認識変化の第1歩
オスクリタを見送りを受け、私は学園へ登校しました。
学園内は外交パーティーの話で持ちきりで盛り上がっています。心なしか以前よりも注目されているような気がしないでもないですが、気にせずに教室へ向かいます。
教室内もいつにもまして騒がしいようです。
「アレックス、おはよう」
「アメリア、おはようございます、外交パーティーのお話で持ちきりのようですね」
「アレックスは参加したんでしょう?どうだった?楽しかった?」
「一応は楽しめたような気がします」
アメリアは招待客がどのようなお召し物を着られていたのかが気になるようです。話せる範囲でお話しますが、とても楽しそうに聞いてくださります。
「アレックス、おはよう」
「リリー、おはようございます、そんなにはしゃがれてどうしましたか?」
「聞いた?カミラが魔王様とお話されたようなの」
「魔王様って、あの?」
2人にはまだご紹介をしていませんでした。魔族についてどのように思われるのかがわからないからです。
「私もお会いしてみたいわ。古代文学に出てくる魔王様ってとても素敵な殿方なのよ」
「またその話?でも、私も魔界には行ってみたいわ、お父様が一度魔族に助けてもらったことがあってとても親切な方々だったんだって」
「アレックスはどう?魔王様を見たんでしょう?」
詳しくお聞きすると、アメリア達のような比較的平民の方々と多く交流する方たちにとって多種族に対する忌避感というものは少ないとのことです。理由としては、商人を介して物の流れを見る際にそれなりの交流をするそうで、商売相手として邪険にするのは損することになるからだそうで。いずれは紹介しても良いかもしれません。
「おはようございます」
「カミラ、おはよう、魔王様とお話されたってどうだったの?」
アメリアがそう興味津々に尋ねると教室中の視線が一気にカミラに向きます。
カミラは少したじろきながら私に視線を向けて言いました。
「私よりもアレックスに聞いた方がよいと思いますが。アレックスは魔王様と踊られていますし、何より親しいご様子でしたし」
「そうなの?アレックス」
今度は私に視線が向きました。私もたじろきます。
「え、ええ、そうですわ」
「魔王様ってどんな方?」
「その時着ていた衣装は?」
「ど、どのようにして親しくなられたのですか?」
一部の方からも質問が飛びます。中には怖がっている方もいますが、少しずつ恐怖が払しょくされることを願うほかありませんね。
「えっと、まずリリー、現在の魔王様は少女の姿をされていますわ」
「そうなの?」
「ええ。年は私達と同年代です。2つほど年上と仰られていた気がしますが」
「へぇ、やはりお美しいのかしら?」
「それは、」
「もちろんでしたわ!美しく艶やかな黒髪に磨かれたような美しい肌をされていて、美しいドレスをまとっていました。アレックスと踊られている姿は可憐であり美しくお2人だけまるで別世界のようで会場中の視線を釘付けにしており、」
カミラが熱弁し始めましたので魔王の見た目についてはカミラにお任せすることに致しました。
「でもどうしてアレックスが躍ることになったの?パートナー、エスコートする人は、」
「いらっしゃらなかったわ。王国の方でお願いすると聞いていたそうなのですが、それで恥をかかせるわけにはいかないと私が急遽踊ることとなりましたの」
「なるほどね。それで、どうやって親しくなったの?」
「幼いころに色々とありまして、彼女を助けたことがありますの、その時に」
刺激が強い話は極力避けた方が良いでしょうね。アメリアも察してくださったようです。
「アレクサンドラ様のお話をお聞きする限り、魔族や魔王様はそれほど危険ではないのかしら?」
「確かに、魔族がこちらを攻めてきたお話は耳にしませんわね、神話では耳にしますが」
「王宮が友好協定を結ぶくらいですから安全なのではなくて?」
外交パーティーのお話を聞いて魔族に対する考え方について見直すべきではとの声が上がっています。先ほどまでのような恐怖心を持つべきかを考えているようです。
それは教師たちの間でも広がっているとのこと。これからは表立って批判する人は少なくなるのでしょうが、国王陛下の言うような真の友好を結ぶまではそれなりの時間を要しそうだと感じられます。
「皆様、出席をとりますよ」
先生の号令により、私達はいつも通りの学園生活へと戻ります。いつも通りの中で少しでも良い方向へ改善できるよう、何をすべきか私は考えを巡らせました。




