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「おい、どうした。何が起こった」
そこへ騒ぎを聞きつけたヘイデンとイルメリも駆けつけた。
「お兄さま。また、崩落が起こりました。どうやら以前の担当者がやみくもに掘り進めた結果だと思われます。わたくしたちはこれから、このような危険な個所を把握して、対策を行う必要があると思うのですが」
「あ、ああ。そうだな。それよりも、怪我は無いのか?」
「はい。採掘師のみなさんに怪我はありません」
「それもこれもリディア嬢のおかげだ、隊長さん」
ガイルがリューディアのことを嬢ちゃんではなく、リディアという名で呼んだことにヘイデンも気付いた。
「そうか。怪我が無ければ何よりだ。そちらの現場は危険だから、今日は西側五号区の現場の採掘を頼みたい」
ヘイデンが口にしたこちらの現場とは、先ほどリューディアが指示した場所と同じ場所。
「わかった。隊長さんの命令なら仕方ないな。お前たち、今日は西側五号区の採掘だ」
ガイルが言えば、他の採掘師たちはその言葉に従う。それだけ採掘師長の言葉には重みがある。別な現場へと移動する採掘師たちを見送ってから、ヘイデンは崩落した場所の確認を始める。イルメリも同様に。
「ディア。君はここが危険であると、事前にわかったのか?」
「え、あ、はい。なんとなく。お兄さまに見せていただいたこの坑道の地図を確認しまして、それから今までの採掘の状況と、この地層。そこから、そろそろここが崩れそうだと思っておりました。今日は、採掘師たちがこちらに来てしまったので、いつも以上に負荷がかかって崩れてしまったものと思われます」
「なるほど」
ヘイデンは腕を組んで崩れた箇所を見上げる。
「やはり、お前には採鉱の才能があるよ。お前自身に怪我はなかったか?」
「あ、はい。フードもかぶっておりましたし、眼鏡もかけておりましたから」
砂埃が飛んできたときに、この眼鏡がその埃が目に入るのを防いでくれた。眼鏡はリューディアの顔を隠すほかに、このように危険な物から目を守ってくれる効果もあったようだ。さらに今回はレンズが大きく、彼女の顔半分を隠してくれるようなデザイン。それがなおさら功を奏したようだ。この眼鏡をプレゼントしてくれたエメレンスには感謝しかない。と、同時に何かしら御礼を、という気持ちも沸いてくるのが不思議だった。
「どうかしたのか、ディア」
ヘイデンの言葉でふと我に返る。
「いいえ。それよりもお兄さま、まだこの坑道には危険な個所がたくさんあるのです。恐らく、前任者が何も考えず、採掘量を優先させて掘った結果であると思っております。ですから、わたくしはこの坑道の危険な個所を確認し、採掘師たちのスケジュールに影響が出ないように、危険個所を整備していきたいと思っているのですが」
「そうだな。それは俺たち採鉱を担当する者たちの仕事だな。メリー、ディアとこの坑道の危険個所、そうだな、すぐに崩落に繋がりそうな場所の確認をお願いしたい。いつもは、採掘している箇所の確認しかしていなかったからな。あのように、採掘量を気にする採掘師たちにとっては、他の採掘現場の方が魅力的に見える場合もある。だからこそ、俺たちがどの現場でどれくらいの採掘ができるのかということも事前に見積もる必要があるのだが。そうだな、探鉱の者にあらためて採掘量の予測量を出してもらおう」
そこで、ヘイデンは「おい、エリック」と部下の名を呼んだ。どうやら彼も騒ぎを聞きつけてこちらにきてくれたようだ。
「悪いが、君は探鉱のレーネに連絡して、採掘量の再調査をするように言ってくれ。今までの採掘量の予想値と実際の採掘量の比較データも欲しい」
「了解です」
エリックは手をあげて返事をすると、坑道の外にある事務所の方へと戻っていく。その事務所内では探鉱と選鉱に携わっている魔導士たちが、仕事をしている。
「では、悪いがメリーとディア。東側までの現場のこの坑道の安全確認を頼みたい」
「はい」
女性二人組は明るく返事をすると顔を見合わせた。




