久しぶりの
本日、私達は久しぶりにカフェテリアを訪れていました。私の方が忙しくこうしてゆったりとした時間を過ごすのは久しくありませんでした。
「最近疲れているようだったからその労いも兼ねているの」
「ご心配をおかけていたようですね」
「少しだけね。技術的なことでのサポートは難しいけれどアレックスが少しでも息を吐けるような時間を私達で作れるようにしようって、アメリアとカミラと話していたの」
「そのお気持ちがとても嬉しいですわ。最近は特に考えることが多くて、なかなか休まりませんでしたから」
アメリアとカミラはまだでしょうか?忘れ物を取りに戻られてから大分時間が経っているようです。リリーも心配の表情を浮かべています。
すると、突然黄色い歓声が上がりました。気になり、そちらに目を向けると困った様子のカミラといらだった様子のアメリア、それから、女生徒に囲まれた満足そうな笑みを浮かべていらっしゃるリアム・パーカー様がいらっしゃりました。
「騒がしくなりましたわね」
「そうね...こちらに近づいてくるわ」
大勢で移動されているために動きはゆっくりですが、これは厄介です。逃げ場がなくなっていきます。
「やあ、アレクサンドラ。奇遇だね」
「リアム・パーカー様、ごきげんよう」
以前の香りにさらに何かわからない香りが追加されているようです、甘ったるくて苦手な香りなのですが。
「相変わらず美しい髪に、瞳だね。それに、愛らしい手も素敵だ」
髪を救われ、口づけをされてしまいました。後ろの女生徒たちは私を睨みながら悲鳴を上げるという器用なことをされています。と、鳥肌が止まりません。
「女性に不用意に触れるのは紳士のマナーとしていかがなものかと存じますが、」
「俺と君の仲じゃないか」
「ただの顔見知りですが」
「そんな冷たい関係ではないだろう?目と目を合わせて会話を楽しんでいるじゃないか」
会話を楽しんでいるのは貴方だけでは?
どうしましょう。今すぐに沈めてしまいたいです。いいですか?沈めても。
いえ、落ち着くのよ、アレクサンドラ。相手のペースに飲まれてしまってはいけないわ。その時点で負けが決定するもの。
「残念ながら、私には今会話を楽しみたい相手がいらっしゃりますので失礼いたしますわ。リリー行きましょう?」
「え、ええ」
「リリーとも話してみたいと思っていたんだ」
「あ、あの、」
今度は狙いをリリーに変更したようです。あろうことか、リリーの髪に触れ、手に口づけをするだなんて...。
「まあ、女性の扱いに慣れていらっしゃるのですね」
「紳士としては当然のこと、」
「そう、ですか。リリー行きましょう」
「あ、アレックス、そうね。行きましょう」
リリーの様子を見るに、恋の秘術以外のものを併用することでその効果を上げているようですね。リリーの手を取り出口を目指します。さりげなく、守護の魔術を使用し、先ほどの状態を解除できるか試します。
「チッ!アレクサンドラ...。」
なんだか悪寒がするのですが、風邪でも引いてしまったのでしょうか。
「アレックス、リリー大丈夫?」
「私達は大丈夫ですわ。お2人も大変そうでしたが」
「そうなのよ。ここに向かっている途中に付きまとわれて、カミラは婚約者がいるからやめてほしいって言っても聞いてくれなかったのよ」
「本当に困りますわ」
「カミラは後ほどグレイに相談いたしましょう」
めんどくさくなりそうな気もしますが、カミラの安全が最優先です。
「でも、せっかくお茶しようと思っていたのに戻れないわね」
「あ、それなら安心して。2人が絡まれている間にテイクアウトしておいたから」
「さすがですわ、アメリア」
さすがの機転です。これで気にせず好きな場所でゆっくり過ごすことができますわね。私達は後ろの悲鳴とも歓声とも区別のつかない声を聞き流しながら西の東屋へと向かいました。