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家を手に入れました

「こちらが社宅です」


 タマちゃんに案内されたのは、本社のすぐ隣にある七階建てマンションだった。

最上階の部屋へ案内されると、3LDKの広くて綺麗な部屋だった。


 用意されている家具は庶民でも一目で『高そう』と感想抱く。


 ベランダへ続く窓は南向きでリビングに心地よい太陽光を取り込むだろうし、シルバーの広いキッチンシンクは料理好きの人なら大喜びだ。


 事実、キッチンで好美がやたらと興奮している。


 東京都心でこの広さとクオリティなら、月三〇万の家賃はくだらないだろう。


「以前は会社の重役が住んでいたらしいんですけど、今はもう多くの社員が退社してますし、維持費もかかるので最上階以外の部屋は全部放置状態なんです」

「へぇ、でも倒産寸前の割りにいい物件持っているんだな」


「持っているというよりも、残っているだけみたいです。さっきも言った通り、旗大路フーズは日本有数の大企業でしたから。業績の悪化にともなってほとんどの土地と物件を手放して、残ったのは本社ビルと、同じ敷地内にあるこの社宅だけで、このままだと両方借金のカタにもっていかれちゃいます」


「ああ、あれか」


 羅刹が思い出したようにして手を叩く。


「学校から帰ってきたら道場に知らないおっさんがぞろぞろいてさ。なんか今日から家に住めなくなったとかなんとか。あれはキツイからなぁ。礼奈にはご飯をくれた礼があるし、ホームレスの後輩を作らないためにも頑張らせてもらうぜ」


 羅刹はガッツポーズを取った。


「じゃあ私の名刺はテーブルに置いておきますから、何か必要なものがあったら連絡をください。では」


 部屋について説明を終えると、タマちゃんは退室。

 部屋には羅刹と好美の二人だけが残された。


「じゃあせっちゃん、まずは」


 好美が小さな手が、羅刹の右腕にぎっちりと食い込んだ。


「お風呂だね♪」

「え? あっ……」


 羅刹はホームレスだった。

 体なんて、公園の噴水で水浴びがせいいっぱい。

 それも、最後にしたのは三日前だ。


「ほらほら脱いで脱いでっ」

「おいおい服ぐらい自分で脱げるってっ」


 好美にTシャツとジャージを奪い取られて、羅刹は風呂場に退散した。


  

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