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穏やかなひと時

 研究は着実に進み、どうにか香水を完成させることができました。解決策もいくつか上がり、それを試している最中です。

 カーター家の方で香水に関する取り締まりは強化してくださったようで商人の方も時期に捕まることでしょう。


「では、ほぼ解決しそうなんだな」

「その割には浮かない顔をしていらっしゃりますね」

「新たな問題がな。アレクサンドラ嬢がどうしてそう平然としているのか不思議なくらいではあるが」


 例により開かれている作戦会議兼お茶会です。それぞれがオススメのお菓子を持ち寄っています。私はアウロラ様おすすめのパイをいただいております。


「問題、ですか?ジャクソン様何があったのですか?」

「魔獣寄せの笛だ。あの件は解決したと思っていたのだがな」

「押収された笛に南の公国の紋章が刻まれていたのですよね」

「わかっているではないか。君は何故あの場で報告を回さなかったんだ?」

「んん、魔獣寄せの笛は一定数、輸入していると伺ったものですから、正規ルートを通り輸入されたものだと思っていましたわ。購入する際には身元確認証や保証人の認証などさまざまな手続きが必要となりますから身元が明らかでそれなりに地位のある方にしか扱うことができませんもの」

「詳しいな...。」

「何度か使用したことがございますから」

「魔獣寄せをか?」


 何を驚くことがあるのでしょう。現在は魔獣を引き寄せるトラップを作成する方が効率が良いことが分かりそうしていますが、トラップを確立する前は随分とお世話になりました。ダンジョンに潜る際や、森で色々と試したくなった時など。南の物は品質が良く、他の国の物や国産に比べてすぐに魔獣を寄せることができましたわ。


「押収されたものはその中でも最高品質の物でしたわ。そのおかげでドラゴンなどを呼び寄せることができたのでしょうね」

「そんなに危険なものだったのか。...。」


 危険とはずいぶんな言い様です。あれだけ高品質なものが作れるというのは技術力が高い証拠でしょうに。それに、それだけのものに対応できる強さをお持ちという意味も持ち合わせているのです。


「アレクサンドラ嬢は怖くないのか?正直、僕はあの時かなりの恐怖に襲われたのだが」

「俺もだ。盛り上がっていたのは赤のクラスの生徒くらいだろう」

「アレクサンドラ様のクラスはその後に魔獣の襲撃にも遭われていましたものね」

「はあ、それを対処したのもアレクサンドラ嬢だったな...。」


ジャクソン様に呆れた目で見られました。生憎、味方になってくれそうなノア様は用事がおありのようで欠席です。

 視線に気が付かないふりをしながら私はシュークリームに手を伸ばしました。甘さが控えめでくどくない味わいがとても好みです。


「そうは言われましても、誰かが対処せねばならない状況で私が適任だったにすぎませんわ。いくつかの妨害工作もされていたようですし」

「報告に上がっていたことだな。あれほどの高度な魔術はあまり目にすることはないのだが」

「術式自体は難しいものではございませんでしたよ。応用力の違いでしょうね」

「お前の難しくないは大概難しいんだよ。ったく、課題で出されたものも調べるだけで一苦労だってのに」

「古代文字が読めれば問題ありませんわよ。クラス内では既に何人か解かれていますし」

「おま、クラスであれを出したのかよ、鬼か!?」

「グレイ、失礼ですわよ。魔術の解説をお願いされたときに作成したものです。魔力消費を抑えることができ、術式をいくつも展開できるように、」

「少なくとも2年で習う範囲ではないな...。それよりも、アレクサンドラ嬢のクラスでは古代文字を読めるものが多いのか?」

「辞書を片手にですが。それでも1時間もあれば10ページは現代訳できるでしょうね。あら、何か?」

「いや、少し頭痛がしてな...。」

「2年生でそれだけ読めるのはすごいことですよ。古代文字の学習が本格的に始まるのは3年生ですから」

「そうなのですか?音楽祭の時に興味を示されたようですのでお教えする機会がありまして」


 あら、なんだかグレイとジャクソン様が頭を抱えられています。そういえば、お2人は古代文字が苦手だと仰っていましたね。


「僕もできるだけ読み進めてみたいんだけどオススメはあるかな?」

「旅物語などは読みやすいと思います」

「訳されたものは読んだことがあるけど読んでみるか」

「私もアレクサンドラ様の開設をぜひ聞いてみたいですわ。お時間がある時にお願いしてもよろしいでしょうか?」

「もちろんですわ。その時代ごとの流行や習慣などを知れてとても楽しいのですよ」

「それは、服飾や香料に関する記述も、?」

「ええ、いくつか記されていましたわ。今度お持ちしましょうか?」

「ぜひお願いしたい」


 マシュー様は周囲から人がいなくなったことを気にされなくなったようです。それでも変わらず親切に接することをやめられていないので近いうちに以前のような人気も取り戻されることでしょう。少なくとも下級生の間では憧れの存在として視線を向けられていますから。


「アレクサンドラ様?」

「いえ、こうして穏やかに過ごすことができるのは良いことだと思いまして」

「まあ、私達でよければアレクサンドラ様が穏やかに過ごせるよう、協力は惜しみませんわよ。それは、アレクサンドラ様のご友人方も同じです」

「そうでしたわね。っふふ、今度はアメリア達ともお茶会の予定を立てましょう。アウロラ様もご招待しましたら参加してくださりますか?」

「もちろんですわ。女子会ですね」


 私は案外穏やかなひと時を好むのかもしれませんわね。さて、そろそろ大詰めですし、念のため南の情勢についても調べた方が良さそうです。オスクリタの方にも情報を共有して、少しやるべきことが増えそうですが、もうひと踏ん張りです。

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