天才(自称)独裁者様のお蔭で男尊女卑の国で女性の立場が向上しました
何故! 人民や部下だけで無く妹まで僕のやり方に反対するんだ。
この国は天才の僕のお蔭で国家として成り立っているんだぞ。
僕のやり方に反対する奴等なんでいらない、敵対国の奴等と共に抹殺してやる。
僕は執務室がある建物の地下数百メートルに造られた核シェルターに行き、ICBMの発射ボタンを押した。
真っ暗な闇を切り裂き眩い光が核シェルター内を照らす。
扉の暗証番号を解き核シェルター内に侵入した完全防備の華奢な体格の兵士が持つ電灯の光が、核シェルター内に転がるミイラを照らしだした。
「やっぱり此処にいたのね。
お姉さまに報告しましょう」
「前独裁者様の遺体はどうします?」
「このまま捨て置いて良いって指示をお姉さまから受けてるから、捨て置いて」
「分かりました。
でも此奴なんで此処に1人で入り込んだのでしょう?」
「此処が機能してないなんて自称天才の独裁者様は理解して無かったみたいよ。
人民が次々と餓死しているのに、玩具感覚でICBMの発射実験を繰り返したため、人民を飢えから救おうとお姉さまが此処に備蓄されていた食糧を分け与えていたの。
それを知らずに此処に入りICBMの発射ボタンを押したって訳」
「天才と基地外は紙一重って聞きますが、自称天才は紙一重の方が多いですからね」
「その通りよ。
ICBMは既の所でお姉様が食い止めて大事にはならなかったけど。
だけど、排泄した後のお尻拭きも使用人任せだった奴が、何にも出来ないのに良く1人で此処に籠ろうとしたもんだわ」
「良いじゃないですか。
そのお蔭でセクハラは当たり前、レイプが日常茶飯事だった私たち女性の立場が向上したんですから」
「そうね。
此奴のあとを継いだお姉さまが大変だったけどそのお蔭で、男尊女卑だった此の国で女性の立場が向上して今では女性を見下す男がいなくなったのだから喜ぶべきよね。
さ、こんな辛気臭い場所からサッサと出ましょう」
兵士たちはミイラとなった前独裁者の遺体の前に姿勢を正して整列。
指揮官が遺体に向けて言葉を投げかけてから号令する。
「あなたがメチャクチャな国家運営を行ったお蔭で、お姉様の開放政策が敵対国にも受け入れられ、今我が国はあなたの頃よりは遥かに裕福になりました。
此の核シェルターは閉鎖されあなた様の墓所となります。
永遠に此処で1人寂しくお過ごしください。
気おつけ! 敬礼!」
号令一下、前独裁者の遺体の前に整列していた兵士たちは遺体に向けて一斉に敬礼した。