捕食者VS魔獣
『それではこれより、二回戦Aブロック第一試合を開始致します♪ それでは選手入場! ケニア企業! ケニア・ゴールド代表! 身長二〇〇センチ体重一五〇キロ! 捕食者! ボルバ選手入場です!』
リングにボディビルダーのように筋肉質な長身の黒人選手が登場。
その顔は、これからハントする獲物を狙う様にギラついている。
全身に刻まれた獣の牙やツメの傷痕に加え、顔の赤いメイクが最高の戦化粧だ。
ボルバは頭の上で手を組み、戦いの神に勝利を捧げた。
『続いてカナダ企業! フューリャー・ファクトリー! 身長三〇〇センチ体重七〇〇キロ! 魔獣! ファング選手でーす!』
ライオンの咆哮を一〇倍のボリュームにしたような轟音が轟いた。
ボルバとは反対の選手入場口から異形の怪物が入場。
肉食獣そのままの爪と牙、長いざんばら髪は後ろへ逆立ちたてがみのようだ。
VIP席では、社長令嬢の幼女イリスが手を振っている。
「やっちゃえファング♪」
幼女の応援に、ファングは遠吠えで応える。
ファングの入場で客席は湧いた。
オッズではボルバが人気だが、見た目のインパクトだろう、選手としての人気はファングのほうが上らしい。
「ふむ…………」
ボルバは、冷静にファングの戦闘力を推し量る。
身長三〇〇センチ。体重七〇〇キロ。
そして一回戦で見せた瞬発力。
ボルバは勝利を確信して口角が歪む。
ファングの圧倒的な身体能力の前に倒される自分を想像する客がいるだろう。
でもそいつらは解っていない、とボルバは心の中で笑い飛ばす。
確かにファングの肉体は規格外だ、しかし、それは所詮、人間としての話だ。
――ファングに賭けた連中は愚かだな。体重七〇〇キロ? ライオンの体重が二〇〇キロである事を考えればああ確かに凄いだろうさ。でもな、俺が殺してきたカバやサイは体調三メートル超えで体重は二、三トン。象に至っては体長五メートルで体重は六トンにも達する。
猛獣との戦闘が日常であるボルバにとって、ファングの身長も体重も怖くない。
むしろイージーとすら言える。
加えてスピードだが、ノロそうに見えて、カバやサイの走るスピードは時速五〇キロ。オリンピック選手よりも速い。
ホッキョクグマを捕食していたという事実も合わせ、ボルバの分析が終了する。
ボルバの目に映るファングの姿が変わる。
通常の倍の大きさのライオンが後ろ足で立って、かつ前足が人間の腕のような構造になり、稼働域とリーチが伸びる。
巨大な獅子人間。
おそらくアフリカのバッファローなど軽く捕食してしまうだろう。
ライオンの群れも蹴散らすかもしれない。
だが……
――勝てる。
ボルバは確信する。その程度なら勝てる、と。
「フッ」
ボルバは鼻で笑う。
現代、噛みつきとひっかきを行う格闘技は無い。
他の選手にとって、ファングの鋭い爪と牙は厄介だろう。
だがボルバは、ツメと牙を主攻撃として使う猛獣とばかり戦って来た。
――運が無かったなファング。俺以外の選手ならお前には勝てなかっただろう。だが、俺に当たった運命を呪うんだな。
『それでは両者、準備はいいですね? 試合、始めぇ!』
――いくぞ!
ボルバが狙うは当然首から上。
超体格を持つファングの筋骨に正面勝負など愚の骨頂。
目、鼻、耳、口、喉などの急所は、ファングにも有効だろう。
「■■■■■■‼」
ファングが神速で加速。
「なっ!?」




