常人、とは?
「停止しているものが多いとは思っていたが、ここまで多いとは思わなかったな」
気を取り戻されたジャクソン様に対して私は学園内でその機能を果たしていない魔法陣の場所の説明をしました。私が確認できただけでこの数ですから実際は他にもまだまだあることでしょう。さて、ここからはプレゼンのお時間です。
第一目標として何としてでも講堂の調査を早急に行うようどうにか交渉するのです。
「やはり、全ての東屋の復元からしたいところではあるが、他に意見はあるか?」
「私は講堂の方も早めに進めた方が良いと存じますわ」
「講堂、か?後回しではいいのではないか?魔力が膨大な量必要であろう?」
「だからこそですわ。長く時間がかかるところこそ早めに着手し、他の所と並行することで効率が上がると思いますわ」
「それは、一理あるな。具体的にはどれくらいの魔力と素材が必要かわかるか?」
「そうですわね...」
私はざっと必要なものを書きだしました。現存しないものに関しましては代用できるものもありますので問題はないでしょう。素材も魔獣を仕留めることで手に入れられますし問題なさそうです。
「最低でもこのくらいでしょうか?」
「これは...。並行するのは難しいだろうな」
「え、」
「素材として必要な魔獣が強く攻略が難しいのもあるが、この魔力量はさすがに...。」
「アレックス、ちなみに聞くが、どの程度の期間で成し遂げられる予定をしていた?」
「3週間くらいでしょうか」
「いや、無理だろ」
「え、」
「やはり課題は素材集めですか?」
「そうだな。このリストの中で1番弱い魔獣でも騎士団3人がかり、1番強いもので騎士団の精鋭を集め、怪我無く帰れるかどうかのレベルだ」
「そんなに大変なのですね...。それにこの魔力量は、」
高火力魔術をぶち込めばすべて解決しそうなものですが、いえ、やり過ぎると山1つ消し飛ぶ可能性がありますわね。1度それでお母様に怒られたことがありますもの。あの時のお母様は過去1恐かったですわ。全てを修復することで留飲を下げていただきましたが、もうあのような失敗をしてはいけないのです。2度目は本当にありません。
しかし、その失敗を糧に調整する術を覚えたわけですし、結果的には良い方向に転んだと思いますわ。
「アレックス、なんか和やかな表情をしているがいい思い出でもあったのか」
「人生、失敗から良い結果を得ることもできると思い出していただけですわ」
「アレクサンドラ嬢でも失敗することがあるんだね」
「もちろんですわ。お恥ずかしながら成功例よりも失敗例の方が多くて、」
「お前の失敗は常人の命がいくつあっても足りんだろ」
「あら、こうして無事生を謳歌しているではありませんか」
「常人って言ったのが聞こえなかったか?鋼メンタル」
「あら、御冗談を。私の心の持ち方は常にしなやかであるよう心がけておりますのよ?鋼と一緒にしてもらっては困りますわ」
「つまりは鋼よりも強いと...。恐ろしいやつだな」
「話がそれてジャクソン殿が困っているぞ」
これは失礼いたしましたわ。
「とにかく、何もかも時間がかかりそうだな。後回しにするか。それにしても、図書館のものは特に影響がないのだな」
「司書の先生が定期的にメンテナンスをされているからだと思いますわ。使用できなくて1番困るのは自分自身だと仰っていましたから」
「なるほどな。この結果については報告を回しておく。明日以降担当を決め作業を行おうと思うのだが、2人組でやった方が良いだろうか?」
これは、アウロラ様と2人きりになりたいという解釈でよろしいのでしょうか?ちらりとグレイに視線を移すと頷いています。正直、私は1人で進めた方が早く終わりそうなのですが、グレイ曰く暴走防止のために監視を付けたいとのことでした、やはり凶暴な魔獣と思われているのでしょうか?
ペアについては明日の活動時に決定することとなり、本日の活動は下校時刻とともに終了となりました。
今回は失敗でしたわね。