第一話(後編)
——ゲームセンターにて——
主人公(ここ、なかなかの騒音だな。空港か?)
勇気「おー。イニディー新しくなってるじゃん! やろうぜ!」
主人公(これが宇宙船の操縦席か?)
…主人公は座席に座った。
主人公「ん? 起動しないな。この機械壊れているんじゃないか?」
勇気「100円入れないと動かないぞ。ってか、お前イニディーやったことないの? もしかして湾岸派?」
主人公「申し訳ないが、二つとも経験したことはない。操縦方法を教えてもらえると助かる。」
勇気「おう! 取り敢えず100円を入れて...。ってお前、病院からそのまま来てるってことは、財布もないよな。」
…勇気は財布から100円玉を二枚取り出した。
勇気「ほい。一枚やるよ。」
…主人公は100円玉を受け取った。
主人公「銅とニッケルの合金を円形にして、何か意味があるのか?」
勇気「え? 硬貨のこと? んー考えたこともなかったなぁ。確かに、四角形とか五角形でもいいよな。」
勇気「よし、操作方法はなぁ。こんな感じで...。」
…主人公はレースゲームの操作方法を学んだ。
主人公「なるほど。わかった。早速やってみよう。」
勇気「俺に勝ったらジュース奢ってやるよ。掟破りの地元走り...見せてやるぜ。」
…主人公と勇気は夢中になってレースゲームをプレイした。
勇気「うわっ。あっぶねー。ギリギリ勝ったぜ!」
主人公「むう...。もう少しだったが。しかし、なかなか面白い技術だ。私の惑星ではこのように娯楽に特化している機械は一切なかった。」
勇気「海斗...。私の惑星って、いったいいつまでそのキャラやってるんだ?」
主人公「勇気。このゲームという機械、良いアイデアだな。是非他の物も遊んでみたい。」
勇気「え? あ、ああ。まあいいけど...。(あれ、こいつプレステ持ってなかったっけ。)」
勇気「じゃあ、格ゲーでもやるかーって...。」
…勇気は格闘ゲームの方を見た。
格ゲーの兄さん「サシでやったら、俺とあんたどっちが勝つ?」
格ゲーの爺さん「ふん...。そりゃ十中八九ワシじゃろ。」
…格闘ゲーム周辺には、近寄りがたいオーラが充満していた。
勇気「格ゲーは...空いてないな。(あの兄さんと爺さん、しょっちゅういるんだよな。)」
勇気「じゃあ、パチンコは...。」
…勇気はパチンコ台の方を見た。
パチンコのオッサン1「夢だろ...これ...夢に決まってる...!」
パチンコのオッサン2「ところがどっこい...夢じゃありません...! 現実です! これが現実...!」
…パチンコ台では、オッサン2人が沼っていた。
勇気「あれは当分空かないな...。」
勇気「無難にUFOキャッチャーだな。」
…勇気と主人公は移動した。
カップル女「あー惜しい! もう少しだったのにぃ。直くん! もう一回!」
カップル男「ゆ、唯ちゃん...。あの人形さんをとるためだけに5000円も使っちゃったよ...。この先とれる保証もないし、もう帰ろ——」
カップル女「うえーん。直くんお願いだよー。もし、とれたら...ごほーびあげるから(はぁと)。」
カップル男「何っ! これは...とるしかない! だが、この直くん、実際問題とれるかどうかわからない。あ、そこの君たち!」
勇気「え? なんでしょうか?」
…勇気と主人公はカップル男に呼び止められた。
カップル男「頼む...。僕の代わりに、あのお人形さんをとってほしい...! これは男をかけた戦いなんだが、ちょっと怪我しちゃってな...。」
主人公「うん? 特に怪我は見当たらないが。」
カップル男「いや、これは心の怪我だ! 外側からだと決して見ることはできない。ほ、ほら...何だっけ? 心身二元...忘れたけど、僕はそれを信じているから、5000円を溶かしてしまったショックによって肉体ではなく精神が傷ついてしまったんだ。」
カップル男「と、とにかく頼む! 一生のお願い!」
勇気「そ、そうですか。じゃあ...とれるかわかりませんけど、やってみますね。」
…勇気はUFOキャッチャーをプレイした。
勇気「あー! もう少しなんだけどなぁ。」
カップル男「やはりだめか...。」
主人公「あの物体が欲しいのか?」
勇気「そうだけど、なんか無理そうなんだよな。アーム弱すぎるし...。」
カップル男「諦めないでくれ! まだだ...まだ舞える。」
主人公「わかった。」
ボドッ
…取り出し口から人形が出てきた。
主人公「これでいいか?」
…主人公はカップル男に人形を手渡した。
勇気「すげぇ...。どうやったんだ?」
カップル男「に、人形が勝手に動いた...? それも、自ら穴に落ちるように...。馬鹿な! そんなこと力学的にありえ——」
カップル女「ええ、すごーい! あなた、直くんの10倍カッコイイわ! この唯ちゃんと付き合って(はあと)。」
…一連の流れを見守っていたカップル女が、主人公に駆け寄ってきた。
カップル男「そ、そんな...。僕は君のことをこんなに愛しているのに...。」
ガクン
…カップル男は膝から崩れ落ちた。
カップル女「噓よ! 直くん! 唯ちゃんはあなたのこと、この世界で誰よりも愛しているわ(はぁと)。」
…カップル男は一瞬で立ち上がった。
カップル男「いや、直くんは唯ちゃんのこと、その100倍は愛しているよ(はぁと)。」
カップル女「えー。じゃあ、唯ちゃんは直くんの1000倍...いや、那由他、不可思議、無量大数ってくらい愛しているわ(はぁと)。」
カップル男「直くんは...不可説不可説転ってくらいかな...。」
勇気「もはや仏のような慈愛だな...。」
勇気「まあ、一件落着ってことで! 行こうぜ!」
主人公「ああ。」
…主人公と勇気はゲームセンターで遊び尽くした。
——家に帰る道中にて——
主人公「勇気! レースゲームもいいが、音ゲーやマージャンも中々よかったぞ!」
勇気「あーまじで? どのゲームが一番良かった?」
主人公「私はやっぱり、あのチューニズ——」
…2人はゲームについて、熱く語り合った。
勇気(海斗、あまりゲームセンターに行ったことなかったんだな。凄く楽しかったみたいだ。)
勇気「あ、ちょっとそこの自販機で飲み物買ってって良い?」
…勇気は自販機でジュースを二本買った。
勇気「ほい。これお前の分。まあ、レースゲームは俺が勝ったけどさ。でもお前惜しかったし。」
…主人公はジュースを受け取った。
主人公「これは?」
海斗「あー、ジュースあまり飲まないんだっけ? これはコーラだよ。この炭酸がめっちゃ効くんだ。」
主人公「なるほど...。ああ、確かに美味いな。それと、脳も少し活性化した気がする。」
海斗「だろー? あ、今日だけで2000円も飛んじゃった...。」
…数分後
勇気「お前の家、この辺だよなー?」
主人公「ああ。梨央と里恵の気配を感じるから、ここで間違いない。」
勇気「お、おう。じゃあ、俺の家はあっちだから。また遊ぼうな!」
…勇気は家に帰った。
——我が家にて——
ガチャッ
梨央「あ! 海斗。おかえり~。」
里恵「あんた、ただいまくらい言いなさいよ。」
主人公「た、ただいま...。」
里恵「よろしい。」
梨央「じゃあ早速、晩御飯食べましょー!」
…一同はそれぞれ席についた。
梨央「じゃ〜ん。シチューです!」
里恵「おいしそ〜!」
主人公「良い匂いだ。食欲を唆られる。」
梨央&里恵「いただきまーす。」
主人公「いただきます...。」
…主人公はシチューを食べた。
主人公(...! 何だこれは? 口に入れた瞬間、生命力の上昇を実感した。これなら、念動力を再び使うこともできる。やはり、ニンゲンは凄まじい回復能力を有しているな。)
梨央「どう? 美味しい?」
主人公「ああ。これなら直ぐに元の体力に戻りそうだ。」
里恵「いや、どういう感想なんだそれは。(アスリートかよ。)」
——食後——
主人公「ふあ〜。」
主人公(食欲を満たしたら、急に眠くなって来た。だが、ロールにも眠るという行為はあるため、これは慣れ親しんだ欲求だ。)
里恵「海斗っ! 眠る前に梨央ちゃんを家まで送りにいくよ!」
梨央「あ、大丈夫ですよ! 私の家近いので。」
里恵「いいからいいから! ほら、海斗も行く気満々!」
海斗「...。」
——梨央の家までの道中にて——
梨央「病み上がりの2人に来てもらっちゃって...。何だか申し訳ないです。」
里恵「いやいや、今日は梨央ちゃんに色々助けてもらったから。これくらいさせて。」
主人公「私たちの介抱から食事まで、今日はとても世話になった。」
里恵「あんた、なんでそんな上から目線なのよ。」
…数分後、梨央の家に到着した。
梨央「あ、送っていただいてありがとうございました。」
里恵「いえいえ。シチュー美味しかったわ。また遊びに来てね。」
主人公「梨央。」
梨央「ん? どうしたの?」
主人公「ありがとう。」
梨央「...っ! ど、どういたしまして! じゃあ、また明日ね。おやすみなさい。」
——自分の部屋にて——
主人公(梨央にありがとうと言った時、心臓の色が桃色に変わった。里恵が言った時はあまり色の変化は感じられなかったのに。この違いは何だ?)
主人公(とにかく、無事にt9に着いたことを惑星長に報告するか。)
ウィーン...
…通信機を起動した。
主人公「ooo. (聞こえますか?)」
???「o-oo-n3367. (おん? あ、3367じゃねーか。アンタ、生きてたんだな!)」
主人公「oo. (お前は? 私は惑星長とのテレパシーを試みたはずなんだがな。)」
???「o. (俺だよ俺。テレポーターの整備士。惑星長は今お取込み中の様だから、俺が代わりに出たのさ。いやあ、アンタが無事で何よりだぜ。それにしても、よく生きてたな。)」
主人公「oo. (あの整備士か...。それよりもお前、どうやら私の災難を知っているようだな。)」
整備士「o. (まあな。なんせ、引力反数を設定し忘れていたからな。超高密度の天体に飲み込まれてもおかしくなかったんだぜ。生きてるだけで不思議なくらいだ。)」
主人公「oo.(なるほどな。あの闇の空間はそれか。しかし、私の身体に異変が生じたのは納得できないな。)」
整備士「o. (あ? 闇の空間? アンタ、もしかして飲み込まれたのか?)」
主人公「o-oo. (ああ、そうだ。だが、何故か私はあそこから脱出できた。そして、その代償か解らないが、身体がニンゲンと同化してしまったのだ。)」
整備士「oo-t9. (ニンゲンって、t9の生命体だよな。それと同化って...マジかよ。いったいどうなってんだ...。ホワイトホールの影響か何かかもしれんが...。まあでも、ニンゲンにも飲み込む穴があれば、吐き出す穴もあるんだろ?)」
主人公「o-oo. (意外と詳しいんだな...。確かに穴には役割がある。摂取と排泄...その行為の共通点は、何故か微量の快感があるというものだ。周期も大体はわかる。しかし解せないのは、ニンゲンの前で摂取を行っても、特に何も反応を示さないのだが、排泄しようとすると敵意を向けられる。話を聞いてみると、どうやら排泄の方は特定の位置でしないといけないっぽいのだが、それが不便極まりない。)」
整備士「o-t9. (ははっ、なんだそりゃ。やっぱり、t9の生物は知能が低いな。奴らが無駄なことをしているうちは、俺らロールを超えるってことはなさそうだ。まあ、また連絡してくれ。アンタの検討を祈っているぜ。)」
主人公「o. (ああ、わかった。)」
…通信を終えた。
主人公(まあ、惑星長への連絡は睡眠後でも良いか。よし、とりあえず...寝る。)
…寝床で目を瞑った数分後、主人公はいびきを発した。
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…書いてて、あ、最近ゲーセン行ってないなって思いました。それだけです。はい。