表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/69

年寄りの氷水(正しくは年寄りの冷や水)

「ゴォオオオオ」


大粒の雨と凄い風が私の顔に吹き付ける。あまりの風に身動きもできない。


原付に跨がり、一週間の買い物を終えた、俺ジャンは路上で立ち往生していた。


「くそ。強い風を受けていいのは、全盛期の○川貴教と、篠○涼子だけか…」


下らんことを考えながら、とにかく動けないこの現実をどうにかしようと、風が少し止むのを待ち、近くで原付を降りて休憩する。


「死ぬかと思われ…」


いやしかし、現実のジャンにも会社がある。


「ジャンさんは、台風の中外に出て、原付で転んで死にました」


洒落にならん自分の死因を考えて首を振る。一応、俺にもプライドはある。勘弁してくれ。あまりにもダサイ。


台風の銀座と呼ばれていた地域在住の俺。


厳密には違うらしいが。台風では必ずジジババが死ぬ。おそらく家族が止める中「畑が心配」などと理由がありつつも外に出て、風にあおられて死ぬパターンだ。


それを俺は新聞を読みながら「年寄りの冷や水もいいとこだぜ。年を考えず無理するから」と、あまり同情せずにいたが。


「今の俺、まさにそうじゃねぇか」


土曜日は、食料買い出しと決まっている。バスやモノレールが止まろうとも、スーパーが開いていれば。という考えは、恐ろしく甘かった。


少し休んで慎重に家に帰れた。パンツの中まで雨に濡れまくりであった。


⭐⭐

次の日。


「バスとモノレールが動いているぜ!」


少しは学習した? 俺。念のため歩きで移動。日曜日は、喫茶店巡りをしながら読書と決まっている。ジャンは、ルーティンをこなさないと気が済まないタイプで

台風など小さな理由でしかない。


そのはずだった。


「ドザァアアア」


盆を覆すような雨どころではない。「天の川がそのまま地上に降り注いだのではないか」という雨が降り注ぎ、そもそも傘が役に立たない。


行きたかった喫茶店に行く。店は開いていたが、困った顔をした店長が一人。二、三十人は入りそうな店に客は俺一人。かんこどりが鳴きまくっている。


客がいないので、しっかり読書して店を後にした。店長は、ものすごいいい人だった。


その後、どうしても行きたかった所へ。


親や弟の影響と、辛かった時に通うようになった宗教施設へ。


この週は、パワハラが三度の飯より好きな奴の手下との面談があった。どうしても祈りを捧げずにはいられなかった。


「ドザァアアア」


まるで、俺の気分のような雨。手下は、多分そいつが「人を殺せ」といったら平気で殺してきそうな、頭の中身が入っていないタイプ。何を企んでいるかわかったものではない。


目的地に着き、しっかり祈る。


「ドザァアアア」


雨の中、心はかなり軽くなった。


バスで帰るも、何か踏んでしまったか足が傷だらけだった。


俺も「台風の日に死ぬ年寄りにならないように」心から誓った二日間であった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ