城下町
城下町はとても栄えていて活気があります。
変装をして散策を楽しんでいるといくつかのお店に興味を惹かれます。あちらには薬草屋さんに魔術具屋さん、それに美味しそうなスイーツショップまで。
「あら、お嬢さん魔王様を導いた魔術師様に似ているわね」
「そうですか?」
「ああ。魔王様が誇らしげに話されていて彫刻を作ろうとまでしていたからね。今日は観光かい?」
「ええ。今は街の散策をしているのです」
「そうかい、いいところだから楽しんでおいで。これはおまけさ」
「ありがとうございます」
果物を購入したらおまけで貴重な木の実が付いてきました。こちらも薬草屋さんで買う予定でしたので今日は運がいいですね。
「魔術師か、是非とも会ってみたいものだな。アレクサンドラ嬢は、」
「今はアレスとお呼びください」
「アレスは魔術師について何か知っているか?」
「ええ、ある程度は、ですが。あら?お兄様は、お花を買っているのですね」
「先ほどから悩んでいるようだ」
遠目から見守りつつお待ちするとしましょう。それにしても、
「ノア様は興味を惹かれるお店はありませんでしたか?」
「ありはするのだが、君はどうだ?」
「薬草屋さんに寄って魔術具屋さんを見てみるつもりです。お兄様も回復薬に必要な材料と装備を整えるための資材が欲しいと仰っていましたし丁度良いでしょう」
「そうか、ここには魔術書も売っているのだろうか?」
「ありますわよ。魔術具屋さんで取り扱いがあると思われます」
「詳しいのだな」
何度も訪れておりますからね。それにしても、髪の色を変えておいて良かったです。備えあれは、ですね。
「すまない、待たせたようだな」
「いいえ、大きな花束ですね」
「まあ、な。さて、次の場所へ向かうか」
続く薬草屋さんではいくつか珍しいものを購入いたしました。回復薬にも使えますし、他の用法もあります。王都では貴重で値が張るものも気軽に購入できることがとても嬉しいです。
そして、最後に馴染みの魔術具屋さんです。
「お嬢様に坊ちゃん、いらっしゃい。今日は友達も一緒かい?」
「ええ。魔術書をいくつか見せていただけますか?」
「私は装備の手入れをするためのものを」
「かしこまりました」
店主はそう仰ると店の奥の方からいくつか箱を持ってきました。
「こっちが最近の研究がまとめてあるもので、そっちが古代のものだ。お嬢様は古代の方がす好みだったよね?」
「ええ、ありがとうございます」
ノア様も手に取って眺めています。所有していないものもありますので購入して帰るのもいいでしょう。お兄様の方に目を向けると真剣なまなざしで装備を眺めています。
「アレックス、どう思う?」
「お兄様はどの武器の整備を行おうとしているのですか?」
「魔剣だな。最近育てているのだが、属性を増やしたくてな」
「なるほど」
以前の遠征で手に入れたものでしょう。属性は火だと仰っていました。まずは風もしくは土を入れていくべきなのでしょう。水では相性が悪すぎます。
「では、この2つを貰おうか」
「かしこまりました。そうだ、お嬢様におすすめの武器があるんですよ」
「まあ、本当ですか?」
「以前、剣だと大きくてうまく扱えないと言っていただろう?」
体格と力を考えますと私は接近戦があまり得意な方ではありません。ドラゴンの首を落とすのにも時間がかかってしまいますし、魔術に頼りきりであることを考えなければならないと思っていたところです。
「これだよ」
「これは、ペンダント?いえ、魔力を込めると武器が出てくるのですね」
「ご名答。使用者によって大きさや形を変えることができるんだ。注ぐ属性によっても変化してね、お嬢様は全属性だし上手く使えるんじゃないかい?」
試しに魔力を込めると、ナイフへと形を変えました。それにこちらは特殊な加工がされているようで、攻撃後も魔力の痕跡が残らないようになっています。
「こちらをいただきますわ。それから、魔術書を2冊」
「かしこまりました。今後とも御贔屓に」
ノア様も魔術書を1冊買われていました。
お店を出るとそろそろ魔王城へ戻らなければならない時間帯です。ノア様に尋ねられる魔術師についてはどのように話した方がよいのかわからないため、どうにかお兄様と協力してはぐらかしました。
魔王城に到着すると食堂へと通されます。先に案内されていた様子のジャクソン様は疲れたお顔をされていて、対照的にアウロラ様はとても楽しそうにされていました。
魔王とどんな話をされたのか非常に気になりますが、その気持ちを抑えて私達は食事の席へと付きました。




