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墨の知識

 今日の社会科見学場所は考古資料館だった。


 県内の遺跡や古墳で出土したという銅鐸や銅鏡、錆の塊状態の青銅剣や、そのレプリカなどが壁際一杯に並べられていて、生徒達は各自好きなように見て回っている。


 あたしは墨と一緒に回っているけど、正直歴史関係の説明文がさっぱりだった。


 ただ、古代の人々が使っていた道具を見るのは物珍しく存外楽しかった。


「あ、これってもしかして、この時代の戦装束かな? 結構格好良いね」


 茶色く変色した短めの胸当てらしき物をあたしが指差すと、墨が少し細めた目を向けた。

 そして、ふん、と息を吐いてからどこか懐かしむみたいな表情をする。


「……これは短甲たんこう、もしくは『みじかよろい』と呼ばれているものだ。こいつは鉄製だな。板状の物を革紐で綴じて組み上げてるんだ。かなり重いぞ」


 ただ相づちを打って欲しくて声をかけただけなのに、思いの外すらすらと答えられて驚いた。

 おかげで、あたしはぽかんと口を開けたまま、墨の顔を凝視している。


 なんでそんな詳しいの、コイツ。


「明日香? お前……何、アホづら晒してるんだ」


「いや、何はこっちの台詞よ……! 墨、アンタなんでそんな詳しいのよっ」


「なんでって、それは……」


「それは?」


 首を傾げながら言葉の続きを待っていると、墨は何か言いたげな顔をして、だけどきゅっと唇を引き結び黙り込んでしまった。


 その上、ふいっと顔を背けてしまう。


 何。

 今の。


「墨?」


「……別に。ゲームに出てきたから覚えてただけだ」


「ゲーム? 墨が? そう、なの?」


「ああ」


 普段ゲームをしている素振りなんて全く見せない癖に、墨は嘆息しながらそう答えた。


 絶対嘘だろ、と言ってやりたかったけど、だから何なのか、という気もしてあたしは結局口にはしなかった。


 だけど、何か物言いたげな墨のあの一瞬の表情が、やけに心に引っかかった。



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