波乱の前に
「やっと見つけたわ」
「アメリア、お疲れ様。各会場のスイーツはどうだったの?」
「そうね。やっぱり、高位のほうが段違いに美味しかったかしら。ここにも素敵なものが多くありそうね」
「ええ、アメリアが好みそうなものがたくさんありましたわよ」
「本当?それで、2人はどうだったの?楽しめた?」
「交流はそれなりに、でしょうか」
「私もね。ここへ移動してからは噴水の魔法陣を眺めたり、アレックスが興味深い発見をしたからそのお話をしたりしていたわ」
「興味深い発見?」
先ほどの話をするとアメリアが首を傾げつつ、様々なアイデアを導き出しました。
「浄化ができるならお洋服のお洗濯が楽にならないかしら?」
「洋服を浄化するということ?」
「そうなると、お洋服自体に浄化を行う魔方陣を刻む必要がありそうですが」
「そうじゃなくて、お水に浄化作用をもたらして、そのお水で洗うだけでお洗濯ができるみたいな。冬場は特に手が荒れて大変だもの」
それは面白そうな視点ですね。家事が楽になることで使用人の仕事効率も上がりそうですし、何より、騎士団の長期遠征や旅商人や旅人にとって大変便利なものとなるでしょう。
「一考の余地がありそうですわね」
「本当に?」
「ええ。実現できるのなら素晴らしいものとなるでしょうね」
アメリアが嬉しそうに笑います。私もなんだか嬉しい気分になりました。
カミラはまだいらっしゃらないようですね、人気者の彼女ですし、多くの方々が交流を望まれているのでしょう。
「そういえば、最近女子生徒の間でリベラ商会の商品が流行っているそうよ」
「リベラ商会って、アレックスがひいきにしている所よね?」
「ええ。最近は主に美容品に注力されていますわね。商会のお嬢様が発案されているそうですわ」
「高品質なのにお値段がお手頃で私も紹介されてから使っているの。美容パックや化粧水を売り出すという話が出ていてね」
「でも、意外ですわ。高級品にこだわるような方が多いとお聞きしたことがありますもの。それなのに流行になるだなんて」
「あー、それは、」
「私、ですか?」
「以前、カフェテリアで美容品のお話をしたでしょう?耳にした庶民棟の子が実際に商会のものを使ってみたんだって。その子、くせ毛でかなり悩んでいた子らしくて商品を使い始めてから見る見るうちに改善されて庶民棟の方で話題になったみたい。それから平民の方々の間で徐々に人気になって、貴族の家で下働きをしている方からその噂が伝わって流行になりつつあるみたい」
以前、屋敷にいらした時に様々なサービスをつけてくださったのはそういうことだったのですね。
「一部ではあまりよく思わない方もいらっしゃるみたいだけど高い評価をつけている方が大勢いるの」
それから、アメリアはお茶会での話を楽しそうに話してくださりました。
お揃いの髪留めについての問い合わせもいくつかあったらしくそのデザインを褒められて嬉しく思ったことなどを話してくださいます。
「それから、ドレスの話もたくさんあって、」
「サンドラ!あなた、何してるのよ!」
話を遮られ、聞き覚えのある声の方を向くと、顔を真っ赤にしていらっしゃる、マリエル・ブランシュ令嬢が立っていらっしゃりました。数人の取り巻き付きで。
「ブランシュ様、いかがなさいまして?」
「あなたが私を無視し続けるからでしょう?それに、約束にも現れないだなんてどういうつもり?」
「約束、ですか?」
「休日はショッピングに行くって言ったじゃないそれに昼休みも放課後も」
あの日以降、そのようなお約束をした覚えはございません。
「ドタキャンだなんてどういう神経をしているの?」
そのお言葉をそっくりお返ししたいところですが、今は我慢です。ひとまず、言いたいことをすべて言っていただいた後にどうにか宥めてお帰りいただきましょう。
「アレックス、ごめんね?この方が取り次ぐよう言ってきてどうにか止めようとしたのだけど」
カミラが疲れた顔をしてそう言いました。遅くなったのはそういうことなのでしょう。
「アレックス、大丈夫?」
「ええ。どうにか穏便に済ませますわ」
「何こそこそ話しているのよ!学園にふさわしくない方と交流なさるなんて、侯爵様のお顔に泥を塗りたいようね」
「ね?使用している商品も無名の商会の物ですし、」
取り巻きとともに嫌なことばかりを言ってきます。アメリアが今にもつかみかかりそうです。
カミラも鋭い視線を向けていますし、早急に済ませた方が良さそうですわ。
「ブランシュ様は勘違いされているようですが、この場に学園にふさわしくない方なんて1人もいらっしゃりませんわ」
「はあ?そこにいるじゃない。平民上がりの家の方々が」
「彼女たちは立派な学園の生徒ですわ。入学時に国王陛下が認められております。まさか、国王陛下のご決定に異議を申し立てるおつもりなのでしょうか?」
「ち、ちが、」
「それに、私は貴女とお約束をした覚えはございません。貴女から絶交を持ち掛け、私は了承致しました。何度も持ち掛けられていましたのに、早く了承できなくて申し訳なく思っていますわ」
「あ、あれは、本気じゃなくて、」
「失礼ですが、ブランシュ様は軽々しく仰っていてのですか?アレックスが傷つくことを承知で」
「部外者は入って来ないで!」
「取次ぎをお願いしておいて何を。これ以上、私の大切なお友達を傷つけないでくださいまし」
「テイラー様に睨まれたら終わりよ、」
「わ、私たちは、失礼します」
カミラの声に取り巻きの方々は慌てて逃げ出してしまいました。
またもや注目を浴びてしまい、居心地が悪いです。
「アレックス、大丈夫よ」
「そうよ、私たちがいるもの」
「アメリア、、リリー、」
どうにかしようと椅子から腰を上げたその瞬間、庭園の奥から大きな音がします。
それとともに空が暗くなりました。衝撃とともに砂埃が舞います。急いで衝撃緩和のために結界を出し、近くの3人を守ります。
私は周囲を警戒しつつ、様子を伺いました。




