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太陽の東屋

 テスト本番が3日後となったために、皆様の熱の入りようが日に日に増しているように感じられます。教室内で勉強をしているわけですが、ちらほら別のクラスの生徒も目につきます。

 こちらに話しかけてくるわけではありませんが視線を感じるために居心地が悪いです。

 思えば、昨日行った現代語訳の勉強会の時には教室の外の方に気配がありました。参加したいとの申し出があったそうですが、黒板を使っての授業のような形と他クラスの学生の入室許可が取れていないことからお断りをしたと幾人からお話がありました。

 説明自体もクラスの方たちに合わせたものでしたので理解が難しい部分もあるかもしれませんでしたしありがたことでした。音楽に結び付けた手法ですとわかりやすいとの意見もいただけましたし、ここからさらに改良を加えると良いでしょう。


「アレックス、もしかして体調が悪いの?」

「それは本当?少し休みましょうか?」

「平気です。リリー、カミラお気遣いありがとうございます」

「気分転換に場所を変えて勉強してみるのはどうかしら?教室に籠りっぱなし気が滅入っちゃうわ」

「それなら、いい場所を知っていますわ」

「アレックスのおすすめの場所なら行ってみたいわ」


 リリーはそう仰るとカバンを用意し始めました。続いてアメリアとカミラも。

 お外に行きたいのはそうですが、周囲のすがるような視線を感じます。主に他クラスの方達からですが。

 私が困った顔をしていると、カミラがそっと囁きます。


「アレックス、気にしなくても良いのですよ?」

「そうよ、アレックスはクラスのために頑張ってくださったのだもの。休憩しないと体調を崩してまうわ」

「アメリアのいうとおりね。それでは、皆さまごきげんよう」


 私はリリーに手を引かれて立ち上がりました。カミラを教室内を牽制するように微笑みかけています。教室のドアが閉まったところで肩の力が少し抜けました。

 そうだわ。私が良い場所があると言ったのだもの。案内しなくては。

 リリーの手をつないだまま、私は西の東屋へ案内しました。


「ここは始めてくる場所だわ」

「私もよ」


 アメリアとカミラはそう言い、ベンチに腰掛けました。


「アレックス、もしかして、ここはあの東屋なの?」

「位置は移動されていますが、外観と作りは再現されていますわ」


 リリーは観劇されています。頬を染め、瞳を潤ませながら。


「リリーどうしたの?ここはそんなにすごい場所なの?」

「アメリア!何を言っているの?ここは、あの東屋なのよ」

「あのって、どの?」


 助けを求めるようにアメリアが私に視線を送ります。カミラも不思議そうにしています。

 ここはあまり学生が来ることのない東屋です。学園の裏の森がすぐそこでひんやりとしていますが、東屋の中は小さな太陽の光を出す魔方陣が設計がされているため丁度良い温度が保たれています。以前、魔方陣が崩れているのを見かねて修復したのですが、そのおかげでより再現度を上げる結果となってしまったのでしょうね。

 以前の姿しか知らないのであれば、ここは決して使いたくない場所として認識されているのでしょう。学園案内の時に誰もが訪れているはずでしたが、お2人が初めて来たと認識されるくらいには変わって見えるようです。


「ここは、古代文学で最もよく知られている恋物語である『立金花』に出てくる東屋なのよ」

「えっと?」


 珍しくリリーが情熱的に話しています。


「それだけでなく、現代文学の恋物語に登場する東屋のモチーフもこちらなのです」


 いくつか作品例を挙げるとご存知のものがありましたのかカミラが頷いています。


「でも、東屋ってどれも同じ、怖いよ、リリー」

「こちらが特別性であることは確かですと。例えば、ここ」

「魔法陣?授業で見るものよりも複雑...」

「古代の魔法陣ですね。疑似的な太陽を作り出すことができるんです」

「アレックスはやはり博識ですね」

「い、いえ、そんな、」


 危ないです。知識をひけらかすことはあまり褒められたことではありません。


「ここは以前、お兄様が教えてくださった場所でして。自然が近く内部は暖かいので過ごしやすくて時折来ておりましたの」


 主に、こっそり読書をするために使用していました。私が直した後、お兄様やグレイはお昼寝をする時に使うと言っていましたが。


「素敵な場所ですね。さあ、アレックスの肩の力が抜けたようですし、お勉強の続きを致しましょう」

「不安そうな顔をしていたものね」

「そうでしたか?視線にあまり慣れないもので」

「教室にいらっしゃった他クラスの方々でしょう?使用許可を取られていたのは少数でしたし、無許可で入室し使用していたならペナルティがあるはずです。自業自得ですが」

「そうよね。アレックスに妖しい視線を送っている者もいらっしゃったもの」


 居心地が悪く感じられてのはそのせいでしたのね。


「その前に、甘いもの食べてからね。さっきは食べ損ねたのだから」


 始める前に少しだけ景色とスイーツを楽しんだ後、私たちは勉強を再開しました。

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