文化祭(研究発表)
「もう、アレックスったら、そろそろ準備しないといけないのよ?」
「何を読んでって、骨董屋のおじいさんに貰った本?」
「最近はクラスのもの以外にも研究していたようだけど大丈夫なの?」
顔を上げると心配そうな表情の3人が見えます。今日は文化祭の日。展示や発表の準備は終えたので空き時間に鉾庭について考えていたのですが、それなりに時間が経っていたようです。
「すみません、ぼんやりとしていたようですわ」
「最近多いわね、大丈夫?」
「ええ。考え込んでしまうとそうなってしまうようです。気を付けなければなりませんわね」
「午前の研究発表が終わったら午後は自由時間だし、とりあえず午前を乗り切りましょう」
「アメリアが珍しく緊張しているわ」
「発表が終わりましたらカフェテリアの限定メニューを購入しましょうね」
「そうね、頑張りましょう、アレックス」
アメリアがやる気を取り出したようで何よりです。今回発表を担当するのは私とアメリア。理由としましては、アメリアは声がよく通るので聞き取りやすいことと、私ならどのような質問に対しても対応できるからということでした。
「皆様ごきげんよう、これから2年黄色燕クラスの研究発表を始めさせていただきます。担当致しますのは私、アレクサンドラ・コリンと」
「アメリア・ターナーが務めさせていただきます。短い時間ですが、どうぞよろしくお願いいたします」
今回制作したものを中央の台に置き、説明を始めていきます。
まずは、魔術具を制作しようと考えた経緯についてお話を始めます。説明をするうちにアメリアの緊張は解れていったようです。私は会場を見渡して、質問をお持ちになっていそうな人を探します。どのような質問がされるのか、私に応えられるかが不安ですが、乗り切ってみせますわ。
「説明は以上になりますが、質問がおありの方はいらっしゃりますでしょうか?では、そちらの赤いネクタイの方、お願いいたします」
「君たちの研究物は昨年の録音機器の真似事ではないか?」
この質問はある程度の予想がありましたが、高圧的に言われてしまうと不安になる方もいらしゃったことでしょう。
「質問にお答えいたしますわ。こちらのものは以前発表されました内容の真似事ではございません。先ほどの説明にもあったようにこちらは土属性を中心に水と風をバランスよく魔方陣を組んでおります、録音の魔術具は水属性と風属性により構成されたものでありましたそれ故に真似事と論じられるのは間違いだと存じますわ」
悔しそうな顔をされて赤いネクタイの方は着席されました。次は、前から2番目の席に座たらている方です」
「その魔術具は需要があるのですか?あまり日常的に使えないと思いますが」
「確かに、こちらは音楽を再生するもので音質にこだわり制作したものになります。ピアノの伴奏を再生しましたら楽器や歌の練習に役立てることができますし、ワルツなどの音楽がありましたらダンスの練習をすることも可能になります。お食事の時やリラックスしたい時などふとした時に音楽を聴きたいときにとても便利になると思います」
「ですから、需要はありませんよね?」
「販売する予定は現在の所特にございませんが、社交界でのダンスのための練習などに利用できることから潜在的な需要はそれなりのあると考えますわ」
質問した方は首をかしげておられます。お召しになられている衣服から察するに、伯爵家の、それも裕福な家の方なのでしょう。恐らく、ダンスの講師を雇い、ダンスのお稽古のために楽団を容易にお呼びできる方だと察せられます。
以前、アメリアにお聞きしたのですが、音楽がないとダンス練習は難しいと仰っていました。このことから考えると、下位貴族の方々には相当な需要があるでしょう。
そこから魔方陣に関する質問がいくつかございましたが問題なくお答えすることができました。制限時間となり、私達の発表は終わりました。
「さあ、アメリア。カフェテリアの限定メニューを購入しに行きましょう」
「ええ、アレックス、行きましょう」
私達は晴れやかな気分で午後を過ごすためにカフェテリアへと向かいました。




