受け入れてくれる場所
きっと、大丈夫なはずです。
そうは思いつつも私は入室できずにいます。ドアノブに手を掛けようとしては引っ込める、そのような動作を幾度となく繰り返しています。
「アレックス、そんなところで何してるの?」
「あ、アメリア、その、」
「ほら、中に入るよ。急にいなくなって心配していたんだから」
アメリアは私が開けるのを躊躇していた扉を簡単に開いて私の手を引き、中へ入りました。多くの視線を感じて思わず目を伏せます。
ここへ来て何度淑女らしくない行動を取ってしまったでしょう。そのことを考えるだけで足取りが重くなってしまいます。かつて、罪を重ね処罰されていった罪人たちはこのような気持ちだったのでしょうか。
心身が鉛のように重く、時間がとてもゆっくりに感じられます。
「アレックス、無事だったのね」
「り、リリー」
「皆、心配していましたのよ。特に、貴女の嫌な噂が流れてからは特に、どんなに探しても見つかりませんでしたし」
「申し訳ございません」
「もう、カミラ、心配だったのはわかるけどもう少し優しくね」
「あ、ごめんなさい、でも、良かったわ、戻ってきてくださって」
リリーとカミラは優しく抱擁してくださりました。
とても暖かくて、凍りかけていた心が解かされていくようです。
「お怪我はありませんか?アレクサンドラ様」
「こちら、どうぞお飲みになってください。心が安らぐお茶です。ど、毒見はしました」
「美味しいお菓子もありますわよ」
「あ、あの、」
どうしてここまでもてなしてくださるのでしょう。真意が読めません。
「もう、アレックスが困ってるわよ。あ、そのお菓子クリームとフィリングの配分が完璧で美味しかったものですよね?」
「さすが、アメリア様だわ。周りの物よりは素朴だったけど味は一級品でしたよね」
「このお茶も柔らかで甘い香りが心を落ち着けてくださいますわね」
「カミラ様にそう言っていただけるなんて。実はこちらのお茶は私がブレンドしたものなのです」
「さあ、アレックスも飲んでみましょう?とても美味しいわよ」
「え、ええ。ありがとうございます、リリー」
カップを受け取り、口元に運ぶと甘い香りが漂ってきます。ミルクのような香りに少しだけ緊張が和らぎました。
「...。美味しいですね」
「やっと笑ったわね」
「あ...」
「さあ、次はこちらのお菓子よ」
アメリアが差し出したお菓子をいただきます。甘さが控えめでお茶とよく合い美味しいお菓子です。
「どうして、ここまで優しくしてくださるのですか?」
「え、?」
「私は、皆さまを危険な目に晒してしまい、怖い思いもさせてしまいました。それなのに、」
「アレックスは悪いことなんてしていないじゃない!怖がっているカミラや皆を気遣いながら魔獣の攻撃を防いでくれたじゃない」
「でも、」
「アメリア様の言うとおりですわ。戦闘に立ち、私たちのことを守ってくださりました。感謝することはありましても責め立てることはありませんわ」
「そうよ、アレックス。私たちはあなたに感謝しているの。助けてくれてありがとう、アレックス」
室内にいる方々は優しいまなざしを向けてくださります。
ずっと、不安で仕方ありませんでした。きっと、もう親しくすることはできないと思っていました。
「アレックス、?」
「ごめ、なさい、そう言って、いただけて、嬉しくて、」
「そう、そうなのね」
久しく流していなかった涙がどんどん溢れてきます。
「もう大丈夫よ。私たちはどんなあなたでも受け入れるつもりだもの」
「そうよ。私たちは友達だもの」
ハンカチで涙を拭いて、私は改めて教室内を見回しました。私に悪意を持っている方はいないようです。
「皆様、改めてよろしくお願いいたしますね」
私がそう言うと暖かな拍手が聞こえてきます。
そして、改めてクラスでのお茶会が始まりました。




