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カフェテラスでお話を

 本日の授業がすべて終わり、放課後となりました。

 私はクラブにも属していないので図書館へ寄ってから帰ろうと思います。


「コリン様、このあと何かご予定はおありですか?」

「いえ、特には。いかがなさいましか?ターナー様、ミッチェル様」

「よろしければ少しおしゃべりをしませんか?」

「おしゃべり、ですか?」

「ええ。私達、コリン様と親しくなりたくて、」


 確かに、私もこのお2人とは親しくなりたいと思っておりました。彼女たちから発せられる言葉からは特に裏といいますか、下心のようなものは感じられませんし。


「ええ、構いませんわ」

「では、カフェテラスの方へ行きませんか?」

「カフェテラスですか?」

「ええ。美味しいケーキがあるんです」

「もう、アメリアったら。庶民棟に近いためあまり貴族令嬢はいらっしゃいませんが良い場所ですよ。ケーキだけでなく、パンや軽食なども置かれているんです。クラブ活動をしている学生のために学園の門が閉まるまで開いていますわ」


 施設の名前と場所は存じ上げていましたが、実際に訪れるのは初めてです。新たな人と交流すると新たなことを知ることができるのですね。

 まるで初めて読む本を手に取った時のようですわ。


「私はカフェテリアを訪れるのは初めてですのでぜひ、オススメのケーキを教えていただけますか?」

「もちろんです。さあ、参りましょう」


 ターナー様の先導の元、カフェテリアへと向かいました。

 お2人は庶民棟の方々と交流があるようですれ違うたびに挨拶をされています。


「お2人はよく訪れるのですか?」

「ええ。ご存じの通り私どもの家門はまだまだ歴史が浅く、貴族になって三代目ですから、家のつながりなどで知り合いも多いんです。未だに貴族棟で授業を受けても良いのか戸惑うこともございますし」

「それに、カフェテリアのスイーツは格別ですのでつい、訪れたくなるのです」

「アメリアはそればっかりね」

「あら、事実でしょう?それに、様々な情報を手に入れることができますもの」


 確かに、平民たちの情報を仕入れるのは大変です。彼らも貴族を前に緊張するのか、なかなか深い情報を上げることはあまりしようとしませんし。


「あら、お嬢様方いらっしゃいませ。今日はご友人もご一緒ですか?」


 カフェテリアへ到着すると早速スタッフに話しかけられました。常連のお2人は慣れた様子で返し、席へ案内されます。


「さあ、メニューを選びましょう」

「随分と多いのですね。迷ってしまいますわ」

「わかります。常設メニューに加えて期間限定メニューも捨てがたいですもの」

「コリン様は普段どのようなスイーツがお好みですか?」

「基本的には好き嫌いはありませんが、自室でいただくものは蜂蜜を使ったものをよくいただきます。時期によってはビターのものもいただきますね」

「でしたら、こちらのケーキはいかがでしょうか。優しい甘さがとても美味しいですよ」

「ミッチェル様のオススメでしたらぜひ、それにいたしますわ」

「私は期間限定のベリータルトに致しますわ」


 注文を終えると少ししてケーキと紅茶が届きました。

 一口食べると優しい甘さが口の中に広がります。しっとりとした生地も口の中でとろけるように無くなってしまいました。


「今まで知らなかっただなんてもったいないことをしていたようですわ」

「ふふ、お気に召したようで良かったです」

「ええ、誘ってくださってありがとうございます。ターナー様、ミッチェル様」


 私がそう言うとお2人は少し微笑んだ後に遠慮がちに口を開きました。


「よ、よろしければ、名前で呼んでいただけませんか?」

「よろしいのですか?」


 お2人は首をコクコクと縦に振りました。


「そ、それでは、リリー様、アメリア様」

「はい、」

「私のことも名前で呼んでくださりませんか?」

「え、?」

「嫌でしたらいいのです。その、私、お2人とお友達になりたくて、」

「アレクサンドラ様、」

「私たちもお友達になりたいです」

「ありがとうございます。その、長いので愛称で呼んでも、」

「い、いえ、まだ恐れ多いです」

「そ、そうですか」


 まだそれは早かったようです。


「では、お友達記念としてケーキをもう1つ注文しましょう」

「それ、アメリアが食べたいだけでしょう?」

「そ、そんなことないわよ?さ、アレクサンドラ様はどれがいいですか?」

「せっかくですから、アメリア様のオススメをお聞きしたいですわ」

「それでしたら、こちらですわ」


 ケーキを待っている間、ドキドキしつつも温かい気持ちになりました。

 ふと、昔言われたことが頭を過りますが、無理やり振り払ってお2人の顔を見ます。優しくて暖かい方達。


「どうかされましたか?」

「いえ、オススメのケーキが楽しみで」

「お待たせいたしました」


 運ばれてきたケーキは私のことを幸せな気分にさせてくださりました。

 3種類のフルーツのケーキ。その日以降、このケーキは友情を育む定番スイーツとして新たな流行として広がり始めたそうです。


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