褒美
行事が終わり、私は平穏の学園生活を送れる、はずもなく、今日は王宮へ呼び出されていました。
「顔を上げよ、アレクサンドラ嬢」
この場には何度来てもなれません。緊張感が漂っています。
「貴様、どの面を下げてこの場に来た?」
「私が招集したのだ。ジェイコブ、少しは静かに出来んのか?」
「父上、しかしあの女は恐ろしい悪女ですよ?行事中に許可もなく戦闘魔術を使い、自らのクラスメイトを危険に晒す恐ろしい女です」
「と、言っているがどうなんだ?」
「お部屋へ移動中に目の前に魔獣が現れましたので対処致しました。最初は防御壁を展開し、守りに徹し先生方の救援を待ちましたが、防音の魔術具に阻まれ、多くのクラスメイトが精神的にお辛い思いをされていましたのでやむを得ず攻撃に移りました」
「それは真のことであるな?」
「私がお話していることは事実にございます。疑わしい点がありましたらどのような問いにもお答え致しますわ」
「ふむ、わかった。其方のクラスで起こった一連の騒動についてはジャクソンからも報告を受けておる。危機的な状況によく対処できたな」
「お褒めに預かり光栄でございます」
最初から知っていたようですね。では、なぜ私はこの場に呼び出されたのでしょう?
「クラス活動の時に魔術の講義も行ったそうだな?」
「講義、という程のものではございませんが、自らの身を守るために理解を深めたいとのことで私の持ち得ている知識をお教えいたしました」
「ほう、未だ解明されていない光と闇の魔法についても説明したそうだが?」
「貴様、まさか兄上に出鱈目をお教えしたのか!?不敬であるぞ!」
「第1王子殿下におかれましては、私の考えを聞かせて欲しいと望まれましたので私の考えた仮説をご説明致しました。あくまで仮説でございます」
「ああ、聞いたよ。実に素晴らし仮説であった」
報告すべきことはされているようですね。安心いたしましたわ。
先程からお父様が隣で青筋を浮かべながら震えていらっしゃりますが、気にしないことにいたしましょう。
「其方の行動は勇敢であり、素晴らしいものである。よって、褒美を与えたいのだが、何を望む?」
「勿体ないお言葉でございます」
「遠慮することは無い。過去にも多くの実績を残しておる。王族になりたいと願うのであればそのように整えても構わぬと思っている」
「陛下、我が娘を王妃にお望みですか?」
「そうなれば都合が良いことが多そうだな」
「この子は道具にして良い存在ではありません」
「そのようには思っていないが、相変わらず子煩悩であるな」
何やら、国王陛下とお父様がバチバチしてしまいました。第2王子殿下もこちらを睨まれていますし、困りましたね。
「国王陛下、それでは私に王宮図書館への入館許可を頂けないでしょうか?」
「そのようなもので良いのか?学者でさえ滅多に立ち入ろうとはせぬ場所であるぞ?」
「ええ。王宮図書館には多くの古代文字の資料があると伺いました。それらに目を通してみたく存じます」
本音を申しますと、訓練場の使用許可も頂きたかったですが、反対されるでしょうし、最低ラインはこの程度で良いでしょう。
「良いだろう。王宮図書館への入館を許可する」
「ありがとうございます」
「其方は本当に謙虚であるな。その姿勢、気に入った」
「養子入りは認めませんよ?」
「それはアレクサンドラ嬢次第ではないか?のう?」
「圧力をかけないでいただきたい」
また、始まってしまいました。
「どうだ?真剣に考えてはくれないか?」
「それは、王命でしょうか?」
「違うな。其方の意思を尊重しよう」
「それでは、申し訳ございませんが、お断りさせて頂きたく存じます」
「な、父上の提案を断るのか!?不敬であるぞ!」
「ふむ、条件は悪くないと思うが、理由を聞いても?」
「私は、私の家族がとても大切でかけがえのないものだと思っているからですわ。私のような変わり者を嫌な顔をせずに受け入れ、愛してくれますもの」
第2王子殿下をちらりと見て言います。
「私は自らを受け入れてくださる場所にいたいですわ」
「其方の言い分はわかった。今回は諦めることとしよう」
次回以降は諦めるつもりは無いということですね。
「許可証はすぐにでも発行しよう」
お父様とはまだお話があるそうで私はお先に下がらせて頂くことになりました。
待つ間、王宮図書館への入館許可も頂きましたのでそちらで待たせていただきます。
「あら、これは読みましたし、こちらも」
蔵書数は我が家のものとさして変わらないようですね。貴重な本があると伺いましたのに残念です。
というよりもきちんと管理されていないのでしょうか。仕方がありませんし、少し短い本でも読みましょう。
「『妖精物語』ですね。現代語訳版は読んだことがありませんでしたわ。こちらを読んでみましょう」




