ここが魔界です
「しかし、魔界へ行くのも久しぶりだな」
「ええ。お元気にしているでしょうか?お兄様これはそちらへ配置してください」
「わかった。それにしても、魔王が子を産んだのか。...」
「落ち込まないでください。おめでたいことなのですから」
「これは、何をしているのだ?」
「ジャクソン王子殿下、おはようございます」
「こちらは転移陣になりますわ」
「転移陣?」
転移陣の起動には膨大な魔力を必要とするため、現在はあまり利用されていません。また、術式自体も難しく、制約もいろいろとございます。
まず、転移場所をきちんと把握していること。一度訪れたことがある場所が好ましいでしょう。また、転移側に同じような陣を形成していることが望ましいですが、そこは力技でどうにかします。
「アレックス、起動できそうか?」
「ええ。問題ないでしょう。皆様、こちらへどうぞ」
枠内に入ったことを確認し、起動します。時空がゆがむ感覚があまり好きではありませんが、そこは我慢です。
「ついた、のか?ぅぅ、」
「お水を飲んで少し休みましょう。アウロラ様、大丈夫ですか?」
「え、ええ」
「帰りもこのような気分になるのは、辛いな...」
「帰りはマシになると思います。そうだな?アレックス」
「ええ。あちら側に残してきましたから歪みは抑えられているはずですわ」
落ち着いたようですので門を目指します。前衛のお兄様が魔獣を適宜さばいていますので安全に進むことができますね。
「そろそろ着くな。門が見えてきました」
「あれが、魔界の門...。」
「旅の者か?通行証の確認を、」
「ま、魔王様への訪問でしたか、こちらへどうぞ」
通行証と招待状をお見せするとすんなりと通行できます。
門をくぐるとそこは異世界、ということもなく、にぎやかな街の風景が広がっています。その様子に呆気に取られている方が3人。想像とかなり違っていたのでしょう。
「以前よりもかなり栄えていますね」
「帰りにテオに何か買っていくか」
「そうですわね。私も薬草が売られているお店に寄りたいですわ」
「お待たせいたしました。魔王城よりお迎えに参りました」
「ライガー、久しぶりだな」
「デリック様、アレクサンドラ様、お久しぶりでございます。魔王様が首を長くしてお待ちです」
「さあ、皆さま参りましょう」
迎えに用意された馬車はとても乗り心地が良く、ジャクソン様とアウロラ様はとても驚かれています。馬車から見ることのできる街並みも王都と遜色なく、いえ、それ以上に栄えている印象です。
魔王城へ到着すると謁見の間へと通されます。城内は過ごしやすい気温になっており、この場所の技術力や豊かさが感じられます。
「よくぞ参ったな。面を上げよ」
玉座に腰を据えている魔王は威圧感を放っています。
「この度は我々の視察を受け入れていただき誠にありがとうございます」
「それくらい構わぬ。だが、今まで我らに無関心であった王国が何の用だ?」
「それは、」
「我らの力を恐れているのだろう?以前からそうであったように」
魔王は側近に向けて下がるように合図を出しました。その合図に従い側近は下がっていきます。
「手紙には友好関係を結びたいとあったが、アレックス、説明を頼めるか?言いづらいことなのであろう?」
「かしこまりました。実は、こちらにて新たな魔王が誕生したとお聞きし、参りましたわ。お祝いを送らせていただけますと幸いです」
「新たな魔王だと?魔王は我だ。そのような者おらぬ」
え!?そうなのですか?
「我には配偶者がおらぬからな。ふむ、警戒対象が増えたようだ。つまり、王国は新たな魔王が王宮へ攻め入るのではないかと警戒をしていると」
「いや、」
「我々には王国を攻める理由はない。既に満ち足りているからじゃ。それは将来我に配偶者ができ、新たな魔王が誕生したとしてもだ」
「不快な思いをさせたようで申し訳ない」
「なに、今さらじゃ。友好協定を結びたいのであれば受け入れる」
魔王はそう仰ると優しく微笑まれました。
それから場内を案内され、各々の時間を過ごすこととなりました。ジャクソン様とアウロラ様は魔王とお話をされるようで私とお兄様とノア様は街の探索をする運びとなりました。
「周囲に溶け込めるような服を用意して良かったですわね」
「この格好ならば裕福な家の者としか思われないだろうな。ノア様も大きさはでしょうか?」
「問題ない。心遣い、感謝する」
そして、私達は久しぶりの散策に心を躍らせながら街へと繰り出しました。




