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7-(5)

 そしてもちろん、そのような行動に出たエリックに、エメレンスも焦っていた。だから、こうなることを恐れて、彼女には毎年眼鏡を贈っていたというのに。それで今まではうまくいっていたというのに。

 助けを求めるかのように、リューディアはエメレンスを見上げた。エメレンスはごくっと大きく喉を鳴らして唾を飲み込む。


「エリック、悪いが()()()()()()だ」

エメレンスはすっとリューディアの腰を抱き寄せる。それに驚いているのはもちろんリューディアで、彼女の顔は「どういうこと?」という困惑の色で溢れている。


「あ、やっぱり。お二人はお付き合いなさっていたんですか……」

 目の前に現実を突き付けられたエリックは、しゅんと肩を落とす。それでもエメレンスの身体は少し震えていた。彼にリューディアを盗られないように、という思いでの行動だったのだが、彼女に引かれていないだろうか、と。

「では、お邪魔虫はさっさと撤退します」

 エリックは少し寂しそうに、事務所の方へと向かって早足で歩きだした。


 リューディアとエメレンスは二人、その場に残される。

 気まずい、というのがエメレンスの気持ち。あの場を誤魔化すために、エリックの前だからこそあんなことを口にしてしまった。さて、リューディアはどう思っているのか。


「あの、レン……」

 思わずエメレンスは身体を大きく震わせてしまった。これから死の宣告でも与えられるのではないか、というほどに。


「あの、なぜエリックは一人で先に行ってしまわれたのでしょうか? それに、お付き合いってどういう意味でしょうか?」

 目をくりくりと大きく広げて、首を傾げているリューディアを表す言葉は、きょとん、だ。間違いなく彼女は、きょとんとしている。エリックに問われて、あれだけ驚いていたにも関わらず、今はきょとんとしている。

「わたくしとレンは、そのお付き合いをしていたのでしょうか……。その……、わたくしが気付かないだけだったのでしょうか……」

 気付いていたら、先ほどのエリックの問いにはっきりと「はい」と答えられたというのに。変に悩まなくて済んだというのに。


「いや、すまない。あれは、エリックを誤魔化すための、その場のでっちあげというか……」


「つまり、わたくしとレンがお付き合いをしているのは、嘘であるということですね?」


「え、とまあ。今までは嘘だったかもしれないが、できればこれから、それを本当にしたい、というか……」

 エメレンスも自分で何を口走っているのかがわからなかった。だが、エリックを見ているともう不安しかない。きっと彼女はこれからも、こうやって他の男に口説かれるのだろう、と。


「ディア、ちょっとこっちに来てくれないか?」

 この場所は目立つ。事務所に向かう道のど真ん中。まだみんなが出勤するには早い時間ではあるが、それでもいつ他の人とすれ違うかはわからない。

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