魔法と魔術
お茶をいただいた後、私は魔法と魔術の解説を行うこととなりました。
あの時私が使用していた防御壁と水のドームを見て少しだけ戦闘魔術に興味を持たれた方が多かったそうです。女子生徒も自らの身を守るためにある程度学びたいとのことでした。
「というわけで、四大魔法については魔法基礎の授業で理解されていると思います。それぞれに特性と相性があり有効的に使用することで様々な効果が得られます」
「質問なのですが、魔法と魔術の違いとは何でしょうか?」
「今から説明いたしますわ」
魔法は性質を操る行為のことです。そして魔術は魔法を応用し行動を起こすという方がわかりやすいのでしょうか。大きな違いと言えば、魔法は属性単体で使用するのに対し、魔術は工夫次第で複数の属性を使用することができる点です。
「私が魔獣に対し使用したものも魔術の1つです。あの魔術は土のドームに水を溜め込むという作業を行いました。ゆえに、土と水の複合魔術だと言えます」
「土属性を使う必要があったのだろうか?」
「鋭い視点ですね。水はその場にとどまれせることが難しいものです。また、もしも取り逃がしてしまった場合新たな被害が出るでしょう。故に先に土のドームに閉じ込めまして。あのドームは防御壁を応用したもので、私の魔力量を上回らない限り、出てくることは不可能です。そこに弱点である水魔法を注ぎ込むことにより、倒すことができました」
「つまり、術の完成度を上げるためだと、」
「その通りですわ」
あの魔獣は騎士見習いが2人でどうにか倒せるレベルのものでしたでしょうし念には念をと思って複合魔法術にしました。それに、もしも魔獣が飛び散ってしまわれたら卒倒する方もいらっしゃったことでしょうし。
「では質問だ」
「はい、なんでございま、ジャクソン様、どうしてこちらに?」
「何やら面白そうなことをしていると聞いてな。質問をしてようだろうか?アレクサンドラ様」
「私にお答えできることでしたら」
「では、光魔法や闇魔法についてどう思う?」
「それは、まだ解明されていないことで、」
「君の意見が聞きたい」
ああ、私を試されているのね。以前の話を聞きたかったということでしょうか。先生も助けてください。
「これは、私の個人的な意見になりますが、よろしいでしょうか?」
「ああ、構わない」
光属性、闇属性は四大属性には含まれていません。そもそもが存在しないものですから。
では、なぜ多くの文献や伝説に光魔術、闇魔術が存在しているのか。それはつまり、属性同士の関連性にあると考えられます。
「私の考えでは、四大属性の均衡が高純度で保たれ、なおかつとある条件を加えることで光魔術、闇魔術を扱うことが可能だと考えます」
「とある条件とはなんだ?」
「空気です」
「空気?」
「古代の文献において、5つ目の属性に空気を入れているものがございました。後々除外されるわけですが、重要な要素だと考えられます」
空気の魔法はありません。しかし、他の属性と組み合わされた魔術は使われてはいないもののいくつも存在しています。すなわち、属性同士の結びつきになんらかの影響をもたらすことができる可能性があるということです。
「では、光と闇の違いは何だと考える?君の話では2つに大差ないように感じられるが」
「仰る通り、光と闇にそれほど大きな違いはございません。光の攻撃もあれば闇の回復もございます。2つの性質も分かつもの、それはすなわち、力の方向性だと考えます」
「面白い考え方だな」
実験と実践の賜物ですからそうかもしれません。
「あ、あの、アレクサンドラ様、お話があまりにも高度で、」
魔術の詳しい構造などを習うのはまだまだ先ですのに、急ぎ過ぎましたわ。
「え、えっと、つまり、性質の違うもの同士を組み合わせることで新たな発見や活用法を模索することができるのが魔術です。まるで音楽のようだとは思いませんか?」
「音楽ですか?」
「ええ。様々な音階、楽器、そして音や人を用いて新たな音色を作ることができます。音楽と魔術は似た性質を持っているのかもしれません。基礎を軸に考えるのも良いかもしれませんし、直感を信じ新たなものを創造してみるのも楽しいかもしれませんね」
私の言葉に納得したようにうなずいてくださる方がいてよかったです。ジャクソン様は首をかしげていらっしゃいますが。
「ふむ、やはり君の考えは独特だな」
「お褒めにあずかり光栄ですわ」
「では、僕は戻るとしよう。邪魔したな。そうだ、君たちに贈るものはいくつか用意が整ったそうだ。後ほど連絡をよこすので取りに来てくれないか?」
「かしこまりました」
教室内の緊張感が一気に和らいでいきます。どうにか無事終えることができましたが、あれでよかったのでしょうか?いえ、クラスの方々は不明な点がありましたら聞いてくださるはずです。
片付けをしながら耳を澄ますと復習をなさっている声がいくつか聞こえますし、恐らく問題ないでしょう。




