休憩中
1時間ほど花びらの上下運動をされていたマシュー様はどうやらお疲れのご様子です。
「ここまで集中したことはなかったよ」
「これを意識せずともできるようになると効率よく風属性を扱えるようになりますわ。目安としましては最低1日10分をかかさずに行うだけでも変わります」
「今日1時間やったのは?」
「感覚を体で覚えるためです。予想以上の成果で驚きましたが」
さて、いよいよ丸太への再挑戦へと参りましょうか。先ほどよりも大きなサイズをご用意いたしました。お顔が引きつっていらっしゃります。
「こ、これをやるのか?」
「魔獣のサイズはこれよりも大きいものがございましてよ」
「そ、そうだが、」
「肩の力を抜いて挑戦してみましょう。先ほどの感覚を思い出してください」
「わかった」
手中をされる時は目を閉じられるのが癖なのでしょうか。後ほどの指摘といたしましょう。戦闘中に視界を狭めるのは大変危険なことですから。いえ、むしろその集中力を利用しても良いのかもしれません。
「あ、アレックス、あれを見て」
「か、カミラ、どうしましたか?あら、」
「こ、これは、」
マシュー様の目の前にはきれいに千切りにされた丸太だったものがりました。荒い部分はありつつもきれいにできています。何より、やってのけたご自身が1番驚いていられる様子です。
「マシュー様、どうですか?」
「いや、あまりのことで驚きが、いや、それよりも先ほどよりも魔力の消費を感じられない。これは、」
「そのことについては後ほどお話しますわ。今は休憩にしましょう」
「わ、わかった」
2時間も続けて特訓を行うと普通は疲れてしまうようです。以前グレイが言っていました。
「それにしてもすごいですね。いったいどのような特訓をされていたの?」
「カミラも休憩ですか?」
「ええ、アウロラ様がわかりやすく教えてくださったから上達したように思えるわ」
「アレクサンドラ嬢は意外とスパルタだな。グレイの言っていた通りだ」
「ご冗談を。改良に改良を重ねた特訓内容でしてよ」
「本当にどのようなことをしていたの?」
カミラに先ほどの特訓内容を告げると引きつった表情をされていました。え、なにかおかしなところでもあったでしょうか。
「とても忍耐力と集中力が必要ですね」
「それらも養うためのものですから。でも、成長は実感できましたでしょう?」
「それは、そうだな。魔力の調整についてよくわかったような気がする」
「そういえば、マシュー様は手中される時は目を閉じられるのですね」
「そうだな、できるだけ情報を少なくしたくて、だが、あまり褒められたことではないだろう」
「そうですわね。魔術を使うにも今後は瞬発力が課題となってくるでしょう。風属性自体接近戦で使用することは少ないですが」
「主流は火や水だからな。できることはせいぜい他の属性の補助くらいだろう」
少しだけ落ち込んでしまわれたようです。
「カミラ様、そろそろ再開いたしますわ」
「はい、アウロラ様」
カミラはアウロラ様の元へと戻られました。
「僕たちも再開するのかい?」
「私は構いませんが、マシュー様はもう少し休まれた方が良いでしょう?」
「いや、今すぐにでも、」
「焦りは禁物ですわ」
所々で爆発音などが飛び交っています。今のところ地味な特訓しかしていませんからどうしても強力なものを試してみたいお気持ちも多少あるのでしょう。しかし、派手なだけで大して威力がないものは実際にはあまり役に立ちません。魔力消費も激しいですし。
「探知魔法をご存知ですか」
「あ、ああ、知識としては」
「試してみませんか?それならば集中されている時に目を閉じられても問題ないと思のですが」
「集中しながら魔法を使うのは難しくないか?」
「すべては慣れです」
「それを言われると皆何も言えなくなるということを理解しているのかな?」
「これもすぐに使えるようになる必要はありませんわ。ただ、扱えるようになると便利になります」
迷われているようです。まあ、決断は今すぐに出さなくても良いでしょう。
「もう少ししましたら再開しますわ。次に何をすべきかの説明は先にすましておきましょうか。