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少しの違い

 私たちが教室で勉強会をしているというお話はいつの間にか広まっていたようで、放課後の教室内ではいくつかのグループに分かれ、学生同士で教えあっている光景が広がっています。

 この光景に我がクラスの担任の先生は涙を流しながらお喜びになられ、教員控室で休憩時間のたびに自慢していらっしゃると図書館の先生が笑いながらおっしゃっています。


「今日はどのような本をお探しですか?」

「勉強会で参考にしたいのですが、易しめの古代文学の本と魔法書はございますでしょうか」

「あら、ご自身がお好きな本ではなくて?」

「アメリアとカミラに難易度が少々高すぎると言われましたので。リリーは喜んで下さったのですが」

「そうでしたか。そうでございましたら、現代訳が付いているこちらの物語集とこちらの魔法入門書はいかがでしょうか?」

「ありがとうございます。参考にさせていただきます」

「それにしても、アレクサンドラ様はお変わりになりましたね」

「そうでしょうか?」

「ええ。クラスの方々と打ち解けられる前は何かと肩に力が入っているように見受けられました。図書館でも隠れるように目立たない席で息を殺しながら読書をされていましたのに」


 やはり、見られていたようですね。私を心配したお父様が見守るようお願いされたのかもしれませんが。


「そうですね、私の趣味を否定されることがなくなりましたから、緊張する機会が減ったのかもしれません。ただ、いえ、なんでもありません」

「友人だからとはいえ、全てをさらけ出す必要はありませんよ。心の準備ができてからで良いのです」

「ええ、ありがとうございます。それでは、教室に戻りますわ」


 以前より心が楽になったのはそうかもしれません。皆、本当に良い方達で私のことを受け入れてくださっているような気がします。

 ただ、私自身の目指す淑女にはまだ遠いのは事実です、緩め過ぎないようにしなければなりませんね


「アレックス、どこに行っていたの?」

「アメリア、図書館へ行っていましたの。今日明日は私の担当でしょう?苦手な方でもわかりやすくするために数冊借りてきましたの」

「アレックスは真面目ね。でも、あまり無理しちゃダメよ?私たちは貴女が教えてくれるから嬉しいの」

「それでは改めて気合を入れなければなりませんね」

「そ、そうじゃないけど、まあ、楽しそうだし、いいか」


 さて、魔法書は正直教科書の内容を踏襲すればテスト自体は問題はありませんが不足を補うためにお借りした本も目を通しておきましょう。


「アレックス、」

「アメリア、いかが、むぐ、」

「根を詰めすぎるのは良くないわ。これ、チョコレートよ」

「ミントの味ね。爽やかで美味しいですわ」

「私もそう思うのだけど、リリーとカミラは苦手なようなの。だから、これは2人で食べましょう」

「ふふ、ありがとう、アメリア」


 艶のあるチョコレートに鮮やかなミント。甘さと爽やかさが頭の中をすっきりさせてくれます。


「そうだわ、アメリアにお聞きしたいことがあったのです」

「私に?アレックスが?いいわよ、なんでも頼って」

「実は、新しいアクセサリーを作ろうと思っているのだけどデザインで悩んでいて、」

「見ても?」

「ええ。小さな魔石を使ったものなのだけど、その色が映えるような、って、いかがなさいまして?」


 アメリアはデザイン画と私を見比べて固まってしまいました。

 どうしたのでしょう?


「魔石って、あの?宝石じゃなくて?」

「ええ、御守りも兼ねていますから」

「待って、アレックスが普段つけている髪飾りは宝石、よね?」

「いやだわ、アメリアったら、宝石はさすがに学園生活では身に付けられませんわ」

「ええ...。価値的には魔石の方が高いんじゃ...。」


 困惑した顔になっております。何か間違ったことを言ったでしょうか?

 そこへ不思議な顔をしてリリーとカミラが戻ってきました。

 事情をお話しすると、リリーはアメリアと同じように驚いて、カミラは苦笑しています。


「確かに、普通であれば小さいとはいえ魔石をアクセサリーにするだなんて思わないわ」


 カミラがそう言いました。

 それでは、私はまた、非常識な行動をしてしまっていたのでしょうか。無意識に。


「しかし、アレックスのお話も興味深いわ。アクセサリーにしたら気軽に魔石を身に付けられるもの。アクセサリーであり御守りだなんて私は素敵だと思うわ」

「驚いたけれどカミラのいうとおりね。魔石って大きくて目立つものだから加工も衣装に合わせるのも大変だもの。それに、宝石と見紛うくらい綺麗だなんて」


 責められ、否定されるのかと思っていました。最悪、また距離を置かれることも覚悟しておりました。でも、この方達なら、本当に信じてみても良いのかもしれません。


「アレックス、アクセサリーにしたい色は何色なの?色に合わせてデザインを選んでみましょう」


 そう言ってアメリアは優しく私の手を握りました。

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