勘違い
「アレックス、最近俺のことを避けていないか?」
「...。気のせいではございませんか?」
「何だ、今の間は」
意見交換兼、相談を行っていた時にふとグレイが言いました。ちなみに本日の相談者はアメリア様です。先にアウロラ様のお話をお聞きしたいのに、急になんでしょう。
「あら、アレクサンドラ様とグレイソン様は仲がよろしいと伺っていたのですが、そうなのですか?」
「グレイの気のせいだと思いますわ」
「ノアはどう思う?」
「確かに最近は変えるのが早いとは思っていたが、てっきりお前が何かをやらかしたのかと思っていた」
「何もしていない。なぜ避ける?」
さて、どのような言い訳を致しましょう。さすがに直接的に申し上げるのは気が引けます。お2人が気まずくなってはいけませんし。それに、アウロラ様もいらっしゃります。こういう個人的なことは伏せていた方が良いでしょう。
「乙女の秘密ですわ」
「はあ?この場に乙女は1人しかいない。笑えない冗談だな」
くっ、この一言で大抵のことは隠しおおせるとお母様が教えてくださりました決まり文句ですのに。どうやら私は淑女以前に乙女ですらなかったようです。それなのに、「乙女の秘密」だなんて、なんて悪い冗談なのでしょう。やはり、卒業後に入れる修道院を探すか、もしくは森の奥に居を構えるしかないのでしょうか。
「アレクサンドラ様、大丈夫ですか?」
「アウロラ様、私が修道院もしくは森の奥へ行ってもお手紙のやり取りはしてくださりますか?」
「ど、どうしたのですか?何かお悩みでも?」
「話が飛躍しすぎだ。森の奥って、魔獣の森で人が暮らせるわけないだろう」
何を仰っているのでしょう。暮らしが不便になるだけで暮らせますのに。確か、毒キノコや毒生物、毒植物が多いだけでそれらもきちんと毒抜きや処理をしましたら立派な食料になりますし、食べるものに困ることはなさそうです。
「アレクサンドラ嬢、落ち着くんだ。早まっていはいけない」
「ノア様、魔術の研究引き続き行うつもりですので安心してください」
「グレイソン様はひとまずアレクサンドラ様に謝罪なさってはいかがですか?女性に対してあまりにひどい扱いです」
「女性?女の皮をかぶったへんじ、」
「グレイ、お前のその言葉がアレクサンドラ嬢を傷つけ、おかしな言動をさせているのだぞ?」
「いや、しばらくしたら落ち着くはずだ。普段は、」
「普段からそのようなお言葉をぶつけられているのですか?」
「アレックスも気にした様子は、」
「なんて健気な方なの。アレクサンドラ様、私が貴女をお守りいたしますわ」
えっと、この状況はどういうことなのでしょう?
「アレクサンドラ嬢、ノア殿、相談があるのだが、どういう状況だ?」
「ジャクソン様、ごきげんよう」
「ジャック、助けてくれ」
「グレイソン様、お話は終わっていませんわ」
「アレクサンドラ嬢、少し休憩にした方が良いだろうな」
「状況を説明せよ!」
ジャクソン様の一言により、とりあえずの落ち着きは取り戻せました。
一通りの状況を説明したところ、とても呆れた表情をされています。
「グレイ、女性に対する言葉にしては強いと思う。いくら気心が知れているとしてもだ」
「アレックスのメンタルはダイヤモンドでできているから問題ないと思うが、」
「問題があるからアウロラが怒りを露わにしているのだろう。本人が気にしていないとしても今後は気を付けるように」
「わかった」
「それで、アレクサンドラ嬢は何故急に修道院や魔獣の森の話を?」
「淑女を目指してきたのですが、乙女にすらなれていなかったなんて、家名に泥を塗る前に対処を考えねばと、」
「気にしているではないか...できればコリン家は敵に回したくないのだが」
「いつもの癖だ、気にするな」
「そういうところだ。全く、グレイを避けていた理由を教えてはくれないか?そうでないと解決しそうにない」
本当に話してしまっても良いのでしょうか?とりあえずはぼかしながらお話ししましょう。
「ここでノア様と意見交換を頻繁に行っていることはご存知だと思うのですが、その時にグレイがノア様に意見をお求めになったり用があると仰ることが多く、友人同士の時間をお邪魔していたのではないかと思いまして、」
「つまり、気遣いであったと?」
「ええ、その通りでございます」
「もしかして、アレクサンドラ様もあの噂を気にしていらしたのかしら?」
「噂だと?どのようなものだ?」
アウロラ様が少しだけ目を反らしながらお話されます。
「実は、一部でグレイソン様とノア様が恋仲であるのではないかと、お噂がありまして、」
「「は!?」」
「なぜそのような噂が?」
「その、見目の麗しい方々が婚約の噂もなく、常に行動を共にしていますから。それに、最近はそのようなジャンルの本も女子生徒の間で流行していまして、アレクサンドラ様は一部の方々の間でお2人の関係を邪魔しているのではないかと批判の声が上がっていますの」
「そんなことがあったのか」
それは私も初耳です。もっと周囲に気を配るべきでした
「もちろん、アレクサンドラ様に落ち度はございません。本当に一部の生徒だけなのです」
「俺とノアはそのような関係ではない。アレックスもわかったな?」
「え、ええ」
アウロラ様が学園内で出回っている冊子をお持ちのようでしたので見させていただきました。この挿絵は確かに、
「お2人にそっくりですわね...。お話をされている場所はここにそっくりですわね。...。私はお2人の仲をお邪魔する悪役として描かれていますわね」
これは、距離を置いた方がよろしいのでしょうか?状況を放置していましたらいつか刺されるような気がします。そうなると、御守りが発動して実行した方が被害に、
「グレイソン様とアレクサンドラ様が婚約するのではとの噂は立ち消えていますから余計に広まりが早かったようです」
「ああ、アレクサンドラ嬢がグレイは好みでは無いと話していたとの噂が少し前にあったからな」
「アレックス、そんなことを言ったのか?」
「グレイだって昔に話されていたではありませんか。私と結婚するくらいであれば独身を貫くか見目の麗しい殿方と縁づいた方がマシだと」
「いつの話だ?」
グレイは頭を抱えてしまいました。アメリア様のグレイに対する評価が下がっているような気がします。
「とりあえず、噂が立ち消えるように尽力するが、これからは誤解を招くようなことは、しているつもりはないんだよな...」
「アレクサンドラ様が以前使われていたような方法も有効だと思いますのでそちらを検討してみるのも良いかもしれませんわ」
とりあえず、対策はいくつか練られ、順次行動していくこととなりました。下校時刻となったため、アウロラ様とジャクソン様のご相談は明日へ持ち越しとなりました。




