結果発表
合奏部門も無事終わり、残すところは審査発表のみとなりました。
会場内は緊張感が漂っております。
「ここまできたら入賞してみたいわ...」
「リリーったら緊張しすぎよ」
「アメリアとアレックスが落ち着きすぎているのよ。発表は楽しめたけれど、やっぱり緊張するわ」
「緊張しても結果は変わらないんだから。ね?アレックス」
「そうですね。今からできることも特にございませんし、私達はよい発表をしたのですから粛々と結果を待つだけですわ」
「ほら、アレックスだってこう言ってるんだし」
「アメリアったら、音楽祭が終わった後の楽しみのことをお考えなのでしょう?」
「ふふ、わかっちゃったかしら?すべてを成し遂げた後のスイーツは格別だもの」
「もう、呑気ですわね」
「カミラも緊張しているのですか?」
「ええ。多少は。この場にいるほとんどの方は緊張されているのよ?」
「では、お手を握りましょう?そうすれば多少解れるはずですわ」
「アレックス、私は抱擁がいいわ」
「アメリアは緊張していないではありませんか」
「なんだか、緊張してきたような気がするわ」
アメリアが少しおどけたように仰ると、周囲の方の肩の力が抜けたように感じられます。やはり、アメリアは周囲の空気を良い方向へ変化させることがお得意のようです。
「さあ、そろそろ始まる時間ですし、落ち着いて結果を見守りましょう」
そう微笑みかけながら言うと、落ち着いたようにステージを見つめ始めました。
「それでは、結果発表ならびに表彰式を行います」
凛としたアナウンスが響き渡ります。
「まずは、独唱部門、銅賞、ジョージ・アトランタ様、銀賞、ヘレン。ライナー様、」
淡々と名前が呼ばれ、そのたびに歓声と拍手が巻き起こります。いよいよ金賞ですね。
「金賞、アレクサンドラ・コリン様、以上3名は舞台へお上がりください。続いて、重唱部門、」
重唱部門でのリリー達は銅賞、独奏部門でアメリアは金賞、重奏部門は惜しくも入賞を果たせませんでした。
「つづいて、合唱部門の発表に移ります」
舞台上からもわかると通り、皆の顔つきが変わります。あれだけ練習を積んだのですから入賞はしたいところですわ。そうは思いつつも、合唱部門で我がクラスの名前が呼ばれることはなく、合奏部門においては銅賞を得ることができました。
「最後に、特別賞を発表いたします、特別賞は2年黄色、燕クラス。代表者は前へ」
会場内が一気にざわつきます。特別賞は年によってはないこともある賞です。ここ数年はなかったそうで、音楽祭の概要にも記されていません。主にこれからの成長を楽しみにしている個人やクラスに贈られたり、評価をすることの難しい場合に贈られることがあるそうです。
ともかく、待機席は歓喜に満ち溢れているようです。
「表彰状。独唱部門金賞、アレクサンドラ・コリン様、貴女は独唱部門において素晴らしい歌声を披露し、多くの者に感動を届けました。その栄誉を称え表彰いたします。おめでとうございます
「ありがとうございます」
表彰状とメダルをいただきます。
審査委員長と会場にお辞儀をして舞台を降りました。なんだか、物凄く注目されています。他の部門の表彰も始まりましたのでそちらに注目を向けていただきたいところです。
「表彰状、特別賞。2年、黄色燕クラス。貴方たちのクラスはこの音楽祭において素晴らしい歌声を披露されました。今後の成長を期待し、今回は特別賞を贈らせていただきます。おめでとうございます」
会場内からは大きな拍手が送られました。待機席では涙ぐんでいる方も見られます。
「それでは、総評に移らせていただきます」
総評としては、昨年とさほど変わらず、それぞれの部門の良かった点などが述べられます。その間、今回の結果について喜びの声や悔しさをかみしめているような小さな声が聞こえます。
「以上を持ちまして、音楽祭は終了とさせていただきます。会場を起こしの皆様はお忘れ物のないよう、お気をつけてお帰りくださいませ。学生の皆様は担任の指示に従い、教室へお戻りください」
教室に着きますと、先生は今回の結果のねぎらいと合唱部門と合奏部門の審査員からのコメントをお伝えくださいました。
合唱部門の特別賞の理由は、歌詞の解釈が従来考えられているものとの相違についてでした。従来の解釈とは、まず、旅人の目線に立ち歌詞を理解し表現すること、もしくは時の女神を称える歌としての解釈があります。
私達は狼の目線に立って考えるという新たな手法に取り組み、そのことにより評価が分かれたとのことでした。一部の先生からは良い顔をされなかったものの、また一部の先生からは高い評価をいただき、賞を与えるべきかどうか論争になったそうです。
結果として、新たな解釈の仕方を評価するということで特別所を賜ることとなったようです。
「先生としましては、とても良い結果だと思います。皆で協力し合い、このような結果をいただき、さらには新たな道を示された皆様も誇りに思います」
先生が涙ぐみながら話され、教室内は感動に包み込まれました。
それから、1人1人の感想を述べ、私達の音楽祭は幕を下ろしました。




