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次の日の朝。エメレンスは意を決しリューディアを迎えにいった。彼女はいつもイルメリとヘイデンと共に、現場まで歩いてくる。
「あら、エメレンス殿下。ナイスタイミング。助かったわ」
イルメリが出てきた。
「ヘイデンは先に行ってしまったし、実は今、下の子の具合が悪くて。それで私は後から行こうかなと思っていたところだったの。でも、ディア一人で現場まで歩かせるのは不安で。ほら、事務所荒らしの件もあったでしょう? いくら魔法が使えるといっても、少し、ぼんやりとしているような子だから」
この話を聞いたとき、エメレンスは思い切って行動に移してよかったと思った。
「ディア。エメレンス様がいらしてるわよ。早く準備していきなさい」
「あ、はい……」
部屋の奥からリューディアの声が聞こえてきたのだが、それが慌てた様子にも聞きとれた。普段とは違う彼女を見ることができ、得した気分になったのは言うまでもない。
バタバタと焦った様子で姿を現したリューディアは、いつも通りの彼女だった。しかし、普段の彼女と違うところが一つだけあって、それは彼女の目が点になっていたということ。
「レン……。今日は、どうされたのですか?」
「うん。ほら、事務所荒らしの件もあっただろう? だから、危ないと思って君を迎えにきたんだ」
「ディア。私はヴィルの様子をみてから事務所へ行くから、先に行ってなさい。せっかくエメレンス殿下が迎えに来て下さったのだから」
どうやら、イルメリはエメレンスの味方のようだ、と彼は感じ取った。
「あ、はい。行ってまいります」
いってらっしゃいと、イルメリは手を振って見送った。
「ヘイデンは、もう、事務所の方に行ってるの?」
歩きながらエメレンスは尋ねた。
「あ、はい。事務所荒らしの件もありますし、それに例の爆発事故。魔宝石が原因で無かったといっても、クズ石が使われたことによる見解資料をまとめなければならないようで……。それに、部隊長としての仕事もあるみたいで。王都にも行かなきゃいけないようなことを口にしていました。だから、余計に忙しいのだと思います」
「そうか。ここの人手不足も深刻なんだね」
「ですが。例の崩落事故で怪我をされて休んでいた方たちも、少しずつ回復されているようで。もう少ししたら復帰できそうだと、お兄さまが言っておりました」
「そうか、それは良かった」
そうなったらエメレンスは王都へと戻ることになるだろう。だが、リューディアはどうするのか。
事務所の近くまで来ると、ちょうどエリックも出勤したところで二人に気付けば「おはようございます」と駆け寄ってきた。
「朝からリディアさんにお会いできるなんて、今日はついてるかも」
「おはようございます」
「おはよう」
リューディアはいつもと同じように、エメレンスは不機嫌そうにエリックに挨拶を返す。
「ところで、リディアさん。リディアさんは、レンさんとお付き合いなさっているんですか?」
「え?」
「ほら。お二人は仲が良さそうですし。もし、そうでなければリディアさんにお付き合いを申し込もうかな、と思っていたので」
あははは、と底抜けに明るい声で笑うエリックには、遠慮という言葉が存在しないのだろう。むしろ、あわよくばという気持ちがあるのか。
「えっ」
リューディアは究極の選択を突き付けられたような気分だった。エメレンスと付き合っているか。答えはいないになるはずなのだが、そう答えてしまえばこのエリックから交際を申し込まれる、という流れになる。
「えぇっ」
リューディアは返答の仕方に困って、「え」という言葉しか出てこなかった。




