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リアム・パーカー様の噂

 騒がしい歓声、悲鳴と甘ったるい匂いから解放されたこの空間はまさに天国そのものです。思わず頬が緩んでしまいそうです。


「アレックスったら何だか嬉しそうですわね」

「こうして4人でお茶をするだなんて久しぶりのことですから」

「確かに、リリーは最近委員会が忙しそうだしアレックスもいつ休んでいるのかわからないレベルで忙しそうだものね」

「アレックスはきちんと休めていますか?」

「気が休まることはあまりありませんが、一週間のうちに最低2日は実験をお休みするようお母様に言われていますので休息をとることはできていますわ」

「良かったわ。ジャクソン殿下に責任者が移行する前はいつか倒れてしまうのではないかと心配でしたもの」

「お母様やテオにも似たようなことを言われましたわ」


 無理をしているつもりはなくても他の方からはやはり無理をしているように見えていたようですね。反省です。


「さあ、今日はパーッと楽しい話をしましょうよ」

「アメリアの言う通りね。沢山話したいことはあるもの」


 お茶を用意してお茶会は始まりました。香りのよいリラックスできるお茶が入れられました。先ほどまでの不快感が消えていき、安心感が生まれてきました。

 

「そう言えば、さっき周りの空気にあてられたのか分からないけど、一瞬あの人がカッコよく見えたのよね」

「えー?恋物語の登場人物の行動をただなぞっているだけじゃない」

「女性にいきなり触れるだなんてマナー違反でしてよ。私は困惑と恐怖で少し固まってしまいましたわ」

「アレックスはどう思った?カミラのように怖かった?」

「ええ、今すぐにでも沈め、いえ、髪に触れられたときは鳥肌が立ってしまいましたわ。何と言いますか、その、」

「わかったわ。嫌な気持ちになったのね」


 そう言ってアメリアは私の頭を撫でられました。

 危ないです。つい、本音が漏れてしまいそうでした。


「でも、カフェテリアを出た時には不快感が湧いてきたの。何だったのかしら?」


 守護魔術は上手く言ったようです。恋の秘術以外のものも視野に入れて考えなければなりません。人間の脳に錯覚をもたらす物、使用が過ぎると危険な物質であることは理解されているのでしょうか。


「アレックス、ぼんやりしてどうしたの?」

「あ、申し訳ございません。なんだかあの場の香りに少しくらくらしてしまって」

「かなり甘い香りがしたものね」

「花のようだけどそれだけではない不思議な香りだったわよね。はあ、洋服に残っていたら最悪だわ」

「確かに、至近距離だったら残っていても仕方ありませんわね。せめて香りだけでも落とせたら良いのだけど」


 確かに、この香りが残っていた場合不都合が起きてしまいそうです。香りだけでも拭うことにしましょう。


「アレックス?それは何?」

「水と火と風の複合魔術です。香りだけでも落とそうと思いまして」

「そんなことができるの?私もやって」

「ええ、もちろんですわ」


 私は複合魔術を使用しました。

 これは以前、と言っても入学前ですが野営をする際に開発したものです。川に落ちてしまいびしょ濡れになった挙句泥で服が汚れてしまいそれらを片付けるために開発しました。

 調整は難しいのですが、とても便利なのです、水と風で素早く洗浄を行い、風と火で乾燥させるというものですが、風の使い方によっては服を台無しにしてしまいます。


「すごいわ。本当に匂いが落ちた」

「ええ、グレイ様に誤解されずに済みますわ」


 グレイならばカミラの言うことをすべて信じ、リアム・パーカー様をすぐにでも蹴とばしに行きそうな気がしないでもありませんが、それでも他の方の匂いが残るのが嫌うのはカミラの乙女心なのでしょう。

 そこからお茶会は和やかに進んでいきます。 

 さすが女性同士の交流ということでいくつもの噂話を耳にすることができます。


「そう、いろんな女性に手を出しているとの噂があるの。婚約者がいようがいまいが関係ないみたいでね。気を付けなきゃね」

「でも、どうしてあそこまで女生徒を虜にできるのかしら?」

「噂では怪しい魔術を使っているらしいけど、そんな魔術があるのかしら?」

「なくはないと思いますが、学生で扱うことができるかどうかは不明ですわよね。アレックスはどう思いますか?」

「そうですわね。しかし、私はあの方のことを詳しく存じませんので。実際に異性からの人気がおありの方、あら?」

「急にああなったらしいわよ。あ、でもあの方の親友でいらっしゃった方は以前女生徒の人気が高かったような」

「聞いたことがあるわ。容姿端麗で紳士的な方だって」

「私もお姉様にお聞きしたのですが、そう言えば最近は行動を共にしているところをお見かけしないと仰っていましたわ」


 確証は持てませんが、何となくわかってきたような気がします。私はその親友の方のお名前とラスをさりげなくお聞きしました。

 そして、さりげなく話題を楽しいものへとすり替えました。どうにかお茶会は楽しい雰囲気のまま終えることができほっとしました。

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