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友人に絶交宣言をされたので、本来の自分が戻ってきました  作者: 葵


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魔王 オスクリタ

 大変美味しい食事の後は魔王からお茶の誘いを受けました。お兄様とノア様はジャクソン様が共有されたいことがあり、アウロラ様は先に休まれるとのことでした。

 私は準備を整えてから魔王の部屋へと向かいます。


「アレックスよく来たのう」

「お招きいただきありがとうございます」

「我は其方と会うことを楽しみにしていたのだから当然であろう」


 お茶が用意され、使用人の方々が退室されます。

 まずは毒見を兼ねて魔王がひと口お茶を飲み、お茶会が始まりました。


「本当に久しぶりね、元気してた?もう、私の話を聞いてよ」

「魔王、言葉が崩れていますよ」


 防音の魔術具を起動した途端に魔王の言葉が崩れました。相当お疲れのようです。


「2人きりの時くらいいいじゃない。私頑張ったのよ?」

「わかりました。オスクリタは相変わらずですね」

「アレックスもね。はあ、魔族の暮らしが豊かになって来たのは良いことだけど課題もまだまだあるのよね」

「あのころに比べたら暮らしやすくなったのでしょう?民たちの評判も上々でしたよ」

「それは良かったわ。それにしても、新たな魔王の誕生だなんて、いったいどこの誰が流したのよ」

「私も早とちりをしてしまうところでしたわ」

「していたでしょう?一応、王子にも誤解は解くよう伝えておいたわ。何もしていないのに攻め込まれるなんて御免だもの」

「そうですね。今回は転移陣を利用しましたので、もし何かあったとしてもすぐには攻め込まれないと思いますわ。いざとなったら記憶を消す方向で考えています」

「容赦ないわね。仮にも自国の王子よ?」

「ですから、手荒な真似はしていないのです。私だって色々と大変でしたのよ」

「そうね」


 ふと、初めてお会い時を思い出します。ボロボロで道に倒れていて、回復してもしばらくは警戒されていました。


「アレックスったら、毎日のように私に声を掛けて投げ飛ばそうとしても捕まらないし、魔法やm術を放ってもことごとく無効化するか避けてしまうのだもの」

「そんなこともありましたわね」

「そんな強さを持っているのに危害を加えてこないなんて、あの時の私は貴女を信用するしかなかったの。その選択が間違ってなかったと心から思えるわ。挙句の果てに魔王を討伐しようだなんて」

「それは、オスクリタが毎日のように怯え、泣いていたからではありませんか。毎晩のように私のベッドに潜り込んできましたし」

「そうでないと眠れなかったのだもの。アレックスは強いから守ってくれると思ったの」


 毎晩のように泣きながら潜り込んできていました。そのたびに私は子守唄を歌って寝かしつけていたのでしたっけ。お母様と3人で眠りについたこともありましたね。


「私に手を差し伸べて優しくしてくれたのはあなた達だけよ。本当にありがとう」

「貴女が私に最初に助けを求めたからですわ。あの日、貴女は道に倒れながらうわ言のように助けを求め、私の手を取りました。貴女の無意識の勇気が貴女自身を助けたのです」


 倒れて震えながら助けを求めた貴女を拒むだなんて選択肢はありませんでした。私も迷っていた時期でしたし。ともに過ごすうちに段々と妹のように思えたのかもしれません。


「今では、魔族をまとめているだなんて感慨深いですね」

「私はまだまだよ。皆に助けてもらいながらどうにか立つことができているの。でも皆が平穏無事に過ごすためならどんなことだってやり遂げてみせるわ」

「とても立派なことですわ。そんなオスクリタにプレゼントです。こちらを」

「これは?」

「お母様から預かってきました。きっとこの地の繁栄のために大きな助けとなるでしょう。お母様にとっては貴女も娘のようなものなのですから」


 あの頃は私よりもよっぽどオスクリタは乙女でしたから。今もかもしれませんが。


「本当に私は多くの者に支えられているのね」

「支えてくれる方々がいらっしゃるのはそれだけの人望がある証拠です。以前の魔王なら考えられなかったでしょうね」


 以前の魔王。オスクリタの父親は力と恐怖で全てを支配するような方でした。強大な力を持っていたために誰も逆らえずにいました。しかし、オスクリタが強大な魔力を持っていることを知ると自らの権威のためにその命を狙ったのです。

 魔王討伐後、オスクリタには多くの仲間ができました。魔界と呼ばれるこの地を良くしたいと思っていた者は多くいたのです。その者たちと協力した結果が現在の豊かさです。


「側近たちと相談した結果、王国とは友好協定を結ぶつもりよ。いがみ合っていては何も変わらないもの」

「そうですか。私に協力できることがあれば言ってください。力になりますわ」

「それは私もよ。貴女に、いえ、コリン家に何かあった場合は魔界の全てで助けるわ。それが、私達にできる貴方たちへの恩返しだもの」


 あの苦境から立ち直り、ここまで立派に育ったオスクリタは誰よりも強く美しく見えます。

 お茶を飲み終え、私は客間へと戻ろうとしました。


「アレックス、また、歌を歌ってくれないかしら?」

「そうですね。私達が出会えた奇跡を祝って歌いましょう」


 オスクリタは嬉しそうに笑ってくださいました。私も嬉しくて心が温かくなっていきます。今日は特別に少しだけ夜更かしをしましょう。

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