固い壁
座標を探った結果、ここは先ほどまで通ってきた道よりも地下であることが分かりました。そして、この場所から斜め上に移動したところが最終チェックポイントになるようです。歩いている内に2つ目のチェックポイントを通り過ぎていたようです。
さて、上の方に向かって掘るには安全確保をしなければなりません。崩落の可能性もありますし、ここは慎重かつ大胆に行うことが大切でしょう。
「斜め上に彫るだなんてどうするのですか?いえ、そんなことよりもどうして下の方に移動しているのでしょう」
「気が付かないうちに転移陣を踏んでいたのかもしれません。始めましょうか。マシュー様、サポートをお願いできますでしょうか?」
「構わないが、何をすれば、」
「防御壁を展開してください。私はまず透明な壁を打つ破ることから始めますわ」
「わかった、が、あの固い壁を打つ破るだなんてできるのかい?」
「あれよりも固い素材を用いればできそうです。幸い、固い意志を採集しましたし、それと先ほどの魔術を組み合わせて割りますわ」
身体強化もしっかりと行い、手に装備を着けます。いえ、これは怒りのあまり気分をすっきりさせるために自らの拳で殴りつけ、ストレスを八刺させたいという欲望からくるものではなく、確実に割るために手ごたえを感じられる方法はないかと考えた結果によるものです。
そう、ここから確実に脱出するためには必要なことなのです。
「アレックス、難しい顔をしてどうしたの?もしかして、やはり難しいのことなのかしら?」
「い、いえ、どのあたりに命中させたらよいかを検討していただけでしてよ。さあ、瓦礫などが飛んできたら危ないですからマシュー様の範囲内にいてください」
「わ、わかったわ」
危ないです。カミラに私のこの考えを知られてしまったならばきっと距離を置かれてしまうことでしょう。それだけはどうしても避けなければなりません。
先ほど拳を当てた時の感覚としましては、素早くかつかなり強く攻撃を打ち込めばどにか割れるのではないかという程度でした。洞窟内ですのであまりにも攻撃力が高すぎるものは使用できませんが。以前に防御力全振りにしていた魔獣を討伐したことを思い出しますわね。
どのような強い攻撃もなかなか効かずに手を焼きましたもの。
結果的にその魔獣と同程度の固さの武器を生成し、かち割りましたがそれほどの強度はなさそうです。
「アレクサンドラ嬢、こちらは準備ができた」
「かしこまりました、では、打ち込みますわ」
私は装備を確認して金に拳を打ち込みます。それと同時に先ほどと同様に土をできうる限り固くしたものも打ち込みます。
透明な壁は少し光を放った後に土煙を上げて崩れ去りました。破片は消えそうになっています。1つ拾い、観察してみます。どうやら、魔力を固めて作られたもののようです。これは、保管しておいた方が良いでしょう。
「アレクサンドラ嬢、それは?」
「破片です。こちらは少々改良を施した保存袋です。魔力結晶を保存する際に用いる者なのですが、」
「差し支えなけれな魔力結晶についてお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「その名の通り、魔力を用いて作られる結晶になります。現代ではあまり使われていませんが、確か古い魔術史の本に記述がありましたね。それから魔術書にも」
「古いってどのくらい古い物?」
「目を通したものは50年ほどに改訂されて出されたものでしたが元となる研究自体はもっと古くからあったことでしょうね」
さて、邪魔な壁はなくなりましたし会談を作ることに致しましょう、この作業は崩落に気を付けつつ周囲の壁を時には削り土を操っていくものなのでそれほど難しくはありません。マシュー様のサポートを受けつつ素早く作業を行っていきます。
「...ここがちょうど真下になるようです、真上に人は確認できません。打ち抜きますわ」
「わかった、こちらも構えておく」
少しの衝撃音とともに天井(あちらからしたら地面)に穴が開きました。土煙が薄くなると何事かと驚かれた表情をされたオリビア先生と目が合います。
「開通しましたわ。気を付けてお上りください」
上がったのち手を貸しながら声を掛けるとカミラとアウロラ様の安堵した表情が確認できました。私達は最終チェックポイントに到着しました。