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スケバン猛将伝  作者: しらべ
校内バトルロイヤル編
31/31

第三十伝 VS 佐賀県 だってそれが己のSAGAスケバン

 




 2014年、日本の研究所は蜘蛛の糸を紡ぐ蚕の品種改良に成功した。


 強くて切れにくい蜘蛛糸の性質とシルクの性質を合わせもつ新しいシルク、クモ糸シルクは鋼鉄の約20倍の切れにくさを持つといわれる。


 この時品種改良に使われた蜘蛛はオニグモという種であり、蜘蛛の中でも最も強い糸を吐くとされている。


 その強度は鉛筆ほどの太さに撚り合わせると一本でジェット機を繋ぎ留めるという。


 が、自然界には更に強靭な糸を持つ生物が存在する。


 『ミノムシ』、台風でも切れない糸を紡ぎ、その糸に生活の全てを預ける蚕の近縁目である。


 糸の強度はオニグモの約2倍、そして群馬のスケバン碓氷(うすい)真子(まこ)はそれをも凌駕する糸を出すことができる。




 湯山千歳を発見した真子は()()した後に、之保の後ろでもこっそりつけようかと思っていたところ、立ち止まる。


 「私の美少女センサーがこっちに反応している!!!」


 鼻息を荒くしながら、体育館の中へと足を踏み入れる。


 外から見た時、窓ガラスが割れているように見えていたが中にはガラス片は全く残っていなかった。


 それも当然、全て八雲にくっついて飛んで行ってしまったからである。


 「クンクン!! ん~? 誰もいない……おかしいな~」


 蛾の触覚は僅か1立方㎝中に1分子だけのフェロモンをも嗅ぎ分けるといわれている。


 体育館の中心まで歩く真子。 だが中には誰もいない。


 妙な違和感を覚えた真子は無意識の内に自身の周囲に糸を張り始める。


 (本当に誰もいないのかな~? ハッ!! まさか之保ちゃんの美少女成分が強すぎて誤検知してしまった!?)


 ニヤニヤしながら、あり得ると呟くと同時に、左後方からドンッッ!! と爆音。


 続いて張っていた糸が高速で何かに引きちぎられる感覚、咄嗟に振り向き両手を合わせ、離す。


 両手間に大量の糸を紡ぎ、高速で飛来する物を受け止める───が。


 「ッッ~~~!!!」


 その防御も空しく、物体は糸もろとも真子の顔面に直撃した。


 衝撃で吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。


 「ゴッハ!!!」


 地面に倒れこみ激痛の中、片膝だけは立たせ周囲を確認する。 


 (だッ…誰もいない!? いや違う…姿が見えていないのか!)


 次に糸で受け止めた物体を見る、が見えない。


 触ると丸い鉄のような塊だという事が分かった、大きさは拳二個分程。


 (触覚は……ある、嗅覚も…火薬みたいな臭いがする、視覚で捉えられない相手…ッてコト!?)


 再び辺りに糸を張り巡らせ、今度は耳をすます。


 「私は群馬の碓氷真子! 貴女の名前は?」


 (この砲弾を撃った時の音は聞こえてきた、恐らく聴覚では捉えられるはず)


 目すら閉じて集中すると、声が聞こえた。


 「佐賀県……(たちばな)伊万里(いまり)…なの」




 群馬県 グンマー帝国主力戦闘部隊隊長スケバン、碓氷(うすい)真子(まこ)


 VS


 佐賀県 だってそれが己のSAGAスケバン、(たちばな)伊万里(いまり)



 いざ尋常に、スケバン勝負!!




 (さ…が? ああ、佐賀県か! それにしても今の声…間違いない、絶対にかわいい!!!)


 「……い、伊万里ちゃ~ん、どうして私の前に姿を現してくれないの~?」


 じゅるりと垂れてきた涎を手の甲で拭きながらキョロキョロと辺りを見渡す。


 「……姿は別に隠してる訳じゃないの、それを置いてもお前の前には立ちたくないの」


 「ええ~そんな事言わないでよ!!」


 鼻血が止まらないのは砲弾ゆえか妄想ゆえか。


 真子は考える。


 相手は姿を消す能力を持っており、砲弾を撃つことができる。


 凶悪なコンボだが、不意打ちでこちらを倒せなかった時点でまだ勝機はある。


 (受け止めるのは諦めて、回避、若しくは受け流しで対処するしかない、そのためにも糸での事前感知は必須…)


 まずは巣の拡大が最優先と結論付け、両手で糸を伸ばし、どこから撃たれても糸が感知できるようにする。


 しかしここは体育館、巣を張るのも少々時間がかかる。 真子は辺りを見渡し、体育倉庫に目を付けた。


 伊万里よりも先に中に入ってしまえば、籠城ができる。 このままどこから狙われるか分からない状況では敗北は必至であり、先に内部に陣取って正面のバリケードを固める作戦の方が堅実だった。


 即座に判断し、駆け出す。 当然伊万里も黙ってみているわけがない。


 「…させないの」


 伊万里は右手を大砲に変え、その手を真子ではなく、倉庫の引き戸へと向けた。


 『アームストロング砲』、幕末に佐賀藩が所有していた最新の後装施条砲である。 戊辰戦争では猛威を振るい佐賀の大砲としてその名を知らしめた。


 再びドンッッ!! と轟音を鳴らし砲弾を扉に向かってぶち込む。


 真子を狙わなかった理由は距離が離れていたため、動いている人間よりも動かない的の方が狙いやすかったからである。


 威力を調整し、()だけを歪ませればそれで中に入ることは叶わなくなる。


 が、その砲弾は空中でゴンッと何かに弾かれ目標物を破壊することは叶わなかった。


 伊万里の視界にかすかに映る細い糸。 初めに伊万里が打った砲弾に糸を付けて置き、伊万里が手を大砲に変えたのを嗅覚で感じ取り、その場で一回転。


 ハンマー投げの要領で遠心力を生み出し、己の当て勘だけで不可視の砲弾にぶち当てたのだった。


 「馬鹿な…なの」


 若干人差し指を伸ばしながらドヤ顔をする真子。 そしてそのまま体育倉庫の中へと入り引き戸を閉める。


 扉が閉められた以上、いくら透明とは言え伊万里が中に入ってくるタイミングはバレてしまう。


 しかし、伊万里動じず。


 冷静に扉の中央に向かって最大威力で大砲を打ち込む。


 轟音と共にひしゃげる扉、小柄な伊万里ならばブレイクダンスをしながらでも難なく通れる隙間が生まれた。


 念の為暫く経ってから足音を立てないように扉から中を覗き込む、同時に空気が流れる感覚。


 見ると奥の壁、上部に位置する窓ガラスが開いていた。


 (逃げたの…?)


 伊万里の頭に浮かぶ、真子が逃げた可能性と、この倉庫にまだ潜伏している可能性。 そして思い出す、先の出来事。


 長崎のスケバン、湯山千歳と徳島のスケバン、宇津之保が闘っていた時はずっと二階のギャラリーの手すりに捕まって八雲に引っ張られるのを耐えていた。


 そして次に真子がドローに持ち込んだ一戦、その一部始終を見ていた伊万里は、真子ならば逃げた可能性が高いと思った。


 振り返って別のスケバンを探そうとした時、視界の端──跳び箱の下の僅かな隙間にローファーが見えた。


 弾かれたように大砲を跳び箱へと向けるが、打つのを寸前で我慢する。


 あの碓氷真子がこんな単純でバレるような事をするわけがない、と。 案の定目を凝らすと中には片方のローファーが置かれているだけだった。


 (これは…伊万里の場所を割り出す為の罠なの…)


 つまり真子は伊万里が大砲を打った瞬間に、その居場所を把握するつもりだったという事である。


 今現在、両者ともに相手の位置が分かっていない状態、しかし、完全に姿が見えない以上伊万里に分がある。


 慎重に薄暗い倉庫の中を見渡す、真子はいない。


 勿論天井も見上げる、真子はいない。


 伊万里は未だ倉庫の中に足を踏み入れていない、真子の糸の能力が伊万里を躊躇させていた。


 暫くの膠着状態の後、突然、伊万里の背中に強烈な衝撃。


 「──カッ……ハァ!!」


 前のめりに吹き飛ばされ、目の前のマットに頭からダイブする。


 起き上がろうとするもその両腕は糸によってすでに拘束されていた。


 咳き込み、歯を食いしばりながら身体を仰向けにすると、丁度真子が上からのしかかってきた。


 「フヒッ…も、もう逃げられないよォ伊万里ちゃん!!」


 「ど…どうやって後ろから……」


 そこまで言って伊万里は、真子が倉庫の窓から抜け出し、音を立てずに外の割れた窓から背後に回ってきたのだと確信した。


 ローファーを置いたのも伊万里を扉の近くに縛り付けるためのブラフだった。


 二階の窓から糸を使って侵入した真子は更に糸を延ばし天井まで到達すると、扉の中心に向かってターザンの様に飛来、 伊万里が倉庫の中に入らず扉の前にとどまっているかどうかは賭けだったが、その作戦は見事成功した。


 馬乗りになり、両手を擦り合わせてからワキワキさせ始める真子。


 「ゆ…油断したの」


 「いやそんな事ないよ! 伊万里ちゃんは相手が悪かっただけだよ!!」


 身動き一つ取れない伊万里は、真子を見てニヤッと笑った。


 「違うの、油断したのは…お前の方なの」


 ガパッと口を大きく開ける伊万里、中には砲弾が入っていた。



 爆音、そして砲弾が真子の顔面にめり込───まなかった。


 真子の鼻先で不自然に止まる砲弾、目を丸くする伊万里。


 否、止まっているのではない、少しずつ真子に近付いている。


 ()()に気付いた瞬間、伊万里の顔色が変わった。


 糸──真子の両手間に紡がれた糸が砲弾を受け止めていた。


 「今度は千切れないように糸を頑丈にしておいたんだ、ジェット機だって止めれるくらいね」


 「い、嫌なのッ!」


 伊万里は逃げられない。


 張った糸に物体が当たると、その弾性エネルギーによって物体は弾かれる。


 ズゴンッ!! という鈍い音と共に、自分が放った砲弾によって伊万里は撃沈した。


 「結局、伊万里ちゃんの顔は分からずじまいか…いや! 私なら心眼で視れるはず!! うをおおおおおおお!!!!」




 スケバン勝負これにて決着ッ!!


 勝者、碓氷真子 !!



 決まり手、スリングショット




スケバン図鑑㉔


なまえ:橘伊万里


属性:だってそれが己のSAGAスケバン


能力:両手足、また口を大砲に変えることができる、但し連射には時間を要する。


備考:ワラスボを飼っている。

   影が薄すぎて姿が見えない、スケバンとしての能力ではなく伊万里本人の性である。

   インビシブルゴリラ現象と同様、もの凄く集中すれば見えるようになるかもしれない


ご当地:アームストロング砲、さがしてください佐賀県


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