黄色のお茶会
翌日、提案をすべて呑んでくださるとの返事をいただきました。これには皆驚きです。
本日の予定は午前午後共にお茶会となっています。午前は色ごとに分かれ、午後はいくつかの会場に割り振られて行われます。
1年生から5年生まで集まるのですが、初めてのことですのでやはり緊張してしまいます。上級生は1年生が少しでも慣れるように導くようにと先生方は仰りました。
会場の装飾などの指示は4年生が行い、お茶とお茶請けの用意は2,3年生の役割です。4種類の中から好きなものを選択できるようになってあり、我がクラスはアメリアが提案なさったセイボリー系の小さなパイになっています。お茶はミントの香りのするスッキリしたものです。
甘いものが得意でない方への配慮です。この提案に最初は皆驚かれましたが、納得されました。特に男子生徒は大喜びしており、甘いものが得意ではない女子生徒もわずかに目を輝かせておりました。
「それでは、これより黄色のお茶会を開催いたしますわ。皆様、お好きなものをお取りになってください」
代表者の挨拶によりお茶会は和やかに始まりました。
話題の多くを占めるのは音楽や絵画についてです。音楽祭についての情報交換も執り行われています。
「カミラはお話に行かなくても良いのですか?」
「それは、アレックスにも言えることでしょう?」
私達は遠巻きに観察されているようです。こちらも話しかけてよいのかもわからず、お茶をいただいているのですが。
「コリン様。テイラー様、こちらの席、よろしくて?」
「え。ええ。もちろんです」
見かねたのか先輩が私たちの席へとやってきました。
「アウロラ・ブラウン先輩、ですよね?」
「あら、私のことをご存知でしたの?コリン様」
「ええ。素晴らしいピアノをお奏でになると有名ですもの」
「天使の歌声をお持ちの方にそう言われるなんて光栄ですわ」
「天使の歌声、ですか?」
「あら、ご自身では存じ上げていなかったのですね。昨年、話題になっていましたの」
「私もそのお噂は耳にしたことがございますわ。音楽の授業で確信を得ましたが」
私を見つめてお2人は盛り上がっております。
「それにしても、見た目は妖精のようで可愛らしいですわ」
「ありがとうございます。ブラウン様は女神のようにお美しいですわ。私もそのようになれるでしょうか」
「そのようなことを言っていただけるなんて、とても嬉しいですわ。実は、ご提案がありましてお声をかけさせていただきましたの」
「ご提案ですか?」
ブラウン様がそう仰ったとたんに視線が一気に集まります。
「音楽祭でもし、貴女がソロで歌うことがありましたら、私にピアノ伴奏を務めさせていただけないでしょうか?」
「...。よろしいのですか?」
「ええ。私は今年で卒業ですから、最後に貴女のような美しい歌声と音楽を奏でいです」
「それでは、私がソロの役割になることができたらお願いいたしますわ。そのためには頑張らなくては、ですね」
私がそう言うとブラウン様は頷いて手を握ってくださりました。
周囲からは羨望の眼差しを感じます。憧れの先輩に伴奏をお願いできる機会を得た私が羨ましいようです。ブラウン様に恥じることのないよう少しでも上達しなくては、ですね。
「それでは、私はそろそろ、人気者のお2人を独占するわけにはいきませんもの」
いたずらっぽく笑ってから席をお立ちになります。
「素敵な方でしたわね」
「そうね。私もブラウン様のようになりたいわ」
「カミラならなれますわ。新しいお茶を貰ってきますわね」
「私も、」
「た、ターナー様、よろしいでしょうか?」
「カミラ、お話して差し上げたら?こちらの席をどうぞ」
「こ、コリン様、ありがとうございます」
「いいえ」
カミラは人気者ですね。さて、次はどのお茶をいただこうかしら。
先ほどはミントのお茶をいただきましたし、次は、
「カミラ様、よろしいでしょうか?」
「ええ、貴女は、」
「私、アイリス・ミラーと申します」
「私はアレクサンドラ・コリンです。ミラー様、いかがなさいましたか?」
「コリン様は古代文学の造作が深いと伺いまして、上達の方法を教えていただけないでしょうか?」
「上達の方法ですか。ミラー様は1年生でまだ古代文字の授業は取られていませんですよね?」
「はい、しかし、古代文字がわかるようになると音楽への理解度も上がりやすくなるとお兄様が仰っていましたので」
「そうでしたのね。入門編でしたら、図書館にある参考書が良いと伺ったのですが。ある程度分かるようになったら短いものから読み進めていくと良いかもしれません。それだけ熱意がおありならきっと早く読めるようになりますわ」
「ありがとうございます」
私が所持している本はさすがに難しすぎますわよね。
さて、お茶選びに続きを、
「コリン様、よろしいでしょうか?魔法基礎についてお聞きしたくて、」
「え、ええ。構いませんわよ」
「お次は魔方陣についてお聞きしてもよろしいでしょうか?」
い、いつの間に人だかりが。ど、どちらから伺えば、
「リリー。あれ、」
「アレックス、大丈夫かしら?」
「大丈夫ではなさそうよ」
「そうよね、?」
「皆様、落ち着きになってくださいまし。あちらのお広い席でゆっくりお話しいたしましょう?」
「あ、も、申し訳ございません」
「いいえ、さあ、美味しいお茶とお茶請けもありますわよ」
どうにか囲まれた状態からは抜けられました。
下級生に頼られることは嬉しいですが、大変なこともあるんですね。




