成長したいのです
「アレクサンドラ嬢、今日はいつになく真剣に本を読んでいるな」
「どうせろくなことではないだろう」
「グレイ、聞こえていますわよ」
私は顔を上げてグレイを睨みつけました。
「学園の妖精とは思えない睨みだな」
「何をそんな真剣に読んでいるんだ?...。身体強化?」
「こちらを参考にできないかと検討していたのですが、難しいですね」
「何をそんなに悩んでいるんだ?まさか病気か?」
「違います、そんことよりも切実なのです」
「それは、いったいどんな、」
私は本をテーブルにおいてこれまでのことをお話ししました。
現状の体ではどうにも不都合なことが多いです。使用するものの大きさの調整が必須ですし、何より、年齢を間違われてしまいます。
「確かに、身体強化を行えば重たいものを持つことも容易くなるであろうが、」
「ノア、恐らくそこではない」
「どういうことだ?」
「アレックスは自身の体が小さいことを気にしているんだ」
「それと身体強化に何の関係性があるんだ?」
「身体強化のやり方を参考に身長を伸ばす方法でも考えていたんだろう」
「まさか、アレクサンドラ嬢が無謀なことを考えるわけ、」
「...。」
「本当なのか?」
「ろくなことではないだろう?」
「グレイには、私の気持ちはわかりませんわ」
「経緯を落ち着いて話してみてはくれないか?」
「実は、昨日の放課後、アメリア達とカフェテリアでお茶をしている際に、1年生に間違えられたのです」
「いつものことではないか」
「グレイ、それで?」
「グレイの言う通り、いつものことでしたので、いつもの通りに対応しましたの。リボンの色が違いますからあちら側もすぐに気づかれたようで謝罪とともにお引き取りいただきました。しかし、言われてしまったのです」
「何を、?」
「あんな小さい人が2年生だなんて思わなかった、貴族なのに威厳がないというか、弱そうで何でも言うことを聞いてくれそうだと」
「そ、それは、」
「挙句の果てにアメリアとリリーを侮るようなことを言いましたのよ?久しぶりに明確なさつ、怒りを覚えましたわ」
「お前、仕返しはしていないよな?」
「相手は仮にも1年生ですしそのような真似は致しませんわ。ただ、私が侮られやすい故にお友達まで侮られるなんて、あまりにも自分が情けなくて、」
思い出すだけで怒りと情けな気持ちが湧いてきます。
「しかし、身体強化はあまり常用するものではないことはわかっているだろう?維持をすることが難しいし、何より体を壊してしまうかもしれない」
「ですが、私は長年悩まされてきましたわ」
体躯に合う道具を仕立てることをはじめ、ドレスや制服の採寸も大変なのです。接近戦も力負けしてしまいますし、何より、大きな獲物を狩った際にも、
「まあ、一般的には体が大きい方が魔力の蓄積にも役に立つから魔法や魔術を扱いやすくなるとされているからな」
「それに根拠はないが、アレクサンドラ嬢、君が体を酷使してしまし、体を壊してしまったら友人たちが悲しむかもしれないんだぞ?」
「それは、いけませんわ、いくら慣れているとはいえ、今後は控えることに致しましょう」
「その言い方では常用しているように聞こえるが、」
「学園にいる時だけですわ。ノア様もお使いになっているのでしょう?」
目を泳がせています。冗談だったのでしたが使われていたようですね。そんな私達の様子をグレイが引いた目で見ています。失礼ですね。
「それが成長しない原因を、いや、昔から小さかったか」
「自然に成長するのを待った方がよいのではないか?見た目で侮るような者など器がその程度の小心者だということだ。相手にする必要はない」
「それに、カフェテリアで目撃者もいたんだろう?むしろ、そいつらのことが心配になって食たな」
「どういうことですか?」
「お前や、リリー嬢アメリア嬢は女子生徒からの人気が高いからな。侮ったやつらはお前たちに好意的な女子から遠目に見られるんだろうな、と」
仰る意味はよく理解できませんが、私自身が手を下すまでもない相手だと思っていたところです。何もしなくても良いなら放っておきましょう。
「とにかく、成長に関しては焦らなくても良いのではないか?まだ2年生だ。成長期は始まったばかりのはずだ、多分」
「自身がなさそうだぞ、ノア。まあ、背が低くても、お前ならば問題ないだろう。それこそ、お前のその小柄な体躯や幼い顔立ちを好むやつも、」
「それは俗にいう危ないやつではないか?」
「私、幼女愛好家や異常性癖をお持ちの方とは親しくなりたくないのですが、」
やはり、成長剤や魔術を研究した方が良いのでしょうか。
「今はそのままでも良いと思うぞ。今持っている魅力を崩す必要はない。焦らずにゆっくり成長していけばいいんだ」
「そうですね、体に負担を掛けないような方法を検討いたします。ついでに御守りの数も増やしますわ」
アメリアにもお渡しした方が良さそうですし。
本を片付け始めるとお2人は安堵したように息を吐きました。そろそろ帰らなければならない時間です。次の約束をして私達はそれぞれ帰宅しました。




