第一話(前編)
——惑星長の部屋にて——
主人公「t9-oooo.(惑星t9の技術力が、ここ数百年で急速に成長しています。この調子だと、あとたったの数千年程で彼らは我々の技術力を上回る見込みです。)」
惑星長「oooo-t9.(マジ...? 太陽系に突如現れたあのt9が? ついこの前観測したときは生命すら誕生していなかったのに?)」
主人公「ooo-t9p-oo.(惑星長、マジです。また、近頃のt9に住む生命体は、宇宙に対する関心も高まってきたようです。最近では、我らの偵察衛星が発見されてしまいました。)」
惑星長「oo-o.(ほげー。...てか、それってもしかして...ヤバい??)」
主人公「ooo-t9p-ooo. (激ヤバです。このままだとあれの解析が進み、情報の発信先...つまり我らが暮らしているこの星の存在が彼らに認知されてしまうという懸念があります。そうとなると、好奇心旺盛な彼らは、宇宙侵略を開始した時、真っ先に此処へ向かって来ます。したがって、なるべく早いうちに手を打つべきだと思います。)」
惑星長「oooo.(えぇ、めんどくさっ。後半まったく聞いてなかったわ。とりあえず、お前どうにかしておいてくれ。責任も含め、全て任せたから。)」
主人公「o-t9.(承知しました...。我らの未来と宇宙の安全を最優先に考え、惑星t9を破壊します。)」
——テレポーターエリアにて——
整備士「ooo-t9.(よお。お前さん、t9に行くんだって? あんな知能レベルの低い惑星に行くなんて、物好きもいるんだなぁ。)」
主人公「oo.(うるさい。早くテレポーターの準備をしろ。それと彼らを侮っていると痛い目みるぞ。)」
整備士「o-o.(へいへい。わかってるよ。速度はどうする?)」
主人公「o.(最高速度で頼む。あまり時間に余裕がない。)」
整備士「ooo-h90.(え、最高速度? 光速の90%程だけど...。アンタ耐えられる? そんな装備で大丈夫か?)」
主人公「o.(大丈夫だ。問題ない。)」
整備士「oo-o.(ふーん。まあいいや。あんたがどうなろうが、俺の知ったことじゃないしな。んじゃ、行ってこいや! また会おうぜ。お土産よろしくぅ。)」
主人公「ooo. (やれやれ...他人事で羨ましいな。)」
ガチャンッ
…テレポーターが起動した。
整備士(よし、ちゃんと機能した。今頃あいつは、宇宙旅行をじっくりと満喫しているはず...あ、噓。やべぇ! 引力反数を設定するの忘れてたっ! このままだと、あいつブラックホールに吸い込まれて消滅するかも。いや、でもこれは事故だよな。しょうがないよな。俺は...一応止めたから。うん...。)
——暗闇の中にて——
主人公「あ...意識がある。ということは、もう惑星t9に到着したのか。意外と速かったな。」
主人公「いや待て...身体の感覚がない。いったいどうなっているんだ?」
主人公「噓だろ? もしや、テレポートに失敗したのかっ? だとしたら非常にまずいっ!」
主人公「ああ...つんだ。何やってももう駄目だ。私はここで永遠に意識として存在しなくてはならないんだ...。」
主人公「やっぱ嫌だっ! 頼むっ! 誰か助けてくれぇ!」
主人公「あーあ。もう何でもいいや。こうなったのも全て惑星長のせいだ。そういえば、私はいつもあの人にいいように利用されてばかりだったな...。私の人生っていったい何だったのだろう? 考えるだけ無駄か...。」
…主人公は考えるのをやめた。しかし、暫くすると何やら音が鳴っていることに気づいた。
???「・・・・・・」
主人公「ん? なんだ?」
???「・・・・い!」
主人公「何か聞こえるが...。」
???「お・・・さい!」
主人公「よく聞き取れない。どうやら周波数が合っていないようだな。いや、それにしても、私以外にも誰かいてくれて良かった! いま調整するから待っ——」
???「おきなさい!」
主人公「うっ!」
…主人公は勢い良く飛び起きた。
——部屋にて——
???「早く起きな! いつまでも寝てんじゃないよ!」
主人公「ここはどこだ...?」
???「全くいつまで寝ぼけてんのよ! 早く準備して学校行きなさい! 梨央ちゃんが下で待っているよ!」
主人公(っ! 心臓が赤い! こいつ、私に対して敵意を向けている。二足歩行型の生命体...用心しなくては。)
…主人公は戦闘態勢に入った。
だが、そんな主人公をよそに、生命体は大きな足音をたてながら部屋から出ていった。
主人公(うん? 何もせずに逃げていった? なんなのだいったい...。)
主人公(いや待てよ。あの生命体、見たことがある...そうだ! あれはt9で一番知力が発達している生命体だ。名称は...確か、ニンゲンだったかな。)
主人公(それよりもニンゲンがいるということは...。もしや、ここは惑星t9なのでは? やったっ! 間違いない! 私は無事に辿り着けたのだな。ああ、身体があるというのは、なんて心地いいのだろ——)
…主人公は自分の身体を見て動揺した。
主人公(な、なに...! 私の身体が、ニンゲンと同化してしまっているっ! テレポーターのバグかっ? どういう状況なんだこれはっ。と、とにかく、一刻も早くこのバグを惑星に報告し、対処法を模索しなければ。)
主人公(落ち着け...。とりあえず、近くにある物質で簡易型の通信機を作成しよう。さっき、ニンゲンに襲われなかったのは、私の身体が彼らと同じであったから...ということか。なるほど、逆に好都合だ。これなら破壊工作も容易いだろう。)
…主人公は部屋にあるテレビやゲーム機を分解し、簡易型の通信機を作製した。
主人公(よし...。取り敢えず、通信機の材料は手元にあったため直ぐに作製できた。何をするための機械かわからなかったが、分解が簡単だった事から、大した物ではないはずだ。)
…通信機の電源を入れようとすると、さっきと同じニンゲンが部屋へ入ってきた。
ニンゲン「こらっ! いつまでダラダラしてるのよ! 準備しろって言っているでしょ。早く来なさいっ!」
…ニンゲンは主人公の腕を掴もうとした。
主人公(ニンゲン! 今度は攻撃してくるっ! 正体がばれたのか? 理由は解らんが、やむを得ん...念動力を使うか。)
バチバチバチッ!
…ニンゲンの脳に念を飛ばした。
ニンゲン「う、なんか頭が痛くなってきた...。ああ痛いっ! この頭痛は...。海斗...救急車を呼ん...。」
…ニンゲンは気絶した。
主人公(はあはあ...。何故か念動力のエネルギー消費量が尋常じゃない。私の意識も飛びそうだ。)
主人公 (...! 足音がする。増援か? クソ! 全然動けん...。)
…ニンゲンがもう一体部屋に入ってきた。
ニンゲン2「か、海斗! どうしたの! それに、おばさんも! きゅ、救急車呼ばないとっ!」
…ニンゲン2は身に纏っている布から通信機を取り出した。
主人公(こいつ、何処かに連絡をしている。さらに増援が来るのか? 逃げなければ。いや、無理だ...気絶す...。)
バタッ
…主人公は意識を失った。
——某都立病院にて——
主人公「うう...。」
…主人公は病室のベッドの上で目を覚ました。
主人公(なんだ? 何処かへ連れてこられたのか? 通信機も無いぞ。)
主人公(この部屋だけで微弱な気配が複数ある...。用心しなくては。)
…辺りを見回していると、ニンゲン2が病室へ入って来た。
ニンゲン2「あ、海斗! 気がついたんだね! 良かった〜。」
主人公(む...先程のニンゲン。しかし、心臓の色の変化はない。あまり警戒する必要はなさそうだ。)
ニンゲン2「おばさん...。まだ起きないの。大丈夫かな...。」
主人公(いきなり心臓が藍色になった...。これは初めて見る。ニンゲンは複数の感情パターンがあるのか。)
ニンゲン2「か、海斗。そんなジロジロみて...どうしたの?」
…ニンゲン2は照れ始めた。
主人公(今度は桃色になった...。まるで解らん。)
主人公(別に負の感情は読み取れない。このニンゲンとの会話を試みるのも良さそうだな。えーっと、確か人間は音を発してコミュニケーションをとる。しかし、言語という地域によって変化する音の強弱と発音を意識しなければいけなくて...。)
主人公「あーあーあ。こんな感じだな。」
…主人公は言語を調整した。
ニンゲン2「な、何してるの?」
…ニンゲン2は困惑した。
主人公「私はロール3367。君達の言葉で言うと外来生命体だ。」
ニンゲン2「...。」
ニンゲン2「ふざけていい場面じゃないよ! 貴方のお母さん、助かるかわからないんだよ?」
主人公(また色が変化した。いったい何パターンあるのか。)
バタンッ!
…ニンゲン3が部屋に入ってきた。
ニンゲン3「海斗くん! 梨央ちゃん! 里恵さんが目を覚ましたよ!」
梨央「看護師さん! ほ、本当ですか? あ〜良かった。」
梨央「私はおばさんの様子を見て来るね。貴方は休んでて。」
…看護師と梨央は部屋を後にした。
主人公(梨央? 里恵? 看護師? ニンゲンにはそれぞれ呼び名が有るのか? 私たちのように番号で識別する訳ではないのか。それと、ニンゲン2...いや、梨央が私の事を海斗と呼んでいたが。それは私と同化してしまったニンゲンの呼び名なのか?)
主人公(とりあえず、詳しいことを梨央から聞く必要がある。よし、後を追うか。)
…主人公は立ち上がり部屋から出た。
——里恵の病室にて——
ガチャッ
…主人公はドアノブを回し、里恵がいる病室へ入った。
梨央「え、海斗? もう動けるの?」
主人公「ああ。問題ない。」
里恵「海斗...。あんたは昔から身体だけは丈夫だったからねぇ。頭は悪いけど。」
里恵「というか、なんでアンタも病院送り?」
主人公(始めに遭遇したニンゲン...。だが、色の変化は特にない。今は感情が穏やかなようだ。)
梨央「いや、海斗は良いところ沢山ありますよ!」
里恵「えー? そう? どんなところ?」
梨央「え、えっと。それは...。」
主人公(梨央の心臓がまた桃色になった? いったいどの様な条件下で色が変化するのか。)
里恵「ははは。梨央ちゃん、ありがとね。それと、学校休ませてしまってごめんなさい。」
梨央「いやいや! 私は海斗とおばさんが無事で本当に良かったです!」
…梨央は振り返って主人公を見た。
主人公「ん? どうかしたか?」
梨央「ううん。何でもないよ~。」
…そう言って、梨央は笑った。
梨央「2人とも今日中に退院できるそうだし、私は晩御飯の材料を買って来ますね。」
里恵「ほんとー? 梨央ちゃん、あなた天使の様な子ね。」
里恵「海斗! ぼーっと突っ立っていないでアンタも行きなさい!」
主人公「承知した。」
——病院内、玄関付近にて——
梨央「おばさん、普通に元気だったね。」
主人公「ああ。全くだ。私の念動力が弱かったとはいえ、里恵の回復能力の高さは凄まじい。」
梨央「念動...? な、なんかよく解らないけど...。海斗、実はまだ治っていないんじゃない?」
主人公「ん? 私は至って健康そのものだが。」
主人公「ところで、私たちは一体何処へ行く?」
梨央「え? ああ、えっと、近くのスーパーよ。」
主人公「スーパー? なんだそれは。」
梨央「私がよく買い物に行くところだよ~。この時間だと、色々半額で買えるの。」
梨央「あ、その前に、ちょっと...トイレ行ってくるね。」
…梨央は女子トイレに入っていった。
主人公(トイレとはなんだ? 取り敢えず、私も行くか。)
…主人公は女子トイレに入っていった。
梨央「っ! え、えーと...。何で貴方も入ってきたの? 男子トイレは隣だけど。」
主人公「一応ついてきた。はぐれたら困るしな。」
梨央「いや、ついてこられたほうが困るよ...。」
主人公「ん? 何故だ。」
梨央「え? 何故って...。海斗、もしかして何か期待してる?」
…梨央は顔が赤くなった。
梨央「ト、トイレはそういうことする場所じゃないわ! それに、私たちまだ付き合ってないし。」
梨央「あーダメダメっ! とにかく、早く出てって!」
主人公「だから、何故...。」
病院の従事者「あの、すみません。」
…ふと気が付けば、病院の従事者がゴミを見るような目でこちらを見ている。
梨央「え...あ。違——」
病院の従事者「ここでそういう事をされるのは困ります。他の方に迷惑なので。(チッ。トイレでイチャイチャすんなよ。こいつら学生じゃなかったら即通報してたわ。)」
梨央「す、すみません...。」
…主人公と梨央は女子トイレを出た。
梨央「あーもう! 絶対あの人勘違いしてたよ! 海斗のせいだからね!」
主人公「???」
…主人公は困惑した。
——スーパーマーケットにて——
主人公(なるほど。これが食料...か。そういえば、ニンゲンには睡眠欲の他に食欲、性欲というものがあり、その3つの欲求を満たすことで、彼らは生命を保っていると聞いたが。私の身体も今はニンゲンであるため、それらの欲を満たす必要があるはずだ。だが、本当にこんなもので、そのうちの一つを満たすことはできるのだろうか。)
梨央「何か買いたいものある?」
主人公「買う? よくわからんが大丈夫だ。」
梨央「じゃあ、今日の晩御飯は何が食べたい?」
主人公「食欲を満たせるのであれば何でも良い。」
???「あれ、梨央と海斗じゃん!」
梨央「あ、勇気。学校は...って、この時間はもう授業終わっているよね。」
勇気「二人とも今日学校欠席したらしいけど、もしかして授業サボってデートしてた?」
梨央「ち、違うよ! 海斗と里恵さんが急に倒れちゃって...。さっきまで病院にいたのよ。」
勇気「え? そうなの? 救急車で運ばれたってこと? その割に海斗はめっちゃ元気そうに見えるけど。」
主人公「ああ。里恵も私も全く問題ない。」
勇気「え? お前今日は変な喋り方するな。厨二病ってやつか?」
主人公(厨二病? 聞いたことのない単語だ。)
梨央「と、年頃なのよ。きっと。」
…梨央は海斗をフォローした。
勇気「話変わるんだけど、隣のゲーセン、リニューアルしたっぽいよ? ちょっと行ってみない?」
主人公「ゲーセン?」
勇気「お、海斗は乗り気だなー。梨央は?」
梨央「私は買い物しないといけないから...。でも、海斗はゲーセンの方に行ってもいいよ。」
勇気「オッケー。じゃあ行こうぜ。」
主人公「ああ。」
…勇気と主人公はスーパーマーケットを出た。
梨央「...。」
梨央「まあ、買い物よりもゲームの方が楽しいよね。」
…梨央はため息をついた。
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