光る魔術具
「ふむ、アレクサンドラ嬢の意見は面白いな」
「ノア様のご意見も興味深いものがありますわ」
あれから私達は意見交換をする機会が増えました。
グレイもたびたび参加していますが、よく首をかしげています。
「御守りも自作していると聞いたのだが、」
「ええ、自分の身くらい守れるようにならねばなりませんから。それに、お兄様はよく遠征に行かれますから少しでも力になれればと思いまして」
脅威がいつ襲ってきてもおかしくありません。そのために備えることは大切なことです。ノア様も納得したように頷いています。
彼も年の離れたご兄弟がおられるようです。お勉強もお兄様に見てもらい、その中でも魔術に興味がわき、古代文字の勉強を始めたとのことです。
「アレクサンドラ嬢も兄君に勉強を教えた貰ったのか?」
「ええ、基礎的なものはすべてお兄様が教えてくださりましたわ。お兄様は古代文字がお得意ではなかったようですが、私にお教えくださるために必死にお勉強なさったとお母様にお聞きしました」
「よい兄君なのだな」
「そうですね。次は私が弟にお教えする立場なのですが、それが思いのほか難しく、私が理解できるように教えてくださったお兄様は本当にすごいですわ」
「あれで理解できるのはお前くらいだろ」
隣で聞いていたグレイが何かを仰っていますが気にしません。
「アレックスったら、ここにいたのね」
「アメリア、どうかなさましたか?」
「この魔術具のことで聞きたいことがあって、」
アメリアが差し出したのは最近売り出されたものです。ボタンを押すと持続的に周囲を明るく照らすことができるそうで、火が無くても安全に明るく過ごすことができると話題のものでした。
しかし、大量生産品であるがゆえに不具合を起こすことがあるとも耳にしたことがございます。
「実は、気になっていたのです、どうしたのですか?」
「一瞬だけ光ったと思ったら暗くなって、何だか熱を持っているようなの」
触れると確かに熱いです。冷却する必要があるのでしょうね。
アメリアにも席を勧めて改めて魔術具を観察します。
「ほお、面白い構造だな」
「内側に魔石がはめられています。この中に魔力を注いで光らせるのでしょう。しかし、おかしいですね」
「そうだな」
「そうなのか?」
アメリアとグレイは首をかしげています。
「授業で習った通りの属性の基礎的なものが刻まれているように見えるが、」
「いや、崩れている。恐らく、魔石にスタンプのように押して跡を付けているのだろう」
「魔石に若干のヒビも入っていますし、中心がおかしいですね」
「細かいな」
何を言っているのでしょう?これは大きなミスです。それに、魔法陣自体も火属性の大きさの割に水属性が少なすぎます。土を入れていないことから見ても、正確なものが求められるというのにあまりにも、ざ、いえ、大雑把に見えます。
「発想自体は良いのだがな。これでは後々問題が起こりそうだな」
「特許申請がされていますし、どのように対応されるのでしょうか」
「それは、俺たちでなく国や商会が考えることであるな」
「アレックス、それじゃあ、これは使用しない方がいいのかしら?」
「そうですね。アメリアがケガをされてはいけませんし」
「そう、なのね」
「魔石の質も良くありませんし、発想は素晴らしいのですが、残念ですね」
アメリアが落ち込んでしまいました。どうにか元気づける方法はないでしょうか。
「では、アレクサンドラ嬢なら光を発するものを作る時どのような魔方陣を用いる?」
「私、ですか?そうですね」
まずは安全に配慮することが第一でしょう。その上で光らせるとなると、
「私でしたら、中心に水属性を置きます。そして、その周囲に火属性を広げ、土属性で囲むのではないでしょうか」
「これとは真逆の考えだな」
「ええ、安全に扱うための措置ですわ」
「それで本当に光るのか?」
「ならば、試してみたらいい。余った魔紙がある」
魔紙を受け取り、魔法陣を描きます。簡略化しましたが、問題はないでしょう。
ゆっくりと魔力を注ぎます。
「わあ、本当に光ったわ。さすがアレックスね」
「アメリア、褒めすぎですわ」
「いや、大したものだな。これならば特許にかからないだろう。別物の魔法陣なのだから」
「そうですね。でしたらアメリア、こちらを貰っていただけないでしょうか?」
「いいの?アレックス」
「ええ。うちではすでに別物がありますから、貰ってくださらない?」
「ありがとう。決して誰にも見られないように使うわ」
アメリアは今、刺繍を頑張ってらっしゃると仰っていましたし、そのためでしょう。夜に作業をするには明かりが必要ですから。
さて、私も自室の照明魔術具のメンテナンスをしなければなりませんわ。意見交換をすることでよいアイデアが得られるようになりましたし、最近は良いことばかりだと思いました。




