選抜
本日の音楽の授業ではテストが行われます。このテストの結果により、音楽祭でソロを歌う方が決定されます。教室内は緊張に包まれており、皆、真剣に譜面と向き合っています。
「緊張しちゃうわ」
「リリー、まずは深呼吸ですわ。落ち着いて発生の練習をしましょう。歌を歌えば緊張はほぐれるはずです」
「あ、アレックスは緊張しないの}
「胸がいつもよりも高鳴っていますわ。緊張するのは皆同じですもの。ならば、この緊張を楽しまなければ損でしてよ?」
「前向きね。私も見習わなくちゃ」
そうですわ。この緊張感は、ドラゴンと向き合ったときもまだ気楽です。お兄様と山へ出かけた際に3体のドラゴンに囲まれたときはさすがに心臓が飛び出そうなほど緊張しましたが、どうにか対処できましたわ。腕1本の骨折で済んだのは安いものです。
リールに泣きながら心配されましたが。それでもその時の緊張感に比べましたらまだまだです。あの時もどうにか状況を楽しむことができましたし、きっと私なら大丈夫でしょう、十分楽しめますわ。
「お次はアレクサンドラ・コリン様、準備はよろしいでしょうか?」
「はい。リリー、行ってきますわ」
「アレックス、頑張って」
私は防音魔術が施された場所へと移動しました。試験的に制作した音楽を流す魔術具を使用して伴奏の代わりとします。
「課題曲は『春の風』です。準備はよろしいでしょうか?」
「はい、問題ありません」
先生が音楽を流し始めました。それに合わせて私は歌い始めます。
この曲は、春の喜びの歌です。雪が解け、芽を出し始めた植物たち、長い冬を耐え忍んだ動物たちが活動し始める喜び。すべての自然の目覚めへの感謝を表現した曲です。
元は春を象徴する神たちに捧げられた歌をアレンジしたものであり、春の代表曲として式典やお祭りなどでも歌われることのある人気の高い曲です。
流れるようなピアノの旋律は清らかな川の流れを表現しているとも言われ、爽やかで瑞々しくも生命力に溢れたものでそれらを表現することが楽しいです。
「そこまでです」
「あ、ありがとうございました」
先生の合図により、私のテストは終わりました。
それから続々とテストは進んでいきます。終わった方は晴れやかな顔をしていて、実力を出し切った方が多いように感じられます。
「お次は、リリー・ミッチェル様です」
「は、はい」
「リリー、リラックスですよ」
「ええ、行ってくるわ、アレックス」
ぎこちなく笑ってしまいましたが大丈夫でしょうか。いえ、リリーなら大丈夫でしょう。
しばらくして、リリーは戻ってきました。少しだけ不安そうな顔をしています。
「リリー大丈夫ですか?」
「え、ええ。でも、きちんとできたのかが不安で」
「きっと大丈夫ですよ。後は結果を待つだけですもの」
「そ、そうよね」
別教室でテストを行っていた器楽の方々も集まってきます。カミラもリリーと同様に不安そうな顔をなさっています。
「2人とも、暗い顔をし過ぎよ」
「アメリア、でも、」
「もう、2人とも一生懸命練習してきたじゃない。だから暗い顔しないの」
「アメリアのいうとおりですよ。ほら、先生方が来ましたわ」
視線が一気に先生方へ向きます。手には結果が記されているであろう紙が握られています。
先ほどの緊張感が戻ってきたように空気が張り詰めます。
「それでは、発表いたします。独唱から、アレクサンドラ・コリン様、ミランダ・キャロル様、マルクス・スミス様。以上です」
「次に、独奏。アメリア・ターナー様、シャーロット・ムーア様、レイラ・クラーク様、以上3名です」
教室内は歓声と涙で埋め尽くされました。
「アレックス、アメリア、おめでとう、私たちの分まで頑張ってね」
「とても悔しいですわ、」
様々な感想に溢れる中、先生の精子の声が響き渡りました。
「今回は例年に比べ、とてもレベルが高かったため、重唱、重奏の選抜も行うこととなりました。まずは重唱から発表します。グループ1、...。...グループ3.。...。リリー・ミッチェル様」
リリーが目を見開きます。そして、瞳が潤み涙がこぼれてしまいました。
続く重奏でもカミラの名前が呼ばれ、同様に涙を流しております。お2人にハンカチを渡し、背中をさすりつつ先生のお話に耳を傾けます。
合唱練習に加え、さらに練習が増え大変だと思いますが、選ばれた以上は責任を果たさなければなりません。私たちは決意を新たに楽譜に目を通しました。
泣いていたお2人も顔を上げ、決意に満ちた表情をしています。
先生のお話に大きな返事をして、その日の音楽の授業は幕を閉じました。




