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8-(2)

「ブルースさん。先日、王都で魔導具の爆発事故が起こったのはご存知ですか?」

 と問うリューディアの口調は優しい。エメレンスは先ほどから黙って彼女の様子を伺っている。彼女に何かあったら助けようとは思っているものの、彼女がそれを望まぬ限り、でしゃばることはやめようとも思っていた。リューディアがどのような女性になったのかを、余すことなく見てみたい、という思いもある。


「いえ。知りません……」


「そうですか。実は先日、王都で魔導具の爆発事故が起こりました。その原因を、魔導士団たちが調べております」


「もしかして、昨日まで魔導士団たちの人が来ていたのは……」


「はい。魔導具爆発事故の原因を探るためです」


「なぜ、この採掘現場に?」


「爆発事故の原因が、魔導具の(コア)として使用されている魔宝石にあるとされているからです」


「え。もしかして、ここの魔宝石が疑われているのですか?」


「そうです」

 リューディアが力強く頷くと、ブルースの顔はみるみるうちに青くなっていく。

「ですが、どうやら魔導具に使用されていたのは、ここのクズ石だったのです」


「え?」


「先ほども言いましたが、歪んでいるクズ石は魔力の制御ができません。ですから、魔導具に用いると、緻密な魔力制御を行うことができず、魔導回路が暴走します。それによって爆発事故が引き起こされました。ですが、世間はそう思っておりません。シャルコで採れた魔宝石を使った魔導具が爆発事故を起こした、と、そう思っております」

 半分はシオドリックとヘイデンから聞いたこと。もう半分は、リューディアのでっち上げ。これを聞いたブルースがどのような行動を起こすのか。


「そんなことになったら、オレたちの仕事が……」

 魔導具に使われていた魔宝石が爆発事故の原因で、その魔宝石がシャルコの採掘現場で採れたものであると判明したなら、誰もここの魔宝石を使いたいとは思わないだろう。いくらまだここで魔宝石が採れるとしても、危険性をはらんだ魔宝石ということで、買い手がつかなくなる。そうなってしまえば、ここで魔宝石を掘る意味がなくなり、あっけなく閉山へと追い込まれてしまうことが容易に想像できる。


「はい。そうなれば、ここは閉山となります」

 ガシャンと何かが零れる音がしたのは、ブルースが立ち上がって鞄を蹴ってしまったからだ。鞄の中に入っていたクズ石がその衝撃で散らばった。


「閉山……? 違う。オレは……。ここをもっとデカくしてやるって言われて、それで……」


 リューディアはブルースの呟きを聞き逃さなかった。

「言われてって、どなたから言われたのですか?」


「違う。オレは、ここを閉山にしたいわけじゃない」

 立ち上がったブルースは「退け」と乱暴にリューディアの身体を手で払った。不意に身体を押されたリューディアはその場に倒れ込む。その勢いで眼鏡は飛んでいき、その場から逃げ出そうとしたブルースがそれを踏みつける。

 ガシャッ。

「お待ちなさい」

 それでもリューディアは怯まず、ブルースを追いかけようとするのだが、すぐさま彼に追いついた男がいた。エメレンスである。


「ブルース。逃げることも隠れることも許さないよ。君が何をやったのか、きちっと説明してもらおう」

 何も見えないのにブルースの両手が拘束されているように見える。

「ディア、大丈夫か?」


「あ、はい。大丈夫です」

 エメレンスは今すぐリューディアの元に駆け寄って、彼女を抱き起こしたかった。それができないのは、ブルースを拘束しているから。魔法も使って拘束しているが、両手も使ってしっかりと彼が逃げないようにと押さえ込んでいる。だから、ブルースから離れることができないのだ。


「ディア。大丈夫なら、ヘイデンたちを呼んできて。ボクはブルースが逃げないように、ここで見張っているから。急いで」


「はい……」

 立ち上がったリューディアを見て、エメレンスは息を飲んだ。それはブルースも同じだ。リューディアの顔から、眼鏡が外れている。眼鏡のない素顔のリューディア。

 だが「急いで」とエメレンスから言われている彼女は、眼鏡が無いことに気付いていないのか。


「レン。お兄さまを呼んでまいります」

 リューディアは先ほどエメレンスが使ったように、空間転移魔法を使った。やり方は、エメレンスが使ったのを見て覚えた。ぐらりと空間が歪み、気付けば事務所の中へ通じる扉の前。

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