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 私は小さな頃、他の令嬢たちと馴染めずにいました。

 どうも、思考や趣向が当時からズレていたようで、そのことに気が付かずに話を進めると段々と人との距離が開いていくのに徐々に気が付き始めました。

 そんな時、唯一私に優しく話しかけ続けてくださったのがマリエルだったのです。


「って、悲壮に塗れた顔で言われてもな」


 お昼休み、私は腐れ縁であるグレイソンに相談していました。


「感情を理性で制御できなかったのです。淑女を目指す身としてなんたる失態。恥ずかしくて魔獣の森に埋まってしまいたいですわ」

「それやったら普通に死ぬ、いや、お前なら生きて帰って来られるか?」


 グレイは神妙な面持ちでおかしなことを言っています。埋まるくらならば無傷で生還できるでしょう。問題は、公衆の面前であのような冷たい物言いをしてしまったことです。


「まあ、いい機会じゃないか?」

「何がです?」

「今まで友人と呼べるのはブランシュ嬢しかいなかったんだろう?まあ、友人と呼んでいいのかも怪しいが。これを機に新たな友人を作ってみるのも面白いではないか」

「グレイ、私にとっては笑い事ではなく切実なのです。それに、私とお友達になりたい奇特な方なんて、」

「お前は学園に入学した1年間いったい何を学んできた?女子生徒に馴染めるよう、流行や社交についてリサーチを重ね、常に対策を立ててきたのだろう?」

「どうして貴方が知っているのですか?」


 近しい方たちには徹底的に隠していたはずですのに。


「リックに聞いた」

「お兄様、よりにもよってグレイに、」


 家に帰ったらやらねばならないことがあるようです。


「傍から見たお前の評判を教えてやろうか?」

「評判、ですか?」


 まさかまた、陰口を叩かれているのでしょうか。いえ、家名に泥を塗るような行為はしていないはずです。しかし、今日は廊下で通行の妨げを。気が付かないうちに何かをしでかしてしまった可能性もあります。

 勉学、は、及第点のはずです。


「なにブツブツ呟いてるんだ?」

「グレイ、卒業後、どの修道院に行くべきか相談に乗ってくださいますか?」

「どうやったらそんな飛躍した考えになるんだ?評判は概ねいい感じだ」

「そう、なんですか?」

「こんな所で嘘をついてどうする?男子生徒及び上級生の女生徒からは守ってあげたいような可憐な存在。下級生からは憧れの的。同級生からは、話しかけづらいと、」

「やはり、授業で何かをしてしまったのですね」

「違う、ブランシェ嬢がいるから近寄りがたいと、」

「マリエル様は社交的で明るい方、ですよ?」

「ま、まあ、な」


 何故か可哀そうなものを見る目で見られている気がします。気のせいだと思うことにしましょう。


「と、とにかくだな、お前は自らの過去を乗り越えようとしているということだ。そのことに関しては胸を張っていいt。僕としては昔のようなお転婆を見ることができないのはいささか寂しいが」

「しかし、長い付き合いの友人に絶交されるほど私は、」

「はあ、お前、何度絶交宣言をされた?ああ、2人の時のことも数えろよ」


 なんだかグレイがいら立っているように見えます。

 確かに、絶交宣言は今回が初めてではありません。だからこそ、自身の発言に驚いたわけですが。最初に言われたのは、確か、話すようになって1年後、風邪をひいてマリエルの誕生会を欠席した時。


「...。少ない時で月に1,2回、でしょうか」

「お前の心の限界がついに来てしまったんだな」

「私の心が弱いということでしょうか?」

「いや、違うな、きっと疲れてしまっただけだ。疲れる相手と無理にいる必要はないということだな。それに、常習的にそのような言葉を浴びせ続けるんだ。彼女にとってお前は理不尽に傷つけてもいい存在だったにすぎな、ど、どうしたんだ!?」

「いえ、友人だと思って、大切にしたいと思っていたのは私だけだったのですね」


 知りたくないことを知ってしまった気分です。

 外傷はないのに、なんだかとても痛いです。今まで押さえつけていた感情が溢れ出してしまいそう。


「わ、悪い、泣かせるつもりは、って泣くとは思ってなくて、」

「グレイ、大切なことに気が付かせてくれてありがとう、私、マリエル様とは決別するわ」

「お、おう」

「...。害を及ぼすならもういらない」

「あちゃーこれは、リックに報告だな」


 そんなグレイの言葉が気にならないほど、先ほどまでの悲しみは私の中に溶け、やがて無くなってしましました。

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