが。
いえ、考えるだけ無駄ですね。決断を下し受け入れるかはどうかはお2人が決めることです。
お茶が少し冷めてしまったようですね。私は思考を切りかえて改めて目の前の本に向き合いました。
集中力は続くことがありませんでしたが。




