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 リンゼイ王国。自然が豊かで長閑な国である。人口は五十万人程度。隣国との国境にあるボワヴァン山脈には、魔導具製作に欠かせない魔宝石(まほうせき)の原石が採掘できる鉱山がある。

 魔宝石の採掘には魔導士の力が必要であるため、リンゼイ王国にはこの採掘を担当する魔導士たちが、魔導士団の中に存在する。それくらい、魔宝石の採掘というのはこの国にとって重要なこと。

 そして、その魔法と魔宝石によって、この国の人々には豊かな生活がもたらされていた。


 魔導士たちの中でも代々優秀な魔導士を輩出するコンラット公爵家。リンゼイ王国の三大魔法公爵家とも呼ばれており、コンラット家の血筋は優秀な魔導士、もしくは魔導具師となる者が多い。現当主のコンラット公爵も、魔導士団長という役を担っている。

 だが、三大魔法公爵家にも悩みはあった。なぜか、この三大侯爵家。男児しか生まれないのである。世継ぎには困らないのかもしれないが、やはり欲を言えば女児も育ててみたいというのが親心。魔力が強いが故に、男児しか生まれないのだろう、とも言われていた。

 だからコンラット公爵も、夫人が四人目の子を授かった時に、男の子だろうと思って男児のものしか準備をしていなかった。

 赤ん坊の元気な産声が聞こえたと同時に、立ち会った侍女頭が勢いよくコンラット公爵を呼びに来た。

「だ、だ、だ、だ、だ……、旦那様……」

 この侍女頭は公爵よりも年上であったため、とうとう壊れてしまったのかと思った。だが、そうではなかった。彼女は激しく動揺していたのだ。

「お、お、お、お、お、女の子です」


 その一言が、この侍女頭を壊れるくらい動揺させる理由として充分なものであった。

 公爵は三人の息子たちと呑気にソファに腰かけて、四人目の子の誕生を今か今かと待っていたのに、呑気に待っていた自分に後悔をした。


「サフィーナ」

 公爵は愛する妻の名を呼ぶ。

「お母さま」

「おかーさまー」

「おたーしゃまー」

 三人の息子たちも母を呼ぶ。


「でかしたぞ」

 騒々しく部屋に入ってきた男四人に、公爵夫人は優しく笑顔を向ける。

「静かにね。赤ちゃんが驚いてしまうから」

 と言い終えぬうちに、ふぇっふぇっという小動物のような泣き声が聞こえてきた。


「お、お、お、お、女の子なのか?」


 公爵も、先ほどの侍女と同じように激しく動揺していた。


「はい……」

 サフィーナは嬉しそうにニッコリと微笑む。やはり、どこか女児を望むという欲があったのだろう。人間、幸せになると、今とは違う環境を望む傾向がある。元気であれば男女どちらでもいいと思いながら、男児を三人育ててきた彼女は、女児に憧れもあったのだろう。

 生まれたての娘は、真っ白な産着を着せられていた。


「その、確認をしてもいいだろうか?」

 生まれたての赤ん坊は、顔を見ただけでは性別がわからない。


「何をですか?」

 サフィーナはこの夫が何を言い出したのだろうと思いながら、そう尋ねていた。


「その、女の子とであることを……」

 この赤ん坊が女の子であることを確認する方法は、今のところ一つしか思い当たらない。


「そうですね。おしめを替えるときに、確認してくださいな」

 サフィーナがニッコリと笑えば、公爵もそうだな、と呟く。

「それよりもあなた。抱いてあげてください」


「いいのか? 女の子なんだぞ?」


「はい、ですから、あなたの娘です」


 娘、と呟けば、公爵も赤ん坊に向かって手を伸ばす。すぐさま産婆が駆け寄って、赤ん坊を抱き上げると公爵の腕の中にその子をすっぽりとおさめた。


「お父さま、僕にも見せてください」

「ボクもー」

「ぼくもー」


 三人の兄たちが背伸びをして公爵の腕の中の赤ん坊を覗き込もうとしたため、彼は息子たちのために身をかがめた。

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