オスクリタの滞在
交流パーティーを明日に控えた現在、私は準備に追われていました。
「お嬢様、明日はどちらを着られますか?」
「仕立てたのは1着だったのでは?」
「それが、奥様とデザイナーが張り切ってしまいまして、お客様の分も用意しておりますので確認をお願いいたします」
侍女長にそう言われましたので衣裳部屋へと向かいます。私とオスクリタの衣装が2着ずつ並んでいました。彼女ももうすぐ到着されるようですし出迎えの用意もしなければなりません。
お母様とお兄様の張り切りようはすごく部屋に用意する花もかなり拘っているようでした。寝着もお母様の計らいにより私と同じものを用意されたようです。
「お嬢様、お客様が到着されました」
「そうですか」
私ははしたなくならない程度の急ぎ足で玄関へと向かいます。かくいう私もお母様やお兄様に負けないくらい楽しみにしていたのです。
「アレックス!」
「オスクリタ、いらっしゃい。会いたかったですわ」
「私もよ」
部屋までは私がご案内したします。客間はきちんと整えられつつもリラックスして過ごせるようにお兄様が細部まで工夫を凝らされています。
「これは、寝間着?」
「ええ。お母様が私とお揃いの者を用意してくださりましたわ、気に入ると良いのだけれど」
「アレックスとお揃いだなんて気に入るに決まっているわ。私や側近たちの受け入れをしてくれて本当にありがとう。王宮側も用意しづらいらしくてね、」
「友好のために招待されているのに何を考えているのでしょう。オスクリタ、嫌なことがありましたらすぐに私に伝えてください。どうにかいたしますわ」
「ありがとう。心強いわ」
おおよその案内を終えましたら私の部屋でお茶をすることとなりました。定期的に連絡を取っているとはいえ、直接お話したいこともあるのです。オスクリタもここにいる間は魔王としてでなくオスクリタという少女に戻れると仰っていました。屋敷の中ではそのようにお過ごしいただく予定です。
「それで、学園とはどのような場所なの?」
「生徒の学びの場なのですが、一筋縄ではいかないこともありまして」
「例えば?」
「まず、クラス分けがあるのですが、私達のクラスは他の方々から侮られることが多くて、」
「そうなの?意外だわ」
「あまり気にしてはいませんがね。他のクラスにはない素晴らしい魅力もありますから」
オスクリタは魔界にも学園のような場を設けたいとお考えのようです。
「書物では読んだことはあるんだけどね。私も学園生活を送ってみたいわ。やはり、恋する人間たちが多くいるのでしょう?」
「どうでしょう?私はまだ2年生で経験はありませんが。そう言えば、見目の麗しい方が黄色い声援?を受けているのは見たことがありますわ」
「そこは不思議よね。求めるべきは魔力量なのに見目で騒ぐことができるなんて」
それは、魔族は美形の方々が多いため見慣れているからだとは思いますが。
「オスクリタ、人間は魔力量を魔術具を使わずに見ることはできませんわ」
「それは、とても不便ね。子孫のことを考えるのであれば少しでも魔力量の多い方と巡り合いたいものだと考えていたわ」
「一理ありますが、測定するまでは見ることはできませんから」
「なるほど。パーティーで魔力量の話はしない方が良さそうね。怖がらせちゃいそうだわ」
「そうですね、魔界の特産物や研究についてお話をすると楽しいかもしれませんね。私もできるだけフォローしますわ」
「ありがとう、頼りにしているわ」
私達は夕食の時刻までおしゃべりを続けていました。
「もう、アレックスばかりオスクリタを独占するなんてズルいわよ」
「つい、楽しくて。」
「おじ様、おば様、この度はありがとうございます」
「そうかしこまらずにあの時のように楽しく過ごしてくれ」
「ええ。もしも不安になったら私やアレックスの部屋を訪ねたらいいわ。貴女がこうして来てくれるのをとても楽しみにしていたもの」
「はい、実は、この後アレックスに刺繍を教えてもらう予定なんです」
「いいわね。私も参加しようかしら」
「では、お母様の分も用意をしておきますわ」
オスクリタはとても楽しそうに夕食をいただいています。食事も口にあったようで安心しました。明日からは緊張した場面に立ち会うこととなりそうですから、今だけでも心を休められますように。
屋敷の皆でそう願いながら食事は進みました。




