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オスクリタと友達

 人混みを抜けたところに魔王様はいらっしゃりました。やはり、騒がしすぎるのは少々苦手なようです。


「ごきげんよう、魔王様」

「アレックスではないか。調子はどうだ?」

「まずまず、ですわ」

「はは、其方らのクラスの催しは実に興味深い物であった。演出も凝っておったし話も面白い。我としては、演出に使われていた魔術の答え合わせをしたいところだな」

「それは別の機会に致しましょう。この方たちをご紹介したくて探していたのですが」

「なんだ?其方の友人か?」

「ええ。アメリア・ターナー様、それからリリー・ミッチェル様でございます」

「そうか、我は魔王、オスクリタである」


 いきなり引き会わせてしまったせいか、お2人が固まってしまわれました。さて、どうしましょう。


「...。もしかして、恐怖を与えてしまったか?」


 オスクリタも狼狽えています。いけません、魔王としての威厳を失われてしまいます。しかし、お2人を怖がらせるわけにはいきませんし。ここは、


「いきなり紹介してしまい、申し訳ありません。実は彼女とは以前からの知り合いで、」

「我はアレックスにとってたかが知り合いという関係性なのか...?」

「いえ、とても仲のいいお友達であり、よき理解者です」


 隙を与えてはいけないことはわかっているのでしょうが、つい素が出てしまわれそうでした。危ないです。


「えっと、?」

「つまり、世間が思っているよりも怖い方ではありませんわ。少しだけ防音魔術を使いますわね」


 魔術を起動します、オスクリタの言葉が崩れがちなのは今のうちに修正しましょう。


「オスクリタ、落ち着いてください」

「だって、アレックスが知り合いだって...」

「貴女は友人というよりは近い関係だし、姉妹というのもしっくりこないのです」

「それじゃあ、今まで過ごした時間は...。」

「そうではなくて、友人や姉妹、家族というよりも特別な関係であると私は思っています」

「本当?」

「本当です。ですから、この場では威厳を保ってください。今の貴女は凛々しい魔王様でしょう?」

「うむ、わかった」


 どうにか機嫌を直してくれたようです。こういうところが可愛らしいと思いつつも、少しだけ心配になります。このような純粋な面を誰かに利用されてしまってはいないかと。


「えっと、この方があの魔王様、なのかしら?」

「そうですわ。まあ、緊張されるよりは良いかと思いお話しますが、彼女とは幼き時からの付き合いなのです」

「我らはアレックスが助けてくれた時から仲良しなのじゃ」

「最初は物凄く警戒されていましたが、徐々に仲良くなりました。素のオスクリタはこのように可愛らしい方で、魔王として職務を行う時には威厳を持った態度で臨まれるのですが、」

「なるほどね、大体はわかったわ。でも、どうして私やアメリアに紹介しようと思ったのか聞いてもいい?」


 リリーは少しだけ警戒なさっているようです。仕方ありませんわ。今までの人間と魔族との関係、現在の状況を考えますと少しでも安全を考えることは間違いではございませんから。


「オスクリタ、ご自身でお話されないと伝わりませんわよ」

「あ、アレックス...」

「可愛らしい表情をされてもダメです」

「うう...ふう、実はアレックスに其方らの話を聞いて会ってみたいと思っていた」

「その理由を聞いても?」

「その、アメリア嬢が考える衣装や装飾品はセンスが良いし、リリー嬢は古代文字を徐々に覚え、さらには最近では面白い話を書くと聞いたから...だ」


 しまいには私の後ろへと隠れてしまわれました。魔術で体を縮めてまで隠れなくても良いと思うのですが。


「つまり、お2人とお友達になりたいそうです」

「それだけ?」

「それだけです。立派な肩書を持たれていますが、オスクリタは少女ですから」

「わ、我は魔王だから、友達になりたいなぞ伝えたら相手が負担に感じてしまうのではないかと思い、それだけでなく、我の権力を利用しようとするものが近づいてくるばかりで、」

「私は良いわよ」

「アメリア!?」

「だって、素直に褒めてくれるなんて嬉しいじゃない。それに、私も魔王様に可愛い服を着てほしいもの」

「ほ、本当か?アメリア嬢」

「アメリアでいいですよ」

「で、では、私的な場では我もオスクリタで良い」

「よろしくね、オスクリタ」

「う、うむ」


 嬉しそうで何よりです。リリーは何かを考えられているようです、恐らく、混乱されているのでしょう。

 まあ、おいおい慣れるでしょうし、焦ってもいいことはありません。


「オスクリタ、魔術を解除しますから、態度は直してくださいね」

「う、うむ」

「後夜祭が終わりましたらたくさnお話ができますからそれまでの辛抱です。私だって、貴女とお茶するために色々と用意したのですよ?」

「ほ、本当か!?」

「ですから、残りの時間、頑張りましょう」

「わかった」


 魔術を解除するとオスクリタは魔王モードへと切り替えられました。あまりの切り替わりようにお2人は驚かれています。


「魔王殿、少し良いだろうか?」

「何じゃ?」

「あちらの方で今回の学園祭について感想を交わしませんかな?」

「よかろう、すぐに向かうとしよう」


 自然と魔王に戻られたようで何よりです。アメリアとリリーはオスクリタとの出会いについて興味津々のようですが、このお花委はまた今度に取っておくとしましょう。長くなりますから。

 いつの間にか、ダンスが始まる時間になりそうです、踊る予定はございませんが、会場にいないと不自然ですので私達はダンスが行われる場所へと移動をしました。

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